日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS20] 海底のメタンを取り巻く地圏-水圏-生命圏の相互作用と進化

2025年5月25日(日) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:宮嶋 佑典(産業技術総合研究所 地質調査総合センター 地圏資源環境研究部門 地圏微生物研究グループ)、浅田 美穂(産業技術総合研究所)、ジェンキンズ ロバート(金沢大学理工研究域地球社会基盤学系)、青木 伸輔(香川大学農学部)

17:15 〜 19:15

[MIS20-P06] 13C安定同位体トレーサーを用いたメタン生成菌および海底下深部堆積物のメタン生成速度評価

*宮嶋 佑典1吉岡 秀佳1、片山 泰樹1、今井 利矩2、アオン タンティン2 (1.産業技術総合研究所 地質調査総合センター 地圏資源環境研究部門、2.エネルギー・金属鉱物資源機構)

キーワード:微生物メタン生成、メタン生成アーキア、培養試験、安定同位体トレーサー

海底下堆積物中に胚胎する天然ガスやメタンハイドレートの多くは、微生物(メタン生成菌)が生成したメタンを主成分とする(Milkov, 2005)。そのため、海底下堆積物におけるメタン生成菌の活性を評価することは、上記燃料資源の成因解明や資源量評価に不可欠である。従来、メタン生成菌の活性(メタン生成速度)は、放射性炭素14Cでラベル化した基質を試料に添加し培養する方法で評価されてきた(14Cトレーサー法)。14Cは天然に極めて微量にしか存在しないため、14Cトレーサー法ではバックグラウンドの影響を受けず極めて低いメタン生成速度が高感度に検出可能である(Yoshioka et al., 2009など)。しかしながら、14Cは放射性物質であるため取り扱える施設が限られており、14Cを添加した試料をその他の分析に再利用することは困難である。そこで本研究は、安定同位体13Cでラベル化した基質をトレーサーに用いてメタン生成活性を評価する手法を検討した(13Cトレーサー法)。複数のメタン生成菌株に13Cラベル化基質(重炭酸、酢酸、またはメタノール)を添加して培養し、主要な3つのメタン生成経路について13Cトレーサー法が適用できるか検証した。気相中メタンの炭素安定同位体比(δ13C値)を測定した結果、どの基質条件でも13Cがメタンに経時的に濃縮していく傾向が観察された。メタンδ13C値の増加傾向から、メタン生成速度を算出した。次に、13Cトレーサー法を用いて、南海トラフ西部の日向灘で地球深部探査船ちきゅうを用いて採取された海底堆積物コア試料に対しメタン生成活性評価を行った。コア堆積物のメタン生成速度は、10−2~101 pmol/cm3/dオーダーで、ほとんどが検出限界以下であった。また、同じ試料について14Cラベル化重炭酸を用いて培養試験を行い算出したメタン生成速度と、13Cラベル化重炭酸を用いて評価したメタン生成速度を比較したところ、両者は有意な相関を示した。以上の結果から、13Cトレーサー法は従来の14Cトレーサー法と同様に、相対的なメタン生成活性の比較に有用であると考えられる。13Cを添加した試料は法的規制なく再利用できるため、メタン生成活性評価と遺伝子解析や地球化学分析を組み合わせた幅広い応用研究に展開可能である。本研究は、経済産業省の委託により実施しているMH21-S研究開発コンソーシアム(MH21-S)の研究の一環として行ったものである。