日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS19] 大気電気学:大気電気分野の物理現象解明から防災への応用まで

2025年5月29日(木) 15:30 〜 17:00 展示場特設会場 (4) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:菊池 博史(国立大学法人 電気通信大学)、鴨川 仁(静岡県立大学グローバル地域センター)、座長:鴨川 仁(静岡県立大学グローバル地域センター)

15:45 〜 16:00

[MIS19-08] シチズンサイエンス「雷雲プロジェクト」の2024年度冬季の観測報告

*鶴見 美和1榎戸 輝揚1,2一方井 祐子3、辻 直希1、Ting Wu4、Daohong WANG4篠田 太郎5、中澤 知洋5、片岡 淳6、Gabriel Diniz7、鴨川 仁8、高垣 徹9、三宅 晶子10森本 健志11中村 佳敬12、土屋 晴文13 (1.京都大学、2.理化学研究所、3.金沢大学、4.岐阜大学、5.名古屋大学、6.早稲田大学、7.National Institute of Space Research、8.静岡県立大学、9.TAC、10.岐阜高専、11.近畿大学、12.神戸高専、13.原子力機構)


キーワード:ガンマ線グロー、シチズンサイエンス、放射線多地点観測

発達した雷雲の内部では、強い電場の影響で電子が相対論的な速度まで加速され、それに伴う制動放射によってガンマ線が放射される。「ガンマ線グロー (Gamma-ray glow)」と呼ばれるこの現象は、雷雲の通過と同期して発生し、数十秒から1分ほどの間にわたり、10 MeV以上のエネルギーを持つガンマ線が地上で検出される。このような高エネルギーのガンマ線は、大気中で数百mの距離を伝播するうちに減衰するため、地上でガンマ線グローを観測するには、高度の低い雲をターゲットとする必要がある。日本海沿岸の冬季は、大陸からの冷たく乾燥した空気が暖かい対馬暖流上を通過することで低高度の雲が形成されやすく、ガンマ線グローの観測が盛んに行われてきた。2006年に開始されたGROWTH実験では、冬季の北陸地域にガンマ線検出器を設置し、これまでに70件以上のガンマ線グローイベントを捉えている。これらの先行研究から、雷雲内の強い電場によって電子が加速され、その結果としてガンマ線が放射されること、またその電場は雷雲内の氷晶やあられなどの帯電粒子によって形成されていることが明らかになってきた。しかし、観測地点の数が限られていたため、移動する雷雲の追跡が困難であり、ガンマ線放射の発生や消失の過程、継続時間の変化、さらには雷雲内での電子加速領域の高度や分布の詳細な測定が課題として残されていた。
これらの問題を解決するためには、より多くの検出器を設置して観測を行い、レーダーを用いた雷雲の発達状況の把握や、雲を構成する粒子の特定を通じてガンマ線放射領域を明確にし、その規模を評価することが必要となる。「雷雲プロジェクト」では、シチズンサイエンスの枠組みを活用し、多地点でのマッピング観測を実施している。このプロジェクトでは、北陸地域の住民の協力を得て、片手で持ち運べる軽量小型の放射線検出器「コガモ」を冬季の石川県金沢市周辺に配置し、さくらIoTを用いた自動データ送信システムと組み合わせることで、大規模な観測ネットワークを構築している。コガモは、CsI(Tl)シンチレータを搭載しており、GPSによる正確な時刻情報付きの0.2~10 MeVのガンマ線光子イベントデータに加え、気温、湿度、気圧などの環境データを取得することが可能である。このように、多地点での観測網の密度を高めることで雷雲を詳細に追跡し、(1) 雷雲内での電子加速の開始、持続、終了のメカニズム、(2) 電子加速が生じる雷雲の特徴、(3) 加速された電子が雷放電の引き金となる可能性、などの未解明の問題に迫ることを目指している。
2024年度は70台のコガモ検出器を、金沢市を中心に石川県の全域に設置して、11月から3月まで観測を行なっている。また、1月末からは、ガンマ線だけでなく、荷電粒子や中性子も検出することが出来る新たな検出器も設置している。月面の水資源探査用などに向けて開発しているMoMoTarO検出器の基板を使い、CsI(Tl)シンチレータの他に、EJ200プラスチックシンチレータ、6LiをドープしたEJ270シンチレータ、GAGGシンチレータを搭載している。
今年度の観測では、これまでに少なくとも、50件のイベントが取れている。特に雷活動が活発だった11月29日は、全部で22個のイベントを検出した。また、12月17日と、11月28日には、電場計を設置した金沢大でイベントを検出している。12月17日のベントの継続時間は4分ほどと長く、ピーク時はバックグラウンドレートの10倍ほどのカウントレートを記録していた。本講演では、ガンマ線データ、電場計データ、XRAINデータの総合解析の結果を報告する。