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[MIS16-05] 過去の地球規模水循環システムをいかにして解析するか:トポロジーの視点から
キーワード:地球規模水循環、地球システム、トポロジー、摂動解析、構造解析
[背景と問題]地球システム科学は,地球をいくつかのサブシステム(以下Sと略称)に分け,そのサブシステム間の物質のやり取りを,フラックス関数(以下Fと略称)で記述する (e.g., Kump et al., 1999)。これにより,地球における様々な物質循環が解析されている(e.g., Rollinson, 2007)。この手法を,過去の地球に適用した場合,様々な問題が生じうるが,本研究では以下の2つの観測問題に着目する。
(観測問題1)Fの具体的値の情報が不足。
(観測問題2)FはSの量を変数とする関数であるが,その具体的関数型の情報が不足。
一方,Sおよびそれらを結ぶFの配置関係,つまり地球のトポロジーは大きく変化しないと考えられる。あるいは,このトポロジーが変化しない範囲の過去の地球を考える。トポロジーを固定するので,Sの量がFの入出力で決まるという基礎方程式(連立常微分方程式系)の形は一意にきまる。
[目的と手法・対象]以上から,本研究は,情報が不足するFの具体的値や関数型は仮定せず,地球のトポロジーだけを考えて,それが物質循環をどのように制約しているのかを解析することを目指す。
最初に,Fの値は仮定しないが,関数型は仮定する摂動解析を地球システムに応用する。この関数型の仮定の妥当性を知るために,構造解析の数理的手法(e.g., Fiedler & Mochizuki, 2014)を地球システムに応用する。ここでは,Fの関数型も仮定されず,したがって地球システムのトポロジーだけが仮定される。ただし,解析結果は動的平衡条件下に限定される。
解析対象としては,水循環モデルの地球システム(e.g., Kurokaka et al., 2018)を考える。
[摂動解析の結果] 系への摂動によりFやSの量は変化する。しかし,その具体的な値を正確に見積もることはむずかしい。しかし,それらの量が増えたのか,あるいは減少したのか,ならば将来的には観測できる可能性があると考え,摂動解析を地球システムに応用する。この場合,Fの具体的値は仮定しなくて良いが,その具体的な関数型は仮定する必要がある。本研究では,地球システム科学でよく用いられる線形構成則を考える。この構成則と基礎方程式を組み合わせた数値シミュレーションから,摂動に対する系の反応が観測される。次の構造解析との比較を考えて,ここでは動的平衡状態下で成立する以下の結果1と2に着目する。
(結果1)海洋Sを変化させる摂動は,それと直に関係するFに対してだけである。一方,マントルSを変化させる摂動は,大陸地殻SからのFを除く全てのFに対してである。つまり,マントルSの水循環は海洋Sのそれと比べて,様々なF変化の影響を受ける。
(結果2)大陸地殻Sは,海洋Sと海洋地殻Sを結ぶ中間的Sである。ただ,結果1で述べたように,マントルSへの影響に関しては,独立している。摂動を通じて,大陸地殻SがマントルSに影響するのは,海洋Sから大陸地殻Sへの入力Fだけであることが示される。大陸地殻Sからの直接的な入力Fの影響は局所化する。
[構造解析の結果] 摂動解析は上記のように興味深い結果1と2を返すが,Fの関数型を仮定しているため,成立する範囲が限られる可能性がある。そこで,全てを仮定しない,つまりトポロジーだけに着目した構造解析を地球システムに応用する。この結果は,上記の摂動解析の結果を全て含むことが示されるが,大きく違う点が以下のように3つある。
第一に,摂動解析ではFの関数型を指定しているが,構造解析では指定しない。付加条件としては,Sの量を変数とする関数型でパラメタをひとつ持つことだけを考える。よって,上記の結果1と2の成立範囲は広いと期待される。この意味において,摂動解析における線形構成則の仮定は妥当である。
第二に,解析結果が1つの行列で表現されるので,摂動解析のような数値シミュレーションを行う必要がない。つまり,「紙と鉛筆」だけで閉じるので,他分野との理論的関係を論じることが解析的に可能となる。これは,従来の解析に新しい視点を与えるものである。例として,上記の結果1と2を,集合・位相論的視点から解釈する。
