17:15 〜 19:15
[MIS14-P05] 始新世前期ハイパーサーマル期の陸域環境復元に向けた米国グリーンリバー層の炭素同位体比層序構築の試み
キーワード:ハイパーサーマル、始新世、炭素同位体比層序
始新世前期は‟ハイパーサーマル(Hyperthermal)”と呼ばれる急激な温暖化イベントが繰り返し発生した温室期として知られる.ハイパーサーマルの発生要因としては,火山活動に伴う二酸化炭素の急激な放出や,海底メタンハイドレートの融解によるメタンの放出が挙げられ,これにより温暖化ガスの濃度が急激に増加し,温暖化が引き起こされた(引用).しかし,この急激な温暖化が陸域環境に与えた影響については未解明な点が多い.本研究では,始新世前期のハイパーサーマル期における温暖化の陸域環境への影響を明らかにすることを目的とし,始新世前期~中期に堆積した湖成層である米国グリーンリバー層を対象とした.
グリーンリバー層は米国ユタ州・ワイオミング州・コロラド州にまたがって分布しており,始新世前期の陸域中緯度に巨大な湖が存在したことを示唆する重要な記録である.本研究で対象としたのは,ユタ州北部のUinta Basin西部に位置するIndian Canyonセクションである。2016年から5年に渡って調査を行い,層厚約1100mに及ぶ岩相柱状図を作成した.またIndian Canyonの岩相変化に見られる周期性に基づいてOrbital-tuningを行い,52.8〜43.7Maの堆積記録に対応することが明らかになっている.さらに古地磁気層序分析に基づき,49∼53Maで周期的に発達する河川成チャネル砂岩層がハイパーサーマル期に対応する可能性が明らかになった.しかし,本当に河川成チャネル砂岩層がハイパーサーマル期に当たるかどうかは,炭素同位体比変動に基づく海成層との詳細対比が必要である。ただし,陸成層から炭素同位体比変動を復元する場合は,含有有機物組成の変動にも注意する必要がある。そこで本研究では,Indian Canyonセクションで採取した118試料に対してC/N比分析とパリノファシス分析に基づく含有有機物組成の解析と,有機炭素の炭素同位体比変動を測定し,ハイパーサーマル層準の特定と,その時期における陸域環境変動の復元を試みた.
C/N比の変動は岩相変化と良く対応しており,頁岩層で10以下の低い値を,石灰質泥岩で20∼30の高い値を示した。さらに層位300∼500mに当たる層準では総じてC/N比が低いのに対し,層位500m以上になるとC/N比が総じて高くなる傾向が見られた。これは湖水位が高い時期に藻類有機物が優占であるのに対し,湖水位が低くなると湖岸からの植物片の流入量が増加したためと解釈できる.またハイパーサーマル期に対応する可能性のある河川成チャネル砂岩層付近では,C/N比が30以上と非常に高い値を示し,かつ炭素同位体比が-30‰程の非常に低い値を持っていた.これは植物片の過剰流入があったか,もしくはハイパーサーマル期の温暖化イベントを反映している可能性がある.今後はC/N比とパリノファシス分析,そして炭素同位体比分析を進め,ハイパーサーマル層準の特定と,そのような極端な温暖化イベント時における陸域環境変動の復元を試みる。
グリーンリバー層は米国ユタ州・ワイオミング州・コロラド州にまたがって分布しており,始新世前期の陸域中緯度に巨大な湖が存在したことを示唆する重要な記録である.本研究で対象としたのは,ユタ州北部のUinta Basin西部に位置するIndian Canyonセクションである。2016年から5年に渡って調査を行い,層厚約1100mに及ぶ岩相柱状図を作成した.またIndian Canyonの岩相変化に見られる周期性に基づいてOrbital-tuningを行い,52.8〜43.7Maの堆積記録に対応することが明らかになっている.さらに古地磁気層序分析に基づき,49∼53Maで周期的に発達する河川成チャネル砂岩層がハイパーサーマル期に対応する可能性が明らかになった.しかし,本当に河川成チャネル砂岩層がハイパーサーマル期に当たるかどうかは,炭素同位体比変動に基づく海成層との詳細対比が必要である。ただし,陸成層から炭素同位体比変動を復元する場合は,含有有機物組成の変動にも注意する必要がある。そこで本研究では,Indian Canyonセクションで採取した118試料に対してC/N比分析とパリノファシス分析に基づく含有有機物組成の解析と,有機炭素の炭素同位体比変動を測定し,ハイパーサーマル層準の特定と,その時期における陸域環境変動の復元を試みた.
C/N比の変動は岩相変化と良く対応しており,頁岩層で10以下の低い値を,石灰質泥岩で20∼30の高い値を示した。さらに層位300∼500mに当たる層準では総じてC/N比が低いのに対し,層位500m以上になるとC/N比が総じて高くなる傾向が見られた。これは湖水位が高い時期に藻類有機物が優占であるのに対し,湖水位が低くなると湖岸からの植物片の流入量が増加したためと解釈できる.またハイパーサーマル期に対応する可能性のある河川成チャネル砂岩層付近では,C/N比が30以上と非常に高い値を示し,かつ炭素同位体比が-30‰程の非常に低い値を持っていた.これは植物片の過剰流入があったか,もしくはハイパーサーマル期の温暖化イベントを反映している可能性がある.今後はC/N比とパリノファシス分析,そして炭素同位体比分析を進め,ハイパーサーマル層準の特定と,そのような極端な温暖化イベント時における陸域環境変動の復元を試みる。
