日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS14] 古気候・古海洋変動

2025年5月29日(木) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:小長谷 貴志(海洋研究開発機構)、山崎 敦子(名古屋大学大学院環境学研究科)、長谷川 精(高知大学理工学部)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)


17:15 〜 19:15

[MIS14-P06] モンゴル・ゴビ砂漠の縞状石灰岩から読み解く中期~後期更新世の東アジア中緯度域の古環境変動

*中村 旭登1長谷川 精1奥村 知世1池原 実1佐久間 杏樹2、Shen Chuan-Chou 3、Niiden Ichinnorov4、Davadori Davassuren5石川 剛志6山口 飛鳥2、小松 吾郎7 (1.高知大学、2.東京大学、3.国立台湾大学、4.モンゴル古生物研究所、5.モンゴル国立大学、6.JAMSTEC 高知コア研究所、7.ダヌンツィオ大学)


キーワード:ゴビ砂漠の巨大湖、炭酸塩堆積物、炭素・酸素同位体、更新世、縞状構造

現在乾燥気候下であるモンゴル南部ゴビ砂漠北縁部のValley of Lakes地域(幅数km~20km程の塩湖[ブーンツァガン湖(平均水深10m),オログ湖(平均水深3m)など]が点在)には,湖岸地形の証拠から,過去には幅200km以上,最大水深100mに達する巨大な湖“Giant Gobi Lake”が存在した可能性が示唆されている(Komatsu et al., 2001; Lehmkuhl et al., 2018).巨大湖の発達した年代は,湖岸堆積物のOSL年代に基づいて,最終間氷期,最終氷期,完新世中期頃と推定されている(Lehmkuhl et al., 2018)が,正確な年代は不明である.また,その形成メカニズムも定かではない.我々は2023年7月にValley of Lakes地域の調査を行い,オログ湖の40km北の地点で,砂漠舗石の上に沈殿した縞状石灰岩(厚さ数cm)を多数発見した.これはGiant Gobi Lakeの浅湖環境で沈殿した湖成石灰岩の可能性があり,先行研究の想定よりも更に巨大な湖が発達していた可能性を示している.そこで,本研究では,発見した縞状石灰岩を対象として様々な分析を行い,ゴビ砂漠で巨大湖が発達した時期や,それを維持していた気候システムの解明を試みた.
 本研究では,まず縞状石灰岩を堆積させた過去の湖の大きさや水深を復元する為,ArcGISを用いて地形解析を行った.次に東京大学大気海洋研究所でµXRFを用いて微小領域元素マッピング分析(1pixel: 20µm)を行った.また高知コアセンターでGeomill326を用いて組織に沿った微小領域の切削(0.1∼0.2mm毎)を行い,過酸化水素を用いた有機物除去の前処理を行った後に,Isoprime precisIONを用いて約400試料の酸素・炭素同位体比測定を行った.さらに試料の年代決定の為,国立台湾大学にてU/Th年代測定を実施中である.
 地形解析の結果,先行研究(Komatsu et al., 2001; Lehmkuhl et al., 2018)で想定されていたよりも巨大な湖(幅300km,最大水深200m以上)が,過去にゴビ砂漠に存在していたことが示唆された.元素マッピング分析の結果,同試料は暗色層と灰色層の互層からなる縞状構造が発達する下部,小礫を含む中部,そしてストロマトライト構造などを示す上部の,三層構造で構成される事が明らかになった.また,安定同位体比測定の結果,δ13C(-0.70‰~+7.90‰)・δ18O(-8.65‰~-1.71‰)で,縞状構造を反映しての変動が見られた.さらにU/Th年代測定の結果,まだ暫定的な結果であるが,中期~後期更新世(約30∼6万年前)に堆積した可能性が示唆された.今後は,外来起源のTh濃度の補正を行った上で正確な年代値を算出し,中国鍾乳石の酸素同位体比記録(Cheng et al., 2016)などと比較することで,中期~後期更新世の東アジア中緯度における古環境変動の解明を目指す.