日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS17] 地質学のいま

2025年5月26日(月) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:辻森 樹(東北大学)、山口 飛鳥(東京大学大気海洋研究所)、尾上 哲治(九州大学 大学院理学研究院 地球惑星科学部門)、小宮 剛(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)

17:15 〜 19:15

[MIS17-P08] 原生代の気候変動と大陸配置

*小宮 剛1 (1.東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻)

キーワード:気候変動、酸素同位体、超大陸分布

生命の起源,真核生物の出現および多細胞動物の起源は地球生命における3つの大進化とされる.そうした大進化が小進化の積み重ねによるのか,大進化を惹起するなんらかの原動力が必要なのかは今なお大きな問題として残る.一方で,それをどのようにして明らかにするのかも非常に難しい問題としてある.そして,私たちは,生命進化と環境進化を地球史試料から解読し,両者を比較することで,この問題を明らかにすることを目指している.
原生代は25億年前から5.4億年前までの期間で,初期と末期には全球凍結が起きたことが示唆されており,同時にこの時代に大気・海洋の酸化が進んだことが示されている.これまでの研究では,原生代初期の大酸化イベント後に真核生物が出現したことが化石記録(19億年前)と分子時計(22億年前)から示されていることから,この時代の大気酸素濃度は好気呼吸に必要なパスツールポイントより少し高いくらいで安定していたと言われてきた.一方最近の研究では,原生代を通じて大気酸素濃度が大きく変動したことやパスツールポイント以下だったことが示され,大きな議論になっている.また気候に関して,これまでに原生代のいくつかの時代の地層から氷河性堆積物が報告されたが,後にそれらの多くは新原生代の氷河期の時に形成されたものであることが示され,原生代初期と末期の全球凍結と19〜18億年前頃を除き,信頼性の高い氷河性堆積物は見つかっていない.そのため,原生代は温暖な,比較的安定した気候の時代であったと考えられている.
化石記録の乏しい先カンブリア時代の過去の気候を推定する手法として,氷河性堆積物の有無,炭酸塩岩・炭酸塩鉱物,リン酸塩鉱物および石英の酸素同位体比,炭酸塩鉱物の凝集同位体温度計およびチャートのSi同位体がある.しかし,従来の代替指標では,原生代の海水温が20〜100℃ほどであったと推定されており,その非常に高い温度ととても幅広い温度範囲はあまり信頼性がない.その高い推定温度の原因として,海の酸素やSi同位体の経年変化や堆積後の変質の影響が挙げられている.一方で,非常に広い温度範囲は海の酸素同位体の経年変化だけでは,説明できないので,それ以外の原因を考慮する必要がある.
原生代には,コロンビアとロディニアの二つの超大陸が存在したとされる.一般に,超大陸が存在している場合は,大陸が分散している場合に比べて,各大陸の古地理・古緯度を推定しやすい.そこで,本研究では,炭酸塩岩の酸素同位体値のデータベースを新たに構築し,それぞれの古緯度や大陸分布と合わせて,原生代の海水の推定温度と古地理の関連を調べた.その温度推定には,最近提案された海水の酸素同位体値の経年変化のデータを用いた.その結果は原生代の海水温が0〜20℃くらいであったことを示し,先行研究で言われていた原生代の高温環境とは矛盾し,現在程度の環境であったことを示唆する.また,16〜15億年前と8〜6億年前の海水温が-10〜10℃に低下したことが示された.後者は氷河性堆積物の存在から示唆されるこの時代の寒冷期と調和的だが,16〜15億年前の年代を持つ氷河成堆積物は発見されていないので,前者は地質記録と矛盾する.また,23や19億年前の海水温は非常に高かったことが計算された.その高い推定温度は見かけの温度上昇で,この時代に古原生代の全球凍結や19億年前の氷床の融解に伴う低い酸素同位体値をもつ淡水が大量に流入したことにより,炭酸鉱物が形成された海域の酸素同位体値が低下したことによるのかもしれない.
古緯度と推定された海水温の関係では,全体的に,同じ時代で比べた時に,一部では逆転も見られたが,高緯度データの方が低い傾向が見られた.それゆえに,各時代の大きな温度範囲の一部は古地理で説明できる.