16:30 〜 16:45
[MIS20-10] デコンボリューションによるメタンセンサーの応答時間補正の試み
キーワード:メタン、ガスハイドレート、メタンセンサー、デコンボリューション
大陸縁辺海域や永久凍土域に広く分布するガスハイドレートは,多くの場合,メタンガスを主成分とし,メタンハイドレートとも呼ばれる。メタンハイドレートは,非在来型のエネルギー資源として期待される一方,メタンは温室効果ガスであるため形成や崩壊にも注目が集まっている。海域に分布するガスハイドレートには,表層型と砂層型の2種類があり,日本近海では,それぞれ日本海側および北海道周辺,太平洋側で確認されている。
メタンハイドレート分布域の海水に溶存するメタン濃度は,海底下からのメタンフラックスや海底下のメタンハイドレートの分布に関連していると考えられる。このため,一般的な海洋環境と比べ,表層型メタンハイドレートが賦存する海域では溶存メタン濃度が高く観測されることがある。メタンハイドレート分布域の環境影響や形成・崩壊プロセスを理解する上で,溶存メタン濃度の分布は重要な情報となる。これまでにもメタンセンサーを用いて溶存メタン濃度の測定は実施されてきたが,広域の測定では,センサーの応答時間に起因する問題があった。つまり,ROV(Remotely Operated Vehicle)やAUV(Autonomous Underwater Vehicle)などにメタンセンサーを搭載する場合,移動を伴った応答遅れは原位置の濃度とは異なるという課題が指摘されてきた。近年,応答遅れが極めて小さい溶存メタンセンサーが開発された(Grilli et al., 2018)。本研究ではこのセンサーに応答遅れがない(応答時間が極めて短い)と仮定し,従来型の溶存メタンセンサーの応答遅れをデコンボリューションの手法を用いて補正できるかを検証した。手法の詳細はDølven et al. (2022)を参照されたい。
本研究はメタンハイドレートの賦存および海底からのメタン噴出が確認されている新潟県沖にて実施した。ROV(Kaiyo3000,海洋エンジニアリング株式会社)にメタンセンサーを設置し,2022年6月に測定を行った。使用したメタンセンサーはLMS(Franatech GmbH)と,応答遅れがないと仮定するSub-Ocean(A2 Photonic Sensors)の2種類である。ROVは海底から高度約4–5 m,速度約0.2–0.5ノットを維持しながら,計画した測線に沿って海底面を観測した。また,メタン濃度の比較のために,ROVにニスキン採水器を設置し,潜航途中で適宜海水を採取した。潜航調査終了後,採水器からガラスバイアルに海水を移し,滅菌のため塩化ベンザルコニウム溶液を添加した後,冷蔵保存し,溶存メタン濃度の測定に供した。
観測されたメタン濃度はセンサーの種類に関わらず,高濃度が共通して確認された。メタン濃度のピーク値はセンサーごとに異なり,Sub-Oceanが最も高い値を示した。一方,LMSセンサーではピーク後に緩やかに値が減少する傾向があり,検出器の応答時間がSub-Oceanに比べて長いことが示唆された。デコンボリューションによる応答時間の補正は可能であったが,その精度(Sub-Oceanとの一致)はROVの潜航によって異なった。現時点では溶存メタン濃度の変化が小さすぎる場合(< 300 ppm)や,濃度変化が大きすぎる場合(> 2000 ppm)では,デコンボリューションによる補正が困難であることが示された。濃度変化が小さいときにはLMSとSub-Oceanの観測値の差が小さいことも影響していると考えられる。今後は上記の条件においても適用可能な手法の開発を目指すとともに,応答時間の短いセンサーを搭載していない潜航においても,濃度変化を再現できる手法の確立が課題となる。
本研究は,経済産業省のメタンハイドレート研究開発事業の一部として実施した。
メタンハイドレート分布域の海水に溶存するメタン濃度は,海底下からのメタンフラックスや海底下のメタンハイドレートの分布に関連していると考えられる。このため,一般的な海洋環境と比べ,表層型メタンハイドレートが賦存する海域では溶存メタン濃度が高く観測されることがある。メタンハイドレート分布域の環境影響や形成・崩壊プロセスを理解する上で,溶存メタン濃度の分布は重要な情報となる。これまでにもメタンセンサーを用いて溶存メタン濃度の測定は実施されてきたが,広域の測定では,センサーの応答時間に起因する問題があった。つまり,ROV(Remotely Operated Vehicle)やAUV(Autonomous Underwater Vehicle)などにメタンセンサーを搭載する場合,移動を伴った応答遅れは原位置の濃度とは異なるという課題が指摘されてきた。近年,応答遅れが極めて小さい溶存メタンセンサーが開発された(Grilli et al., 2018)。本研究ではこのセンサーに応答遅れがない(応答時間が極めて短い)と仮定し,従来型の溶存メタンセンサーの応答遅れをデコンボリューションの手法を用いて補正できるかを検証した。手法の詳細はDølven et al. (2022)を参照されたい。
本研究はメタンハイドレートの賦存および海底からのメタン噴出が確認されている新潟県沖にて実施した。ROV(Kaiyo3000,海洋エンジニアリング株式会社)にメタンセンサーを設置し,2022年6月に測定を行った。使用したメタンセンサーはLMS(Franatech GmbH)と,応答遅れがないと仮定するSub-Ocean(A2 Photonic Sensors)の2種類である。ROVは海底から高度約4–5 m,速度約0.2–0.5ノットを維持しながら,計画した測線に沿って海底面を観測した。また,メタン濃度の比較のために,ROVにニスキン採水器を設置し,潜航途中で適宜海水を採取した。潜航調査終了後,採水器からガラスバイアルに海水を移し,滅菌のため塩化ベンザルコニウム溶液を添加した後,冷蔵保存し,溶存メタン濃度の測定に供した。
観測されたメタン濃度はセンサーの種類に関わらず,高濃度が共通して確認された。メタン濃度のピーク値はセンサーごとに異なり,Sub-Oceanが最も高い値を示した。一方,LMSセンサーではピーク後に緩やかに値が減少する傾向があり,検出器の応答時間がSub-Oceanに比べて長いことが示唆された。デコンボリューションによる応答時間の補正は可能であったが,その精度(Sub-Oceanとの一致)はROVの潜航によって異なった。現時点では溶存メタン濃度の変化が小さすぎる場合(< 300 ppm)や,濃度変化が大きすぎる場合(> 2000 ppm)では,デコンボリューションによる補正が困難であることが示された。濃度変化が小さいときにはLMSとSub-Oceanの観測値の差が小さいことも影響していると考えられる。今後は上記の条件においても適用可能な手法の開発を目指すとともに,応答時間の短いセンサーを搭載していない潜航においても,濃度変化を再現できる手法の確立が課題となる。
本研究は,経済産業省のメタンハイドレート研究開発事業の一部として実施した。