17:15 〜 19:15
[MIS14-P11] オープンソースのソフトウェア・ハードウェアを用いた火山ガラスの自動計数手法の開発と古環境復元研究への適用可能性

キーワード:テフロクロノロジー、火山ガラス、クリプトテフラ、機械学習、YOLO (You Only Look Once)
第四紀における主要な年代決定方法であるテフロクロノロジーの代表的な課題は,テフラ層序網の高分解能化,つまり単位時間当たりのテフラの枚数を増加させることである.近年はクリプトテフラ(肉眼では層として見えないが火山ガラスや鉱物が集中している層準として識別されるテフラ)の検出が進み,テフラ層序網の高分解能化がより進んでいる.しかしながら,クリプトテフラ分析は堆積物から対象とする粒径の粒子を抽出し,火山ガラスの量を顕微鏡下で数える破壊的な手法で行うことが必要不可欠であり,コア全体で取得するには長時間を要する.そこで本研究では,近年地球科学でも利用がすすむ深層学習を用いた画像解析手法を用いて,火山ガラスの計数を自動化する手法(Automated Cryptotephra Image Analysis System: ACIAS)を開発した(Watanabe and Yoshida, 2025; GR of TMU).特に本研究はオープンソースのハードウェア・ソフトウェアを用いることで,入手しやすく比較的容易に構築でき,加えて安価な手法開発を目指した.
本システムは,(1)薄片全面画像の取得と,(2)画像解析による火山ガラスの計数,からなる.薄片画像の取得には,小型コンピュータRaspberry Pi,マイコンボードArduino Uno,3Dプリンタで作成されたパーツ及び電子部品からなるPiAutoStage(Steiner and Roonie, 2021)およびImageJソフトウェアを用いた.画像解析には,物体検出と分類を同時に行うYOLO(You Only Look Once)v5アルゴリズムを用いた.学習に用いた教師データは,露頭で採取され構成粒子の異なる15のテフラ試料と,YNH-P2コア(Watanabe et al., in prep.)から6層準の試料とした.62‒120 µmの粒子を光硬化剤(硬化後屈折率が1.55)で封入することでスライドを作成した.画像は偏光顕微鏡に接続したRaspberry Pi HQ カメラで,透過光の条件で取得した.粒子の分類は試行錯誤を重ねた結果,火山ガラスが形態により5種類,鉱物は3種類,その他3種類の計11種類に区分した.その結果,このモデルでは火山ガラスを84.9%の正解率で検出することができた.
次に本モデルを用いて,YNH-P2コアを対象としてACIASを適用し,有用性を検証した.ACIASによる火山ガラス含有率と,顕微鏡下で発表者によって計数されて得られた火山ガラス含有率(マニュアルカウント)は,おおむね同じ変動を示した.YNH-P2コアでは2枚の肉眼で識別可能なテフラと5枚のクリプトテフラが検出されており(Watanabe et al., in prep.),マニュアルカウントとACIASによる火山ガラス含有率のピークは一致していた.したがって,ACIASによる火山ガラス含有率は実用に耐えうる精度である.また,本手法は火山ガラスの形態を5種類に分類して取得しており,その情報はテフラの対比や識別に有用である.
火山ガラスの含有率の取得は,これまで主にクリプトテフラを検出する目的で行われてきた.一方で,クリプトテフラを認定する際に,再堆積性の火山ガラスとの識別がしばしば課題となる.例えば水月湖では,30 kaに噴出したATテフラの上位で複数のATテフラ由来の火山ガラスからなる再堆積のピークが火山ガラスの化学組成によって認定されている(Albert et al., 2024).そのうち一部のピークは洪水などのイベント層に関係することから,その他の再堆積によるピークも目には見えないイベント性の堆積物のシグナルであると解釈している.同様の視点で考えると,日本のような第四紀火山が多数存在する地域では,火山ガラスの含有率を用いることで地層としては残らない規模の洪水等のイベントを識別し,その頻度や時系列変化を議論することができるだろう.したがって,本研究で構築したACIASはテフロクロノロジー研究だけでなく,古環境研究においても有用なツールとなることが期待される.
本システムは,(1)薄片全面画像の取得と,(2)画像解析による火山ガラスの計数,からなる.薄片画像の取得には,小型コンピュータRaspberry Pi,マイコンボードArduino Uno,3Dプリンタで作成されたパーツ及び電子部品からなるPiAutoStage(Steiner and Roonie, 2021)およびImageJソフトウェアを用いた.画像解析には,物体検出と分類を同時に行うYOLO(You Only Look Once)v5アルゴリズムを用いた.学習に用いた教師データは,露頭で採取され構成粒子の異なる15のテフラ試料と,YNH-P2コア(Watanabe et al., in prep.)から6層準の試料とした.62‒120 µmの粒子を光硬化剤(硬化後屈折率が1.55)で封入することでスライドを作成した.画像は偏光顕微鏡に接続したRaspberry Pi HQ カメラで,透過光の条件で取得した.粒子の分類は試行錯誤を重ねた結果,火山ガラスが形態により5種類,鉱物は3種類,その他3種類の計11種類に区分した.その結果,このモデルでは火山ガラスを84.9%の正解率で検出することができた.
次に本モデルを用いて,YNH-P2コアを対象としてACIASを適用し,有用性を検証した.ACIASによる火山ガラス含有率と,顕微鏡下で発表者によって計数されて得られた火山ガラス含有率(マニュアルカウント)は,おおむね同じ変動を示した.YNH-P2コアでは2枚の肉眼で識別可能なテフラと5枚のクリプトテフラが検出されており(Watanabe et al., in prep.),マニュアルカウントとACIASによる火山ガラス含有率のピークは一致していた.したがって,ACIASによる火山ガラス含有率は実用に耐えうる精度である.また,本手法は火山ガラスの形態を5種類に分類して取得しており,その情報はテフラの対比や識別に有用である.
火山ガラスの含有率の取得は,これまで主にクリプトテフラを検出する目的で行われてきた.一方で,クリプトテフラを認定する際に,再堆積性の火山ガラスとの識別がしばしば課題となる.例えば水月湖では,30 kaに噴出したATテフラの上位で複数のATテフラ由来の火山ガラスからなる再堆積のピークが火山ガラスの化学組成によって認定されている(Albert et al., 2024).そのうち一部のピークは洪水などのイベント層に関係することから,その他の再堆積によるピークも目には見えないイベント性の堆積物のシグナルであると解釈している.同様の視点で考えると,日本のような第四紀火山が多数存在する地域では,火山ガラスの含有率を用いることで地層としては残らない規模の洪水等のイベントを識別し,その頻度や時系列変化を議論することができるだろう.したがって,本研究で構築したACIASはテフロクロノロジー研究だけでなく,古環境研究においても有用なツールとなることが期待される.
