日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS15] グローバル南極学

2025年5月27日(火) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:石輪 健樹(国立極地研究所)、草原 和弥(海洋研究開発機構)、箕輪 昌紘(北海道大学・低温科学研究所)、飯塚 睦(産業技術総合研究所)


17:15 〜 19:15

[MIS15-P05] 2025年1月に観測された昭和基地周辺定着氷の融解について

*小平 翼1早稲田 卓爾1、松澤 孝俊2、野瀬 毅彦1、三上 航平1、岡元 大樹1、石山 幸秀1 (1.東京大学 大学院新領域創成科学研究科、2.海上技術安全研究所)

キーワード:第66次南極地域観測隊、昭和基地、定着氷、海氷融解、流速、熱フラックス

南極地域観測隊(Japanese Antarctic Research Expedition, 以降JAREと略称)の観測行動において砕氷艦しらせによる物資輸送は非常に重要であり、計画的な行動実施には接岸地点の海氷状況の正確な把握、そして予測が求められる。本発表では、JARE66において1月2日より1月29日にかけて実施した海氷海洋観測の結果を速報として衛星観測結果を交えて紹介する。JARE66においては昭和基地周辺、北の浦の海氷融解が活発であり、研究を進めることで海氷の融解に関する知見が得られると期待される。
 砕氷艦しらせは12月31日に昭和基地沖約300mの定着氷に到達し、接岸した。砕氷艦しらせの接岸から離岸を含めた期間におけるオングル海峡の海氷状況をLandsat衛星から確認したところ、12月下旬には西方沖に南北に薄氷地域が確認できた。1月上旬から開放水面が散見でき、時間と共に拡大し、1月下旬にはオングル海峡でも海面露出、開放水面が南より進展した。2月上旬にはオングル島南側の定着氷が流出、海峡の開放水面も拡大していた。つまり、一連の衛星画像はオングル海峡南側から開放水面が徐々に北側に進展することを示唆するものであった。
 一方、第66次南極地域観測隊夏隊として北の浦しらせ接岸地点付近において海氷および海洋の現場観測を行った。観測地点は、物資輸送、および、しらせの砕氷航行に影響されない範囲で、しらせ接岸地点に近しい地点を選定した。水深は約37mであった。以下観測点と故障する。観測点における氷厚は1月10日に130cmであったが、1月15日に130cmを記録した後に顕著に減少し、20日に116cm、29日に99.5cmとなった。観測地点の積雪はどの計測時にも10cmに満たなかったが、表面は白く、アルベドは高いと考えられる。一方で付近の海氷にはパドルと呼ばれる融解水の溜まりが発達し、融解が活発に起きていたと考えられる。
観測点では電磁流速計を水面下3mおよび23mに設置して流速と水温を計測した。大潮期間および小潮期間双方に関して計測を実施した。どちらの深度においても周期的な潮汐流は振幅10cm/sに満たない程度であった。また、上層での計測結果ではより気象擾乱に由来すると考えられる信号が計測された。一方で水温については、上層は1/10まで-1.4℃であったが、その後上昇し始め、18日から19日にかけて-1.0℃から0.4℃程度まで急激に上昇したことがわかった。その後1℃に届くほど上昇した日もあったが24日に発生した20m/sを超える強風イベント後は-0.5℃程度まで低下した。観測点は海氷下であるため、直接的に風応力による鉛直混合が発生したとは考え難い。そのため、開放水面で鉛直混合した海水が貫入するなどの過程を経て水温が急激に低下したものと考えられる。
以上の計測結果を踏まえて計測された海氷厚の低下が大気の熱的強制により上面から引き起こされているか、あるいは海洋の熱的矯正により底面から引き起こされているかを検討した。上面の融解については、大気から海氷への熱フラックスをERA5再解析値より推定した。また、海洋から海氷への熱フラックスはバルク式を用いて推定した。それぞれ数値モデルの不確実性とバルク式の不確実性、特に、アルベドの推定と海氷直下の熱境界層の再現性については検討の余地があると考えられるが、海洋の底面融解が大気と同等に影響をもたらす可能性を示す結果を得た。
また、観測点では連日のCTD観測の結果により海氷下で突発的な熱流入(1/19)があることが示唆された。また、係留電磁流速計の結果からは突発的な北向きの流速増大(1/25)が確認された。これらは海氷の底面融解に寄与する可能性があると考えられ、機構を解明するには、オングル島まわり、表層付近の海水の流動場について、数値モデル等を用いて詳細に検討する必要があると考えられる。