17:15 〜 19:15
[MIS14-P09] モンゴル北西部サンギンダライ湖の年縞湖成堆積物の元素・鉱物組成変動から復元する完新世における東アジア中緯度域の古環境変動

キーワード:年縞、気候変動、古気候
完新世は最終氷期に比べ気温変化が小さく安定した気候であるが,グリーンランド氷床の氷山流出に伴う約1500年毎の気候変動(Bond event)や,北大西洋振動(NAO)や偏西風の蛇行に伴うヨーロッパの古環境変動(Wanner et al., 2014)などが報告されている。東アジアでもBondイベントに同期した[h1] モンスーンと偏西風による古環境変動が報告されている(Zhao and Yu, 2012)。しかし,東アジア中緯度域の環境を考える上で重要な偏西風や永久凍土の影響を考慮した研究は少ない。そこで本研究ではモンゴル北西部サンギンダライ湖を研究対象とし,湖底堆積物コアの元素・鉱物組成変動から,完新世における東アジア中緯度域の古環境変動の復元を試みた。
本研究で用いた試料は,サンギンダライ湖(N49°15’42”; E98°55’ 23”; 標高1885 m; 水深25 m)において, 2019年3月に採取したボーリングコア(19SD01~05; 合計約20 m長)とグラビティコア(19SD-G4)である。19SDコアは約十cm毎に発達するラミナが明瞭な茶色石灰質泥層とラミナが不明瞭な暗褐色泥層の互層からなる。年代モデルは土壌TOCの14C年代から構築した。高知大学海洋コア国際研究所設置のXRFコアスキャナー(Itrax)を用いて0.5mm間隔の元素組成変動と,X線回析装置(XRD)を用いて1cm毎に分取した試料の鉱物組成分析を行った。またラミナ発達部の数層準から試料採取して樹脂固定を行い,東京大学大気海洋研究所設置のµXRF,µXRDを用いて微小領域元素・鉱物組成分析も行った。
まず完新世を通じた元素・鉱物組成の特徴をヨーロッパの環境変動記録(Wanner et al., 2014)と比較すると,10.0∼7.0kaにはSi/Tiが総じて高く,砕屑粒子の多い浅湖環境であった。またCa/Tiが高い層準が3層準見られ,高Mgカルサイトが卓越していた。次に7.0∼5.0kaでは約350年毎にラミナ発達層準が見られ,Mn/Fe比が高い層準と対応していた。また約1000年毎のヨーロッパが冷涼乾燥な時期に,サンギンダライ湖ではモノハイドロカルサイト(MHC)がラミナ発達層準で卓越していた。5.0∼2.8kaでは約700年毎にラミナが発達し,高MgカルサイトとS/Ti比が高い傾向があった。この時期はヨーロッパの温暖湿潤環境と対応しており、永久凍土が融解したことにより硫黄分がサンフギンダライ湖に流入したと解釈した。2.8∼1.0kaでは約1000年毎にラミナが発達し,高Mgカルサイトが卓越しており,ヨーロッパの冷涼乾燥な時期と対応していた。最後に1.0ka∼現在は、約200年毎にラミナが発達し,MHCが卓越していた。
次に微小領域分析は約3.4ka,4.9ka,6.6kaのラミナ発達層準からサンプリングを行った.微小領域元素・鉱物組成分析結果と蛍光顕微鏡写真から,有機物が多い暗色層で流入物である石英が析出し,明色層でMHCや高Mgカルサイトなどの炭酸塩鉱物が析出しており,暗色層が雨季に,明色層が乾季に相当すると解釈した.年代モデルに基づく平均堆積速度0.32mm/yrと,ラミナの平均層厚0.35mmはほぼ一致すること,またラミナの鉱物組成には乾季・雨季の季節変動が見られることから,サンギンダライ湖のラミナ発達部は年縞であることが明らかとなった。年縞の乾季層の組成を詳しく見ると,6.6kaでは高Mgカルサイトのみが,4.9kaでは高MgカルサイトとMHCの2つの炭酸塩鉱物が,そして3.4kaではMHCのみが析出していた。これは,完新世前期には温暖乾燥気候下で高Mgカルサイトが夏の乾季に沈殿して年縞を形成する一方,完新世後期になると冷涼湿潤気候下で夏の乾季にMHCが沈殿して年縞を形成したと解釈される。また年縞の乾季層の層厚変化には約11年の周期性が見られ,また上述のようにラミナ発達層準は約200年,350年,700年,1000年の周期性が見られた。11年は太陽黒点変動,約200年,350年,1000年の周期性は太陽活動の長期的な周期とされているため(David.,2015;Raimund.,2007;Mercedes and Michael.,2009),サンギンダライ湖の年縞形成には太陽活動の気候影響も関係していることが示唆された。
