15:00 〜 15:15
[MIS17-06] 古地震復元に向けた数値モデリングによるタービダイト形成過程の再現―喜界島周辺海域を例として—
キーワード:タービダイト、新青丸、琉球海溝、喜界島、斜面安定性解析、混濁流モデリング
先歴史時代の地震履歴を地質痕跡から明らかにすることは,巨大地震の発生頻度や最大規模を理解するため重要である.地震に伴う津波や隆起のみならず,強振動は斜面崩壊や混濁流堆積物(タービダイト)といった形で地質痕跡として残されることから,過去の地震動を復元し得る可能性を持つ.従来の地震性タービダイト研究は地震の発生頻度などの履歴研究が中心であるが,地震動の発生による斜面崩壊(表層再懸濁)から混濁流の発生,堆積物運搬,タービダイト形成までを再現した例はない.そこで震源や規模が既知である観測地震によって形成されたタービダイトの形成プロセスについて理解を深め,古地震履歴研究へ適用する必要がある.本研究では研究調査船を用いたコア試料および探査データを取得し,物理モデル(地震動予測,斜面安定性解析,混濁流モデル)によって地震動からタービダイト堆積までのプロセスの再現を目指している.
研究対象地域は琉球海溝中部喜界島周辺海域であり,3度の調査船航海によって海底表層堆積物の採泥および音響探査が実施されている.表層堆積物の取得や音響探査からタービダイト分布についての情報を取得した.2つの小海盆で採取したコア試料において,ここ150年以内に堆積した2層のタービダイト層を確認した.鉛、セシウム同位体年代測定から求めた堆積年代から対比される近傍の地震としては1986年(M6.1)および1911年(M8.0)が挙げられる.中部琉球海溝の観測記録として1911年喜界島地震は最大規模であり,これに次ぐ地震規模はM6–7程度で,その頻度は5年に1度程度である.
年代対比可能な二つの地震がほかの地震に比べ混濁流を発生させるポテンシャルを持つかについて,斜面安定性解析および地震動距離減衰式を基に検討した。斜面安定性解析は簡易ビショップ法を用いて,調査海域における安全率が1となる地震加速度を求めた.観測地震の地震加速度はS-netデータから回帰したNakanishi and Takemura (2024) モデルを用いて,震源断層からの距離,Mw,震源深さ,地殻の厚さから面的な最大加速度を得た.喜界島周辺域におけるMw>5.5の12の地震の内、海盆に面する斜面が不安定となる地震動をもたらしたイベントは年代対比された2つのイベントと整合的であった。
この解析から導かれた不安定斜面を混濁流の発生域として,’turb2d’(成瀬,2020)による数値計算からタービダイトの分布を求めた.計算結果では数cmの観測層厚をおおむね再現できる結果を得ることができた.年代対比から推定された地震イベントは混濁流の発生と流下プロセスにおいても物理的な意味合いを持ってトリガー要因であることが示された.
本研究の一連の順計算では地震特性からタービダイト分布を物理モデルで説明可能であることから,タービダイト分布をインプットとした逆問題として扱うことで,地質痕跡から古地震を復元することが可能となることが期待される.
Nakanishi and Takemura (2024) Development of an offshore ground motion prediction equation for peak ground acceleration considering path effects based on S-net data. Earth, Planets and Space 76, 146.
成瀬 元 (2020) オープンソースソフトウェアturb2dによる混濁流シミュレーション. 堆積学研究 78, 54–54.
研究対象地域は琉球海溝中部喜界島周辺海域であり,3度の調査船航海によって海底表層堆積物の採泥および音響探査が実施されている.表層堆積物の取得や音響探査からタービダイト分布についての情報を取得した.2つの小海盆で採取したコア試料において,ここ150年以内に堆積した2層のタービダイト層を確認した.鉛、セシウム同位体年代測定から求めた堆積年代から対比される近傍の地震としては1986年(M6.1)および1911年(M8.0)が挙げられる.中部琉球海溝の観測記録として1911年喜界島地震は最大規模であり,これに次ぐ地震規模はM6–7程度で,その頻度は5年に1度程度である.
年代対比可能な二つの地震がほかの地震に比べ混濁流を発生させるポテンシャルを持つかについて,斜面安定性解析および地震動距離減衰式を基に検討した。斜面安定性解析は簡易ビショップ法を用いて,調査海域における安全率が1となる地震加速度を求めた.観測地震の地震加速度はS-netデータから回帰したNakanishi and Takemura (2024) モデルを用いて,震源断層からの距離,Mw,震源深さ,地殻の厚さから面的な最大加速度を得た.喜界島周辺域におけるMw>5.5の12の地震の内、海盆に面する斜面が不安定となる地震動をもたらしたイベントは年代対比された2つのイベントと整合的であった。
この解析から導かれた不安定斜面を混濁流の発生域として,’turb2d’(成瀬,2020)による数値計算からタービダイトの分布を求めた.計算結果では数cmの観測層厚をおおむね再現できる結果を得ることができた.年代対比から推定された地震イベントは混濁流の発生と流下プロセスにおいても物理的な意味合いを持ってトリガー要因であることが示された.
本研究の一連の順計算では地震特性からタービダイト分布を物理モデルで説明可能であることから,タービダイト分布をインプットとした逆問題として扱うことで,地質痕跡から古地震を復元することが可能となることが期待される.
Nakanishi and Takemura (2024) Development of an offshore ground motion prediction equation for peak ground acceleration considering path effects based on S-net data. Earth, Planets and Space 76, 146.
成瀬 元 (2020) オープンソースソフトウェアturb2dによる混濁流シミュレーション. 堆積学研究 78, 54–54.