日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS21] プラスチック汚染の実態把握と対策

2025年5月25日(日) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:加古 真一郎(鹿児島大学大学院理工学研究科)、磯辺 篤彦(九州大学応用力学研究所)、笹尾 俊明(立命館大学)、山本 雅資(神奈川大学)

17:15 〜 19:15

[MIS21-P02] 日本沿岸域における海岸砂,河口堆積物中のマイクロプラスチックの分布と形状

*天野 敦子1板木 拓也1、宇智田 奈津代2、田中 厚資2、鈴木 剛2 (1.産業技術総合研究所、2.国立環境研究所)

海洋環境中のマイクロプラスチック(MP)は,陸域から海洋への流出,海流による輸送など多様な経路を経て堆積物へ移動する.このような移動過程に応じて劣化,微細化も進行するため,環境中のMPの物理,化学特性は異なると考えられる.そこで本研究は全国5地域(北海道,山形,山口,沖縄,諏訪湖を対象とした長野)で海岸砂と河口堆積物を採取し,300μm 以上のMPの濃度や組成,形状などの変化について検討した.
 海岸砂は,各地点5 m間隔の5か所で300×150 mmの面積で,深度50 mm間の海岸砂を目合い5.6 mmと2.0 mmの篩で分画した試料を用いた.河口堆積物はグラブ式採泥器を用いて,海底面表層50 mmの試料を採取した.効率的に多量の堆積物からMPを抽出するために,採取試料を10μmメッシュのネットでろ過した水道水と篩を用いて300~500 μmと500 μm以上に粒度分画し,海岸砂では6.7mol/L,河口堆積物は5.3 mol/Lのヨウ化ナトリウムを用いて比重分離,捕集した浮遊物を過酸化水素で酸化処理した.その残留物からマニュピレータ搭載した自動計測顕微鏡システム(Itaki et al.,2020)を用いてMP候補粒子の形状と色の計測し,1粒子毎に拾い出しを行った.そして,近赤外分光分析(FT-IR)の全反射(ATR)法を用いてMPのプラスチック組成の判定を行った.MP濃度は乾燥試料重量に対する個数として計算した.
 海岸砂では長野・諏訪湖のMP濃度が254.3 個/kg以上と最も高く,次いで山口・阿武川周辺で166.2個/kgであった.沖縄・国場川,山形の最上川,月光川周辺の海岸砂では70~30個/kgであった.河口堆積物では,長野・諏訪湖で1209.1個/kgと高く,次いで山口・阿武川で217.1個/kg,沖縄・国場川で60.4個/kgであった.プラスチック組成は,海岸砂ではポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP),ポリスチレン(PS)が,河口堆積物ではPE,PP,ポリエチレンテフタレート(PET)を含むポリエステルが多いことを示すが,地点によって傾向は異なる.計測結果は,河口堆積物に比べて海岸砂の方が最大フェレ径の大きいMP粒子を含む傾向を示す.またアスペクト比は河口堆積物で高い傾向を示し,海岸砂に比べてファイバー状のものが多いことを示す.海岸砂のMPの濃度が低く,フェレ径が大きい傾向を示すことから,波浪などの影響で細かなMPが海岸では蓄積しにくいと言える.また河口堆積物でファイバー状が多いことは,海岸に比べて水利営力の影響が小さく,ファイバー状の比較的軽い MPも堆積していることを示す.
 今後,他地域のMP分析や,抽出したMPの化学分析等を進めるとともに,海岸砂,河口堆積物の堆積物特性や地形などを基に堆積環境の情報も加味し,沿岸海域でのMP移動過程について検討する.
本研究は環境総合推進費1-2204「海洋流出マイクロプラスチックの物理・化学的特性に基づく汚染実態把握と生物影響評価(JPMEERF20221004)」で実施した.
引用:Itaki et al. (2020) Automated collection of single species of microfossils using a deep learning– micromanipulator system. Progress in Earth and Planetary Science, 7, 19.