日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS16] 地球流体力学:地球惑星現象への分野横断的アプローチ

2025年5月25日(日) 13:45 〜 15:15 101 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:伊賀 啓太(東京大学大気海洋研究所)、吉田 茂生(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、柳澤 孝寿(国立研究開発法人海洋研究開発機構 海域地震火山部門)、相木 秀則(名古屋大学)、座長:伊賀 啓太(東京大学大気海洋研究所)

14:00 〜 14:15

[MIS16-02] 海底火山で発生する噴煙柱が海面に到達する物理条件

*石峯 康浩1 (1.山梨県富士山科学研究所)

キーワード:海底噴火、噴煙、フンガトンガ・フンガハアパイ火山、福徳岡ノ場

本講演では、2022年にトンガ王国のフンガトンガ・フンガハアパイ火山の噴火で観測された特異な現象の特徴を解明することを目指して、海底火山で発生する噴煙柱に関する力学および熱力学的特性について検討をした結果を報告する。フンガトンガ・フンガハアパイ火山で2022年1月15日に発生した噴火では巨大な噴煙が形成され、全球規模で微気圧変動が観測された。太平洋全域にわたって特異な潮位変化も観測され、日本でも津波警報が発令された。しかし、これらの一連の現象の発生メカニズムは、いまだに十分には解明されていない。本研究では、2021年8月13日に伊豆小笠原弧の南端に位置する福徳岡ノ場火山で発生した海底噴火との違いに着目しながら、フンガトンガ・フンガハアパイ火山の噴火で生じたと思われる噴火の特徴を考察した。福徳岡ノ場火山2021年噴火をはじめとした多くの海底噴火において大気中を上昇する火山噴煙が観測されるものの、その噴煙には火山灰はあまり含まれていない。そのため、それらの噴煙は、マグマの熱で熱せられ海面から蒸発した海水を起源とするものであり、海底から噴出する火山ガスの主成分である水蒸気は海水と混合することで冷やされて凝結し、水中での噴煙は固体粒子ならびに気泡を懸濁した液相が連続相として振る舞うものとみなされている。その結果、マグマ物質から生成された軽石は、水との密度差による浮力で海面までは浮上するものの、大気中を上昇し続けるだけの運動量は維持することができず、“軽石いかだ”となって海面を漂流することが知られている。対照的に、フンガトンガ・フンガハアパイ火山の2022年噴火では顕著な降下火山灰が報告されている上、海面から蒸発した水蒸気だけでは説明がつきにくいほどの高高度まで噴煙が上昇している。このことから、海底で発生した噴煙が水中でも高温の気相と懸濁固体粒子から構成される混合状態を維持したまま海面に達し、陸上で発生する噴煙と同様に大気中を上昇した可能性があると考えた。この仮説を検討するため、水中で高温の気相プルームを実現する力学ならびに熱力学条件を探索する簡単な計算を定常1次元の噴煙モデルを用いて実施した。その結果、マグマの温度が1000K以上の場合、火口の水深が約150 mで火口半径が1 km以上であれば、噴煙内の温度は水の沸点以上を維持できる可能性が示唆された。このとき噴煙内に海水が噴煙内に大量に巻き込まれて気化することで急激な体積膨張を引き起こすため、全球規模での微気圧変動を引き起こすような音波の発生源になった可能性がある。すなわち、気圧波に励起された潮位変動についても、海底噴火でのみ生じうる特異なメカニズムで発生した可能性が示唆された。