日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS14] 古気候・古海洋変動

2025年5月29日(木) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:小長谷 貴志(海洋研究開発機構)、山崎 敦子(名古屋大学大学院環境学研究科)、長谷川 精(高知大学理工学部)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)


17:15 〜 19:15

[MIS14-P32] 最終間氷期以降のバイカル湖湖底堆積物の再構築年代に基づく古環境変動解析

*板山 由依1村上 拓馬2、藤田 奈津子3鏡味 沙耶3、木田 福香3落合 伸也4丹羽 正和3勝田 長貴1 (1.岐阜大学、2.公益財団法人北海道科学技術総合振興センター幌延地圏環境研究所、3.日本原子力研究開発機構、4.金沢大学 環日本海域環境研究センター)

キーワード:海洋酸素同位体ステージ5d、氷河作用

シベリア南東部・バイカル湖地域は、日射量変動に対して地球上で最も鋭敏に応答してきた。バイカル湖湖底堆積物を用いた古環境復元研究はこれまで数多く行われてきた(例えば、Prokopenko et al., Quat Sci Rev, 2006)。その中で、生物起源シリカ(BioSi)や花粉化石に基づく古気候記録は、氷期・間氷期(数万年)スケールや間氷期における千年スケールの変動を明確に示した。一方で、このような生物指標は寒冷期において低濃度でほぼ一定に推移するため、環境変動を評価することは困難であった。そこで、本研究は生物起源と独立性の高い無機地球化学指標に着目し、バイカル湖湖底堆積物コアBDP-99-1のケイ酸塩分画の鉱物粒子径、ウラン(U)含有量をBioSi含有量と共に連続的に測定してきた。本発表では、再検討した年代軸に基づく、過去14万年間の古環境変動解析の結果を報告する。
1999年に、バイカル湖の南湖盆と中央湖盆の境界に位置するポソルスカヤバンクでBDP-99-1(全長0–113.3 m)とBDP-99-2(全長109–251.9 m)が掘削された(BDP99-Members, Quatern Int, 2005)。BDP99コアの年代軸は、バイカル湖珪藻含有量と海洋酸素同位体変動の対比によって求められた。このうち、本研究はBDP-99-1コアを用いて表層22.3 m(過去13.6 kyrs)の分析を行った。まず、2 cm間隔で分取した50 mgの乾燥試料を用いて、10%のH2O2による有機物除去、1 Mの塩酸による炭酸塩除去、2 MのNa2CO3によるBioSi成分及び残渣の鉱物粒子の抽出処理をそれぞれ施した。そして、BioSi含有量はICP-AES分析(岐阜大学)、鉱物粒子径はレーザー回折散乱分析(JAEA東濃)によりそれぞれ求めた。一方、U含有量は、50 mgの乾燥試料を混酸(46%のHF、61%のHNO3、30%のH2O2)で全分解し、ICP-MS分析(H-RISE、JAEA東濃)によって定量した(Murakami et al., J. Paleolimnol, 2010)。また、土壌有機炭素14C年代は、加速器質量分析装置(JAEA東濃)を用いて測定し、校正年代はOxCalを用いて変換した(Ramsey, Radiocarbon, 2009)。粒度組成は、粒度分布を用いたエンドメンバーモデリング解析(Paterson and Heslop, Geochem Geophys Geosyst, 2015)を行った。
堆積物の年代軸は、表層721.5 cmを14C年代で、深度125~3306 cmをBioSi層序の複合解析によって構築した。まず、表層721.5 cmの年代は、14点の14C年代のうち、信頼性の高い12点を用いて決定した。そして14C年代のリザーバー効果を、上位5点の14C年代(深度24–125 cm)を用いて求めた。このリザーバー効果は、後背地から供給される有機物に由来するものである(Prokopenko et al., Quat Res, 2007)。その結果、最表層の堆積年代が743年前を持つことが推算された。本研究は、743年を12点の14C年代から差し引いた後、OxCal校正年代を求めた。一方で、深度125–3306 cm は、先行研究のバイカル湖BioSi層序(BDP99-Members, Quatern Int, 2005)と本研究のBioSi含有量の対比から求めた。その結果、MIS 5c最下部(104 ka)が1833 cmから1673 cmに、MIS 5e(130 ka)最下部が2024 cmから2069 cmに改訂された。再構築した年代軸から求めた平均堆積速度は、MIS 1: 5.6 cm/ka、MIS 2: 13.3 cm/ka、MIS 3: 27.1 cm/ka、MIS 4: 23.2 cm/ka、MIS 5: 12.1 cm/kaであった。
BDP99-1コアのBoSi含有量とU/Th比は共に、間氷期(MIS 1と5)に高く、氷期(MIS 2と4)に低い傾向を示した。バイカル湖湖底堆積物のBoSi含有量は気温指標、U/Th比はセレンガ川流域の乾湿指標となり得ることが報告されている(Prokopenko et al., 2006; Murakami et al., Quat Sci Rev, 2012)。よって、U/Th比の平均値は、MIS 1で0.72 ± 0.20、MIS 5eで0.58 ± 0.09を示すことから、MIS 1はMIS 5eよりも湿潤環境であったことが示唆された。一方、粒度密度分布は、6つの端成分(EM1: 0.26 μm、EM2: 4.5 μm、EM3: 7.7 μm、EM4: 11.6 μm、EM5: 15.2 μm、EM6: 133 μm)によって、全粒度密度分布の99.7%を説明する。EM5の寄与率はMIS 1と5eで高く、EM6の寄与率はMIS 2, 3, 4で高かった。これは、EM5は間氷期に河川作用の強化によって湖に流入したシルトサイズの懸濁物を反映するのに対し、EM6は、湖南部のKhamar-Daban山脈に由来する氷河運搬砕屑物(IRD)に起因するものと推察される。