第三に,構造解析では系の動的平衡状態における解析であるので,摂動直後の非平衡状態の解析はできない。一方,摂動解析は数値シミュレーションなので可能ではあるが,解析性が失われる。そこで,本研究では,非平衡安定性の解析に有用なKCC理論(e.g., Yamasaki & Yajima, 2022)との比較も試みる。
(観測問題1)Fの具体的値の情報が不足。
(観測問題2)FはSの量を変数とする関数であるが,その具体的関数型の情報が不足。
一方,Sおよびそれらを結ぶFの配置関係,つまり地球のトポロジーは大きく変化しないと考えられる。あるいは,このトポロジーが変化しない範囲の過去の地球を考える。トポロジーを固定するので,Sの量がFの入出力で決まるという基礎方程式(連立常微分方程式系)の形は一意にきまる。
[目的と手法・対象]以上から,本研究は,情報が不足するFの具体的値や関数型は仮定せず,地球のトポロジーだけを考えて,それが物質循環をどのように制約しているのかを解析することを目指す。
最初に,Fの値は仮定しないが,関数型は仮定する摂動解析を地球システムに応用する。この関数型の仮定の妥当性を知るために,構造解析の数理的手法(e.g., Fiedler & Mochizuki, 2014)を地球システムに応用する。ここでは,Fの関数型も仮定されず,したがって地球システムのトポロジーだけが仮定される。ただし,解析結果は動的平衡条件下に限定される。
解析対象としては,水循環モデルの地球システム(e.g., Kurokaka et al., 2018)を考える。
[摂動解析の結果] 系への摂動によりFやSの量は変化する。しかし,その具体的な値を正確に見積もることはむずかしい。しかし,それらの量が増えたのか,あるいは減少したのか,ならば将来的には観測できる可能性があると考え,摂動解析を地球システムに応用する。この場合,Fの具体的値は仮定しなくて良いが,その具体的な関数型は仮定する必要がある。本研究では,地球システム科学でよく用いられる線形構成則を考える。この構成則と基礎方程式を組み合わせた数値シミュレーションから,摂動に対する系の反応が観測される。次の構造解析との比較を考えて,ここでは動的平衡状態下で成立する以下の結果1と2に着目する。
(結果1)海洋Sを変化させる摂動は,それと直に関係するFに対してだけである。一方,マントルSを変化させる摂動は,大陸地殻SからのFを除く全てのFに対してである。つまり,マントルSの水循環は海洋Sのそれと比べて,様々なF変化の影響を受ける。
(結果2)大陸地殻Sは,海洋Sと海洋地殻Sを結ぶ中間的Sである。ただ,結果1で述べたように,マントルSへの影響に関しては,独立している。摂動を通じて,大陸地殻SがマントルSに影響するのは,海洋Sから大陸地殻Sへの入力Fだけであることが示される。大陸地殻Sからの直接的な入力Fの影響は局所化する。
[構造解析の結果] 摂動解析は上記のように興味深い結果1と2を返すが,Fの関数型を仮定しているため,成立する範囲が限られる可能性がある。そこで,全てを仮定しない,つまりトポロジーだけに着目した構造解析を地球システムに応用する。この結果は,上記の摂動解析の結果を全て含むことが示されるが,大きく違う点が以下のように3つある。
第一に,摂動解析ではFの関数型を指定しているが,構造解析では指定しない。付加条件としては,Sの量を変数とする関数型でパラメタをひとつ持つことだけを考える。よって,上記の結果1と2の成立範囲は広いと期待される。この意味において,摂動解析における線形構成則の仮定は妥当である。
第二に,解析結果が1つの行列で表現されるので,摂動解析のような数値シミュレーションを行う必要がない。つまり,「紙と鉛筆」だけで閉じるので,他分野との理論的関係を論じることが解析的に可能となる。これは,従来の解析に新しい視点を与えるものである。例として,上記の結果1と2を,集合・位相論的視点から解釈する。
第三に,構造解析では系の動的平衡状態における解析であるので,摂動直後の非平衡状態の解析はできない。一方,摂動解析は数値シミュレーションなので可能ではあるが,解析性が失われる。そこで,本研究では,非平衡安定性の解析に有用なKCC理論(e.g., Yamasaki & Yajima, 2022)との比較も試みる。