13:45 〜 14:00
[MIS15-13] MIS 11の海氷・氷床変動に対するケープダンレー底層水形成の応答
★招待講演
キーワード:南大洋、南極底層水、スーパー間氷期、粒度、古流速、端成分混合解析
南大洋は全体として正味のCO2吸収をしており,南大洋の物理的・化学的プロセス(風速,水温,海洋の鉛直混合)および生物活動(光合成)がCO2吸収に重要な役割を果たしていると考えられている.その中でも南極底層水(AABW)の形成は,鉛直混合による深層へのCO2隔離や低炭酸イオン濃度水塊の沈み込みを引き起こし,地球規模の炭素循環に重要な役割を果たすとされる.このような重要な役割にもかかわらず,AABW形成の過去の動的な挙動は依然としてよく理解されておらず,特に温暖期に焦点を当てた研究では,亜南極の堆積物コアを使用した1件の報告にとどまっている(e.g., Glasscock et al., 2020).そこで本研究では,過去45万年間のケープダンレー底層水(CDBW)の復元を行い,どのような環境変化によって過去にCDBW形成の弱化が生じたのかを古環境記録と海洋モデルの比較により明らかにすることを目的として研究を行った.
学術研究船白鳳丸KH-20-1航海で採取されたワイルドキャニオンのWIC-6PCコア(水深3153 m)を用いた.WIC-6PCはCDBW形成域の沖合で採取されたため,海洋環境とCDBW形成変動の直接的な比較を行うことができる.年代モデルは,14C年代(TOC),珪藻および放散虫の生層序,Cycladophora davisiana相対産出頻度,および,古地磁気層序から推定した.古環境代理指標は,X線CT(Ice Rafted Debris; IRDカウント),無機元素分析(生物生産,酸化還元),粒度分析(古流速),珪藻群集(海氷)を使用した.粒度分析では,多峰性の粒度分布を持つ堆積物から,堆積過程の識別と定量化のために端成分混合解析(R-package EMMAgeo)を行った.またモデル実験では,Mensah et al. (2021)で開発されたケープダンレーポリニヤ域の領域海洋モデル(MITgcm)を使用した.モデル解像度は,水平2 km,垂直40 mを採用し,構成とパラメータはMensah et al. (2021)に従った.加えて,温暖環境を想定した環境条件は,海洋観測記録と古気候記録を基に再現した.
その結果,古環境記録からMIS 11にCDBW流速の有意な弱化が確認された.粒度の端成分混合解析からWIC-6PCが3つの端成分(輸送プロセス)によって構成され,それぞれ底層流の強さを反映していることが示唆された.その中でも,現代のCDBWに類似した流速による砕屑粒子の輸送を示すEM3(>10~15 cm/s)は,MIS 5からMIS 9の各間氷期において高い含有を示したが,MIS 11ではEM3含有量は減少し,流速の減衰を示した(<5~10 cm/s).海底の酸化還元指標であるMn/Fe比も,MIS 11に亜酸化的な環境へのシフトを示し,CDBW形成の弱化を支持した.またMIS 11では,夏季海氷珪藻の相対産出頻度の減少が確認され,開水域の期間が長期化するような温暖な環境へのシフトを示唆した.
モデル実験からは,気温上昇(+2℃),水温上昇(+1℃),低塩化(-0.8 psu)の環境条件を組み合わせた際に,MIS 11と同等のCDBW流速の減衰が確認された.これは,海洋表層の低塩化(夏季海氷生産量の減少と淡水供給による)がブライン排出による高塩化を上回ったことにより生じていた.以上より,古環境記録とモデル実験の結果は整合的であり,CDBW形成の弱化は低塩化が鍵となることが示唆された.また,本結果は温暖化の影響を受けにくい東南極においてもAABW形成の弱化が生じうることを示唆する点で重要である.
学術研究船白鳳丸KH-20-1航海で採取されたワイルドキャニオンのWIC-6PCコア(水深3153 m)を用いた.WIC-6PCはCDBW形成域の沖合で採取されたため,海洋環境とCDBW形成変動の直接的な比較を行うことができる.年代モデルは,14C年代(TOC),珪藻および放散虫の生層序,Cycladophora davisiana相対産出頻度,および,古地磁気層序から推定した.古環境代理指標は,X線CT(Ice Rafted Debris; IRDカウント),無機元素分析(生物生産,酸化還元),粒度分析(古流速),珪藻群集(海氷)を使用した.粒度分析では,多峰性の粒度分布を持つ堆積物から,堆積過程の識別と定量化のために端成分混合解析(R-package EMMAgeo)を行った.またモデル実験では,Mensah et al. (2021)で開発されたケープダンレーポリニヤ域の領域海洋モデル(MITgcm)を使用した.モデル解像度は,水平2 km,垂直40 mを採用し,構成とパラメータはMensah et al. (2021)に従った.加えて,温暖環境を想定した環境条件は,海洋観測記録と古気候記録を基に再現した.
その結果,古環境記録からMIS 11にCDBW流速の有意な弱化が確認された.粒度の端成分混合解析からWIC-6PCが3つの端成分(輸送プロセス)によって構成され,それぞれ底層流の強さを反映していることが示唆された.その中でも,現代のCDBWに類似した流速による砕屑粒子の輸送を示すEM3(>10~15 cm/s)は,MIS 5からMIS 9の各間氷期において高い含有を示したが,MIS 11ではEM3含有量は減少し,流速の減衰を示した(<5~10 cm/s).海底の酸化還元指標であるMn/Fe比も,MIS 11に亜酸化的な環境へのシフトを示し,CDBW形成の弱化を支持した.またMIS 11では,夏季海氷珪藻の相対産出頻度の減少が確認され,開水域の期間が長期化するような温暖な環境へのシフトを示唆した.
モデル実験からは,気温上昇(+2℃),水温上昇(+1℃),低塩化(-0.8 psu)の環境条件を組み合わせた際に,MIS 11と同等のCDBW流速の減衰が確認された.これは,海洋表層の低塩化(夏季海氷生産量の減少と淡水供給による)がブライン排出による高塩化を上回ったことにより生じていた.以上より,古環境記録とモデル実験の結果は整合的であり,CDBW形成の弱化は低塩化が鍵となることが示唆された.また,本結果は温暖化の影響を受けにくい東南極においてもAABW形成の弱化が生じうることを示唆する点で重要である.
