日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS14] 古気候・古海洋変動

2025年5月29日(木) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:小長谷 貴志(海洋研究開発機構)、山崎 敦子(名古屋大学大学院環境学研究科)、長谷川 精(高知大学理工学部)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)


17:15 〜 19:15

[MIS14-P15] 下北半島沖における底層水溶存酸素濃度復元に向けた有孔虫殻コーティングのU/Ca , U/Mn分析法の検討

*野﨑 拓真1佐川 拓也1長島 佳菜2岡崎 裕典3 (1.金沢大学、2.海洋研究開発機構、3.九州大学)

キーワード:U/Ca、U/Mn、底層水溶存酸素量、浮遊性有孔虫殻コーティング、底生有孔虫殻コーティング

北太平洋亜寒帯域に位置する下北半島沖の水深数百メートルにおいて、最終氷期から完新世に移行する融氷期の温暖化イベント時に無酸素環境に陥ったことが堆積物の解析から明らかになっている。これまで堆積構造と底生有孔虫群集の解析によって底層水溶存酸素量(Bottom Water Oxygen:BWO)の復元が行われてきた。BWOの変動は、過去の海洋循環や炭素循環を理解する上で重要であり、これまで堆積構造や底生有孔虫群集組成を用いた定性的な復元が主流であった。しかし、これらの手法ではBWOの定量的推定が困難であるため、本研究では新たに定量的BWO復元の手法として提案された有孔虫殻コーティングのU/CaおよびU/Mnを用いた手法の適用可能性を評価した。
本研究では、MR23-05航海で採取された下北半島沖のピストンコア(SMK2-PC, 水深950 m)を用いた。SMK2-PCは酸素最小帯の影響を強く受ける水深に位置し、過去のBWO変動を記録している可能性が高い。分析対象として、異なる時期に堆積した4つの層準を選定し、堆積構造の観察、底生有孔虫群集解析、および有孔虫殻のU/Ca, U/Mnの測定を行った。本研究では、有孔虫殻の洗浄方法、サイズ、種の違いが測定値に与える影響を評価し、最適な分析条件を検討した。また、既存のBWOプロキシである堆積構造と底生有孔虫群集組成との比較を行い、U/Ca, U/Mnのプロキシとしての整合性を検証した。
物理的洗浄・酸化洗浄・リーチング・還元洗浄を1段階ずつ追加し、各洗浄段階が測定値に与える影響を評価した洗浄比較実験では、特に還元洗浄がコーティングの除去を引き起こし、UおよびMnの過小評価を招くことが確認された。さらに、有孔虫の種やサイズが測定値に影響を与えるため、分析時にはこれらの条件を統一する必要がある。また、底生有孔虫を用いたU/Ca, U/Mnの測定値は堆積構造や底生有孔虫群集解析と一致し、BWOプロキシとなる可能性が示唆された。一方、浮遊性有孔虫の測定値は他のプロキシと一致せず、特に二次石灰化の影響を強く受けた層準では顕著に過大評価されていた。このことから、二次石灰化の影響を受けた有孔虫殻のU/Ca, U/MnはBWO復元には適さない可能性が高いと考えられる。
本研究の結果は、底生有孔虫のU/Ca, U/MnがBWO復元の有用なプロキシとなることを示すとともに、二次石灰化の影響を考慮する必要性を示した。今後の研究では、異なる底生有孔虫種間の測定値の比較を行い、より精度の高いBWO復元を目指すとともに、下北半島沖における長期的な貧酸素化イベントの解明に貢献することが期待される。