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[MIS15-11] 東南極内陸ドームふじ基地におけるJARE44の降水イベントとその再現
キーワード:南極、現地観測、再解析、事例解析
南極氷床上では氷床の急斜面と極高気圧により、通常は海洋性の湿潤・温暖な空気塊の内陸への侵入は阻まれるため、降水はダイヤモンドダストのような晴天下での降水が時間的な大部分を占める (Schlosser et al., 2010など)。しかしながらブロッキング高気圧が発達すると大陸内部まで温かく湿った空気が入り込み、内陸でも強い降水を引き起こすことが知られていることが知られている(Hayasaka et al., 2013など)。第44次日本南極観測隊(JARE44)によって2003年2月から2004年1月まで行われた内陸ドームふじ基地(77.32°S, 39.70°E, 3810m a.s.l.)での観測では地表面での気象や放射収支、鉛直の後方散乱の観測などが行われた。この期間、18日にわたり11の強い降水イベントが生じており、このイベント期間中の降水量が年間の総降水量の約半分を占めていた(Fujita & Abe, 2006)。そのため、このような急激な降水イベントは南極氷床上での水収支の理解にとって重要である。 本研究ではまず、JARE44期間中に行われた気温や雲量、放射収支といった地上観測の結果を再解析プロダクトと比較する。そして、精度の良い再現を行うことができた長期的なプロダクトの結果を用いてJARE44のイベントの強さを評価する。本稿では比較する複数のプロダクトのうち、ECMWFのIFSモデルで4次元変分法によるデータ同化を用いたERA5(Hersbach et al., 2020)との比較に焦点を当てる。水平解像度は0.25度、時間解像度は1時間である。ERA5は全球的に気象要素や放射収支をよく再現する(Zeng et al., 2023など)が、データ同化の行われていない内陸のドームふじでも良い再現性を示し、気象要素や雲をよく再現した。ただし、下向き長波放射の日変化に関しては完全には再現できていなかった。下向き長波放射は日射によって生じたドーム加熱による二次放射の補正を行ったものの十分ではなく、日中の観測の過大評価の可能性がある。1つのイベントを除いてERA5は降水の傾向もよく再現していたが、降水量は観測値の半分程度だった。シーロメーターの鉛直後方散乱係数プロファイルとの比較でも、光学的に分厚い雲がシーロメーターで観測される時間帯でERA5は強い雲水量・雲氷量を示しており、雲量と雲出現頻度の比較でもERA5は平年値およびイベント時の観測結果をよく再現していた。 ERA5の500hPaジオポテンシャル高度は降水昇温イベント期間中に高気圧によるブロッキングを示しており、内陸にまで水蒸気流入を生じさせ、降水をもたらしていた。この水蒸気の流入は絶対量としては非常に小さかったが、相対値では非常に強く、JARE44期間中で特に強いイベント(11月頭イベント)では平年値の+300%を超える非常に強い流入となっていた。 信頼性を確かめたERA5について、1979年から2024年の45年間の長期的な結果を用い、降水イベントを評価した。2003年の日降水量の平均値と標準偏差の和は0.12mm/dyであり、これより高い降水量のある日を降水イベントとすると、2003年は年間総降水量16.1mmでイベント期間の総降水量が7.7mmだったのに対し、45年平均では年間総降水量は20.2mmに対しイベント期間の総降水量は11.5mmで、2003年は降水量の少ない年であったが、これはほとんどイベント期間の降水量で説明できる。JARE44期間中で最も昇温が強かったのは11月頭イベントでは2日間で日平均気温が22K増加していたが、このときの気温は9-11月の春期の中では歴代37位、降水量は歴代16位で、非常に強いイベントであったことがわかった。
