日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS19] 大気電気学:大気電気分野の物理現象解明から防災への応用まで

2025年5月29日(木) 13:45 〜 15:15 展示場特設会場 (4) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:菊池 博史(国立大学法人 電気通信大学)、鴨川 仁(静岡県立大学グローバル地域センター)、座長:菊池 博史(国立大学法人 電気通信大学)

13:45 〜 14:00

[MIS19-01] 気象雷モデルを用いた数値実験〜その課題と今後の開発について〜

★招待講演

*佐藤 陽祐1 (1.北海道大学理学研究院)

気象雷モデルとは、日々の天気予報等でも用いられている数値気象モデルにおいて、雲を構成する水物質が持つ電荷を直接予報変数として扱い、それが作る電場や電位を陽に計算するように数値気象モデルを拡張したものであり、英語表記ではBulk Lightning Model (BLM)とも呼ばれる。この気象雷モデルの開発の歴史は、1980年代まで遡り(例えば, Takahashi 1984)、米国(Mansell et al. 2005, Ziegler et al. 1991, Fierro et al. 2013)、フランス(Barthe et al. 2012)、 イギリス(Coutier et al. 2019)などでも開発されている。我が国でも2000年代に開発されたのを皮切りに(Hayashi 2006など)、現在でも開発が続いている(Sato et al. 2019, 2022)。この気象雷モデルを用いることで、積乱雲をはじめとした雲内部の電荷とそれが作り出す電場の3次元的な構造を、物理法則に基づいてモデルの各格子で計算することができる。また計算された電場の情報を用いて、モデル内での発雷が発生する場所や頻度についても直接計算することが可能である。気象モデルの出力を使って経験的な方法により雷頻度を診断する方法も広く用いられているが(例えば, MaCaul et al. 2009, 2020)これらは、電荷や電場の情報を計算することはなく、雷に関連が深い物理量(例えば霰の体積や、上昇流の強さなど)から経験的な関係式を元にした推定であり、直接電荷を計算する気象雷モデルとは大きく異なる。気象雷モデルと従来の経験的な手法により計算された雷頻度の比較では、気象雷モデルの方が地上雷放電観測で観測された雷頻度をよく再現しており(Tomioka et al. 2023)、気象雷モデルは数値実験によって雷頻度を再現するために強力なツールである。そのため、気象雷モデルを用いた様々な数値実験がこれまで実施されてきた。しかしながら、気象雷モデルが利用されるのは、現状では、理想実験や限定的な領域を対象とした現実事例に限られ、気象雷モデルによる数値予報は実施されていない。また観測の解釈や、観測の補完するために気象雷モデルを用いるというアプローチの研究があまり実施されていないのが現状であり、広く用いら得ているとは言い難い。
このような現状を打破し、気象雷モデルを用いて大気電気学の研究に貢献するためには、「気象雷モデルの計算コストの低減」、「予報変数である電荷の観測データ」、「予報変数である電荷の観測によるモデルの妥当性の検証と改良」に取り組む必要がある。
本発表では、これらの問題点や現在著者のグループで取り組んでいる取り組みを紹介する。