日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS14] 古気候・古海洋変動

2025年5月29日(木) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:小長谷 貴志(海洋研究開発機構)、山崎 敦子(名古屋大学大学院環境学研究科)、長谷川 精(高知大学理工学部)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)


17:15 〜 19:15

[MIS14-P13] 青森県姉沼の湖沼堆積物を用いた過去2000年間の古環境復元

*矢野 翔太1眞家 永光2、千葉 直弥2入野 智久1 (1.北海道大学、2.北里大学)


キーワード:姉沼、鉱物組成、湖沼堆積物、粉末X線回析分析(XRD)

2019年に青森県によって、青森県太平洋側の小川原湖の南北に隣接する姉沼・内沼において近年の富栄養化に伴う底質環境の変化を調べるために堆積物が採取された。このうち、姉沼は面積1.57 km2、最大水深3.9 mである。姉沼の堆積物からは深度203 cm、210 cmからそれぞれ946ADの白頭山―苫小牧(B-Tm)、915ADの十和田A火砕流にともなう火山灰(To-a)テフラが産出しており、およそ0.2 cm/yと堆積速度が速いため、集水域である青森県十和田市・東北町・三沢市・おいらせ町の環境変化を高い時間解像度で復元できる可能性がある。本研究では、姉沼の湖沼堆積物の調査により、集水域の自然景観と人為的な土地利用の変化が、姉沼や小川原湖といった汽水域への物質供給パターンにどのような影響を与えたかを評価することを目的とする。
集水域の変化が砕屑物供給パターンに及ぼした影響を調べるため、凍結乾燥させたコアの粉末X線回折分析(XRD)を行い、鉱物組成の同定と主要鉱物の半定量を行った。分析の結果、石英、長石、スメクタイト、イライト、カオリナイト、黄鉄鉱、非晶質物質を同定し、それぞれのピーク強度を求めた。
得られたデータを姉沼の下流に位置する小川原湖の先行研究(Nara et al.2021)と比較し、姉沼の環境変化に関する考察を行った。姉沼の黄鉄鉱/石英のピーク強度比は小川原湖の全硫黄(TS)の測定結果と類似した変動を示すことが明らかになった。先行研究を参考にして、姉沼、小川原湖のコアに共通して含まれるTo-aテフラ層と黄鉄鉱の変動を基準に、各データの変動を以下の5パターン (A)200BC以前、 (B1)200BC〜約800AD、 (B2)約800AD〜915AD 、(C1)915AD〜約1600AD 、(C2)約1600AD〜現在、に分類した。このうち、200BC以前で認められる黄鉄鉱の急激な変動は、小川原湖の研究結果と一致しており、その頃まで流入していた海水の影響と説明される。一方、約800ADは坂上田村麻呂による蝦夷征討、915ADは十和田A火砕流、約1600ADは幕藩体制成立の頃に対応し、土地利用変化や自然災害による集水域の景観変化による砕屑物供給パターンの変化が示唆される。今後は姉沼のコアに含まれるバイオマス燃焼起源物質量の測定や、集水域の土地利用の歴史の文献調査を行うことを検討している。