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[MIS14-P21] ODP/IODPコアのµXRF分析に基づく白亜紀OAE期と古第三紀PETM期におけるインド洋の古環境変動復元の試み
キーワード:海洋無酸素事変、暁新世/始新世温暖極大期、インド洋、海洋循環、温暖化、古環境
白亜紀中期の海洋無酸素事変期(OAE)と暁新世/始新世境界温暖極大期(PETM)は,大気-海洋系へ大量の温室効果ガスの放出に伴う極端な温暖化と炭素循環の擾乱が起こった,地球史の中でも特筆すべき“超温室期”である。このような過去の“超温室期”の地球環境変動の復元は,現在進行している温暖化による地球システムの応答を予測する上でも重要である。OAE期とPETM期における環境変動は,これまでに大西洋や太平洋からは多くの研究(João et al., 2010; Takashima et al., 2011; van Bentum et al., 2012)がなされているが,インド洋の記録については未だ限られている(Dickson et al., 2016; Wolfgring et al., 2024),気候モデル研究によると,白亜紀中期や始新世前期における深層水の形成場はインド洋にあったと考えられており(Donnadieu et al., 2016; Zhang Y et al., 2022),‟超温室期”の海洋循環を理解する上でも極めて重要な地点である。そこで本研究では,インド洋で掘削されたOAE2とPETMの相当層を含むODP/IODPコアを研究対象とし,µXRF分析装置(Bruker JETSTREAM)を用いて,同一イベントにおける多地点の元素組成変動を比較し,極端な温暖化が起こった際の海洋環境復元を試みた。
本研究で用いたOAE2相当層を含む試料は,エクスマウス台地で掘削されたODP Leg 122-762C-75X(以下762C),ODP Leg 122-763C-2R(以下763C),ケルゲレン海台で採掘されたODP Leg 183-1138A-69R(以下1138A),メンテル海盆で採掘されたIODP Exp 369-U1516D-4R(以下U1516D)である。762CではOAE2の黒色頁岩層から気候の回復期にかけての層を,763CではOAE2中の一時的な寒冷化イベント(Plenus Cold Event, PCE)が含まれる層を,1138AではOAE2開始前から終了後の層を,1516DではOAE2開始期から,PCEを含む,黒色頁岩層までの測定を行った。またPETM層準に関しては東経90°海嶺から掘削されたIODP Exp 353-U1443A-35X(以下U1443A),南ケルゲレン海台から掘削されたODP Leg119-738C-11R(以下738C)を用いた。
測定の結果,Mn/Fe比(酸化還元度の指標)とK/Ti比(化学風化度の指標)は全ての地点でOAE2とPETM層準で減少していた。S/Ti比(酸化還元度の指標)とBa/Ti比(生物生産量の指標)は763CとU1516DのOAE2層準では増加するが,762CのOAE2層準と738CとU1443AのPETM層準では減少していた。762CのOAE2層準は,オスミウム同位体比層序(Matsumoto et al., in preparation)に基づくとOAE開始期に堆積中断(ハイエイタス)が見られ,酸化還元度や生物生産量の低下はPCEの寒冷化に伴う深層水の強化が影響した可能性が考えられる。またPETM層準はOAE2とは異なり,底層が酸化的で生物生産が減少していた可能性が示唆された。
今後は,独立成分分析(ICA)を用いた統計的解析を行い,地域毎の元素組成の変動因子について検討すると共に,OAEとPETM時にインド洋でどのような環境変動が起こっていたかについて考察を進めていく。
本研究で用いたOAE2相当層を含む試料は,エクスマウス台地で掘削されたODP Leg 122-762C-75X(以下762C),ODP Leg 122-763C-2R(以下763C),ケルゲレン海台で採掘されたODP Leg 183-1138A-69R(以下1138A),メンテル海盆で採掘されたIODP Exp 369-U1516D-4R(以下U1516D)である。762CではOAE2の黒色頁岩層から気候の回復期にかけての層を,763CではOAE2中の一時的な寒冷化イベント(Plenus Cold Event, PCE)が含まれる層を,1138AではOAE2開始前から終了後の層を,1516DではOAE2開始期から,PCEを含む,黒色頁岩層までの測定を行った。またPETM層準に関しては東経90°海嶺から掘削されたIODP Exp 353-U1443A-35X(以下U1443A),南ケルゲレン海台から掘削されたODP Leg119-738C-11R(以下738C)を用いた。
測定の結果,Mn/Fe比(酸化還元度の指標)とK/Ti比(化学風化度の指標)は全ての地点でOAE2とPETM層準で減少していた。S/Ti比(酸化還元度の指標)とBa/Ti比(生物生産量の指標)は763CとU1516DのOAE2層準では増加するが,762CのOAE2層準と738CとU1443AのPETM層準では減少していた。762CのOAE2層準は,オスミウム同位体比層序(Matsumoto et al., in preparation)に基づくとOAE開始期に堆積中断(ハイエイタス)が見られ,酸化還元度や生物生産量の低下はPCEの寒冷化に伴う深層水の強化が影響した可能性が考えられる。またPETM層準はOAE2とは異なり,底層が酸化的で生物生産が減少していた可能性が示唆された。
今後は,独立成分分析(ICA)を用いた統計的解析を行い,地域毎の元素組成の変動因子について検討すると共に,OAEとPETM時にインド洋でどのような環境変動が起こっていたかについて考察を進めていく。
