日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS17] 地質学のいま

2025年5月26日(月) 13:45 〜 15:15 201A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:辻森 樹(東北大学)、山口 飛鳥(東京大学大気海洋研究所)、尾上 哲治(九州大学 大学院理学研究院 地球惑星科学部門)、小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)、座長:尾上 哲治(九州大学 大学院理学研究院 地球惑星科学部門)、小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)

14:15 〜 14:30

[MIS17-03] セノマニアン末期に南インド洋Exmouth Plateauで堆積した赤色頁岩層の地球化学的・同位体的特徴

*松本 廣直1長谷川 精2、白井 厚太朗3長谷川 卓4田中 えりか5安川 和孝6黒田 潤一郎3 (1.筑波大学生命環境系、2.高知大学理工学部地球環境防災学科、3.東京大学大気海洋研究所、4.金沢大学理工学域地球社会基盤学類、5.高知大学海洋コア国際研究所、6.東京大学大学院工学系研究科エネルギー・資源フロンティアセンター)

キーワード:海洋無酸素事変2、南半球高緯度域、Plenus Cold Event

白亜紀後期セノマニアン末(約9400万年前)に発生した海洋無酸素事変(Oceanic Anoxic Event: OAE)2は、白亜紀で最大規模のOAEであり、テチス海・大西洋・太平洋と広範囲で有機質堆積物・貧酸素化の証拠が確認されている。しかし、従来のOAE2研究の中心は低緯度域であり、南半球高緯度域での研究は限られている。
南インド洋のOcean Drilling Program (ODP) Site 762 (Exmouth Plateau)で掘削された海洋コアには、OAE2に相当すると考えられる頁岩層が記録されている。しかし、この層準は他セクションで報告されている貧酸素環境で堆積した黒色頁岩とは異なり、赤色を呈している。このことは、OAE2の最中でも南半球高緯度域では地域的に酸化的な堆積環境が存在していたことを示唆しており、OAEの全球的な広がりを考えるうえで重要な堆積記録である。しかしながら、この赤色頁岩層準に関する地球化学的・同位体分析はほとんど行われていない。そこで本研究では、XRFコアスキャナーを用いてODP Site 762に記録された赤色頁岩層準の元素組成を明らかにし、オスミウム・炭素同位体比層序を構築することで正確な堆積年代を決定した。これらの情報を基にOAE2発生時期における南半球高緯度域での海洋循環の変化について考察した。
XRFコアスキャナー分析の結果から、Site 762のセノマニアン末期赤色頁岩層準には硫黄がほとんど含まれておらず、鉄・マンガン酸化物が濃集していることが判明した。このことから、この層準は酸化的な環境で堆積したことが示唆された。また、オスミウム・炭素同位体比変動から、(1) OAE2の下部はハイエタスで記録が欠如していること、(2)赤色頁岩層準はOAE2の最中に発生した寒冷化イベントであるPlenus Cold Eventの終わりごろに堆積を開始したことが判明した。このことから、寒冷化の際に南半球高緯度域にて酸素に富む表層水の沈み込みが強化されてハイエタスが形成され、その後Plenus Cold Eventが終わって表層水の沈み込みが弱まるにつれて、赤色頁岩の堆積が始まったと考えられる。このようなOAE2中のハイエタスや赤色岩は南半球高緯度域の複数地点で確認されており、南半球高緯度域がOAE2発生期間中の重要な海水の沈み込み域であった可能性を示唆している。