日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS20] 海底のメタンを取り巻く地圏-水圏-生命圏の相互作用と進化

2025年5月25日(日) 15:30 〜 17:00 展示場特設会場 (2) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:宮嶋 佑典(産業技術総合研究所 地質調査総合センター 地圏資源環境研究部門 地圏微生物研究グループ)、浅田 美穂(産業技術総合研究所)、ジェンキンズ ロバート(金沢大学理工研究域地球社会基盤学系)、青木 伸輔(香川大学農学部)、座長:浅田 美穂(産業技術総合研究所)、ジェンキンズ ロバート(金沢大学理工研究域地球社会基盤学系)

15:30 〜 15:45

[MIS20-06] 北部琉球海溝海底泥火山群からの溶存有機態炭素の放出

吉崎 結衣1星野 辰彦3乙坂 重嘉2山下 洋平4、松井 洋平3川口 慎介3山地 一代1、竹内 誠2、岡村 慶5、野口 拓郎5、*井尻 暁1 (1.神戸大学、2.東京大学大気海洋研究所、3.海洋研究開発機構、4.北海道大学、5.高知大学)

キーワード:DOC、14C、FDOM、mud volcano

海底泥火山は,高間隙水圧をもった海底下深部の堆積物が海底に噴出した小丘であり,海底下深部で生成したCH4などの物質を海底面まで輸送している。海洋深層の溶存有機態炭素(DOC)は,難分解性で約4000-6000年の滞留時間をもつ巨大な炭素リザーバーである。最近の研究では,メタン湧水域の表層堆積物内で,微生物によるメタン酸化に伴う副生成物としてDOCが生成され,海洋に放出されることで海洋の炭素循環に寄与している可能性が指摘されている。泥火山はメタン湧水域の一つであり,DOCの放出が考えられるが,泥火山から海水中に放出されたDOCの観測例は少なく,広範囲に調査された事例はほとんどない。
本研究では琉球海溝北部に位置する海底泥火山直上の海水と間隙水のDOC濃度を測定し,泥火山からのDOCの放出の有無を明らかにすることを目的とした。研究対象とした泥火山は,琉球海溝から南海トラフ西端の喜界島沖泥火山7地点,種子島沖泥火山8地点,日向灘泥火山4地点の計19地点である。各泥火山にてCTDロゼット採水システムを使用し海底直上から8-12層の海水を採取した。
DOC濃度分析の結果,喜界島沖2地点,種子島沖6地点,日向灘1地点で,泥火山直上のDOC濃度がバックグラウンド濃度(約39 μM)よりも2~5 μM高く,泥火山からのDOCの放出が示唆された。特に日向灘のHyMV9-2泥火山では,海底直上でCH4濃度の極大(82 nM)が確認され,大量のCH4放出が示唆された。このCH4濃度の極大と同じ深度でDOC濃度の極大が確認された。FDOM(溶存有機物中の蛍光性有機物)分析の結果,DOC濃度の極大が見られた深度付近で,準易分解性のタンパク質様蛍光成分が減少していることが確認された。この結果により,高濃度のDOCが泥火山堆積物から直接放出されたのではなく,海水中で微生物がタンパク質様蛍光成分を分解し,非蛍光性のDOCを生成したものである可能性が示唆された。また,DOCの放射性炭素分析により,DOC濃度の極大付近で高濃度の古いDOCが検出されたことから,海底泥火山から放出された古い炭素が,DOCの炭素源となっている可能性が示唆された。
以上の結果から,泥火山直上海水中で,微生物がCH4やCO2,古い有機物など深部由来の炭素を利用してDOCを生成し,DOC濃度が局所的に増加している可能性が示唆された。