日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS14] 古気候・古海洋変動

2025年5月29日(木) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:小長谷 貴志(海洋研究開発機構)、山崎 敦子(名古屋大学大学院環境学研究科)、長谷川 精(高知大学理工学部)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)


17:15 〜 19:15

[MIS14-P31] 津軽ヒバの年輪酸素同位体比年層内変動と大気・海洋変動指標との相関

*庄 建治朗1、浅井 史1中根 完太1、大山 幹成2、李 貞3中塚 武3 (1.名古屋工業大学、2.東北大学、3.名古屋大学)

キーワード:年輪酸素同位体比年層内分析、津軽ヒバ、PDO指数

樹木年輪セルロースの酸素安定同位体比(δ18O)は、年輪形成当時の水文気候環境(主に相対湿度と土壌水の同位体比)をよく反映することが確かめられている。著者らは、年輪内を多数のセグメントに分割して酸素同位体比を測定することにより、過去数百年の水文気候環境を高時間分解能で復元する研究を進めている。本研究では、青森県五所川原市金木町(40°54'N, 140°28'E)で採取されたヒバ(Thujopsis dolabrata)現生木のサンプル2個体の1840-2001年の部分を分析した。サンプルは木口面の薄板に加工しセルロースを抽出した後、顕微鏡下で各年輪を成長方向に6等分し、元素分析計と同位体比質量分析計のオンラインシステムにより酸素同位体比を測定した。得られた酸素同位体比の各年層内の変動は、多くの年輪で最も早材側のセグメント1で最大値をとり、最も晩材側のセグメント6に向けて低下していくパターンを示した。各セグメントの酸素同位体比の経年変動と、青森地方気象台における月別の相対湿度データ(1882-2001年)との相関を分析したところ、2つの個体ともにセグメント1では5月の相対湿度と最も強い負相関を示し、セグメント2以降はより遅い時期の相対湿度との相関が高くなり、セグメント6では8-9月の相対湿度と最も強い負相関となった。このことから、これらの個体の成長期は5月から9月頃と推測される。さらに広域の気候条件との関連を調べるため、各セグメントの酸素同位体比と様々な大気海洋変動指標との相関を分析したところ、セグメント3-4(6月から7月前半頃に相当)の酸素同位体比と前年から数年前までの秋から冬にかけてのPDO指数との間に比較的強い相関が見られた。セグメント3-4の酸素同位体比とPDO指数のそれぞれについて、北太平洋の海面水温の分布との空間相関を分析したところ、両者に共通した相関のパターンが見られたことから、PDOの変動がアリューシャン低気圧の強弱の変動などを通し、相当な時間遅れを伴って津軽地方の6月から7月前半頃の気候環境の変動に影響を及ぼしている可能性があり、この地域の酸素同位体比年層内データが過去のPDO変動を復元する代替指標として利用できる可能性がある。これらを関連づけるメカニズムについては今後の検討課題である。