本研究で用いた試料は,サンギンダライ湖(N49°15’42”; E98°55’ 23”; 標高1885 m; 水深25 m)において, 2019年3月に採取したボーリングコア(19SD01~05; 合計約20 m長)とグラビティコア(19SD-G4)である。19SDコアは約十cm毎に発達するラミナが明瞭な茶色石灰質泥層とラミナが不明瞭な暗褐色泥層の互層からなる。年代モデルは土壌TOCの14C年代から構築した。高知大学海洋コア国際研究所設置のXRFコアスキャナー(Itrax)を用いて0.5mm間隔の元素組成変動と,X線回析装置(XRD)を用いて1cm毎に分取した試料の鉱物組成分析を行った。またラミナ発達部の数層準から試料採取して樹脂固定を行い,東京大学大気海洋研究所設置のµXRF,µXRDを用いて微小領域元素・鉱物組成分析も行った。
まず完新世を通じた元素・鉱物組成の特徴をヨーロッパの環境変動記録(Wanner et al., 2014)と比較すると,10.0∼7.0kaにはSi/Tiが総じて高く,砕屑粒子の多い浅湖環境であった。またCa/Tiが高い層準が3層準見られ,高Mgカルサイトが卓越していた。次に7.0∼5.0kaでは約350年毎にラミナ発達層準が見られ,Mn/Fe比が高い層準と対応していた。また約1000年毎のヨーロッパが冷涼乾燥な時期に,サンギンダライ湖ではモノハイドロカルサイト(MHC)がラミナ発達層準で卓越していた。5.0∼2.8kaでは約700年毎にラミナが発達し,高MgカルサイトとS/Ti比が高い傾向があった。この時期はヨーロッパの温暖湿潤環境と対応しており、永久凍土が融解したことにより硫黄分がサンフギンダライ湖に流入したと解釈した。2.8∼1.0kaでは約1000年毎にラミナが発達し,高Mgカルサイトが卓越しており,ヨーロッパの冷涼乾燥な時期と対応していた。最後に1.0ka∼現在は、約200年毎にラミナが発達し,MHCが卓越していた。
次に微小領域分析は約3.4ka,4.9ka,6.6kaのラミナ発達層準からサンプリングを行った.微小領域元素・鉱物組成分析結果と蛍光顕微鏡写真から,有機物が多い暗色層で流入物である石英が析出し,明色層でMHCや高Mgカルサイトなどの炭酸塩鉱物が析出しており,暗色層が雨季に,明色層が乾季に相当すると解釈した.年代モデルに基づく平均堆積速度0.32mm/yrと,ラミナの平均層厚0.35mmはほぼ一致すること,またラミナの鉱物組成には乾季・雨季の季節変動が見られることから,サンギンダライ湖のラミナ発達部は年縞であることが明らかとなった。年縞の乾季層の組成を詳しく見ると,6.6kaでは高Mgカルサイトのみが,4.9kaでは高MgカルサイトとMHCの2つの炭酸塩鉱物が,そして3.4kaではMHCのみが析出していた。これは,完新世前期には温暖乾燥気候下で高Mgカルサイトが夏の乾季に沈殿して年縞を形成する一方,完新世後期になると冷涼湿潤気候下で夏の乾季にMHCが沈殿して年縞を形成したと解釈される。また年縞の乾季層の層厚変化には約11年の周期性が見られ,また上述のようにラミナ発達層準は約200年,350年,700年,1000年の周期性が見られた。11年は太陽黒点変動,約200年,350年,1000年の周期性は太陽活動の長期的な周期とされているため(David.,2015;Raimund.,2007;Mercedes and Michael.,2009),サンギンダライ湖の年縞形成には太陽活動の気候影響も関係していることが示唆された。
