日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS20] 海底のメタンを取り巻く地圏-水圏-生命圏の相互作用と進化

2025年5月25日(日) 13:45 〜 15:15 展示場特設会場 (2) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:宮嶋 佑典(産業技術総合研究所 地質調査総合センター 地圏資源環境研究部門 地圏微生物研究グループ)、浅田 美穂(産業技術総合研究所)、ジェンキンズ ロバート(金沢大学理工研究域地球社会基盤学系)、青木 伸輔(香川大学農学部)、座長:宮嶋 佑典(産業技術総合研究所 地質調査総合センター 地圏資源環境研究部門 地圏微生物研究グループ)、青木 伸輔(香川大学農学部)

14:45 〜 15:00

[MIS20-04] 能登半島地震の震源域周辺における表層間隙流体中のホウ素の起源深度

*土岐 知弘1,2、森永 燿平1新城 竜一1,2、Zandvakili Zahra3西尾 嘉朗3鹿児島 渉悟4、大塚 進平4張 勁4、小林 祐大5井尻 暁5,6朴 進午7、KH-24-E1 乗船研究者一同 (1.琉球大学理学部、2.地球研、3.高知大学、4.富山大学、5.神戸大学、6.海洋研究開発機構、7.東京大学)

キーワード:能登半島地震、流体、ホウ素、起源深度

はじめに
2024年1月1日に発生した能登半島地震では,これまでにも群発地震を引き起こしてきた地殻内部に分布する“流体”の関与が指摘されてきている。震源域周辺の海底には数多くの活断層が分布しており,巨大地震の直後であれば,それらの断層を経路とした流体の移動の影響が見られる可能性がある。そこで,本研究では,地震発生から間もない2024年3月に能登半島地震の震源域周辺の海底から表層堆積物を採取し,それらの中に含まれる間隙水の化学組成及び同位体組成を調べ,深部流体の関与を議論した。

地質学的背景
能登半島周辺は,糸魚川-静岡構造線の西側に位置し,鮮新世~更新世の初め以降,北米プレートとユーラシアプレートが衝突している。能登半島北岸には,海岸線に沿って多くの活断層が発達しており,それらの周辺においてたびたび群発地震が観測されてきている。中でも,2007年には能登半島の西端において,2024年及び1993年には東端において,それぞれマグニチュード6~7クラスの巨大地震が発生している。

採取方法と分析方法
2024年3月4~16日にかけて,能登半島沖の震源域周辺の海底2箇所(西端:PC05,東端:PC08)から,長さ4 mのピストンコアを用いて表層堆積物を採取した。採取した表層堆積物から,船上で直ちに油圧圧搾機を用いて間隙水を抽出した。間隙水試料について,船上で全炭酸濃度及びアンモニア濃度分析を行った。また,持ち帰った間隙水試料について,主要元素濃度をイオンクロマトグラフ,微量元素濃度を誘導結合プラズマ質量分析計,ホウ素同位体比をマルチコネクター型誘導結合プラズマ質量分析計を用いて測定した。

結果と考察
PC05の間隙水は,海水と同じような化学組成を示した。一方,PC08の間隙水は,海水に比べてCa2,SO42‒及びホウ素同位体比が深くなるにつれて減少し,全炭酸,アンモニア及びホウ素濃度は深くなるにつれて上昇していた。還元的な海底においては,炭酸塩が沈殿することから,炭酸塩の沈殿で消費された全炭酸を補正してアンモニア濃度との比を取ると,PC08の間隙水は海底堆積物の比よりも高い値を示した。このことから,PC08ではメタンの嫌気的酸化による過剰な全炭酸が供給されていることが示唆された。また,PC08の間隙水中のホウ素濃度及び同位体比から,PC08には海水よりも低い同位体比を持つホウ素が深部から供給されていることが示唆される。粘土鉱物との同位体分別に基づく地質温度計を用いて,粘土鉱物との平衡温度を推定したところ,約80°Cと見積もられた。日本海における平均的な地温勾配(85°C/km)を用いると,海底下1 km付近において粘土鉱物と平衡状態にあったホウ素であることが示唆された。このことから,PC08の表層堆積物中のホウ素の起源深度は,海底下1 km付近であると考えられる。