日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS22] 生物地球化学

2025年5月27日(火) 15:30 〜 17:00 102 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:福島 慶太郎(福島大学)、木庭 啓介(京都大学生態学研究センター)、山下 洋平(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、大河内 直彦(海洋研究開発機構)、座長:福島 慶太郎(福島大学)、木庭 啓介(京都大学生態学研究センター)

15:30 〜 15:45

[MIS22-07] 皆伐・ササ筋刈り処理後13年間の河川水中の硝酸イオン濃度の変化

*福澤 加里部1、野村 睦1、高木 健太郎1 (1.北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)

キーワード:硝酸イオン濃度、皆伐、ササ筋刈り、河川流量、回復時間、針広混交林

窒素は温帯域では森林の生産を律速する重要な元素である。皆伐後に河川水中の硝酸イオン濃度が上昇することが知られ、皆伐後の樹木による窒素吸収の停止が主要な原因であると考えられている。また皆伐後の時間経過に伴う植生の回復とともに元のレベルへ戻ることが報告されている。一方、皆伐後の河川水中の硝酸イオン濃度の程度は生態系により変動は大きい。北海道北部の林床にササが密生している冷温帯林においては、ササの生産性が大きく、攪乱後の窒素溶脱の緩和に貢献することが報告されている。しかし、皆伐とその後の処理後の長期的な水質変化に関する報告は少ない。本研究では皆伐とその後のササ筋刈り後の河川水中の硝酸イオン濃度の長期的変化について明らかにすることを目的とした。
調査地は北海道北部に位置する北海道大学天塩研究林内の冷温帯林に設定した。調査地の植生は、針広混交林であり、林床にはササ類(クマイザサ、チシマザサ)が密生していた。8 haの集水域の河畔帯を除く部分を2003年1月~3月に皆伐した。2003年10月にササ筋刈りを行った。そしてその直後に刈り取り列にカラマツ苗木を植栽した。集水域末端において、2002年から2007年まで2週間隔、その後3週間隔で河川水を採取した。イオンクロマトグラフィーを用いて河川水中の硝酸イオン濃度とその他イオン濃度を測定した。また、集水域末端に量水堰を設置し、水位の連続観測を行い、河川流量を測定した。
皆伐前の硝酸イオン濃度の最大値は2.7 μmol L−1であった。皆伐後からササ筋刈り前までの最大濃度は1.8 μmol L−1と低く、皆伐による硝酸イオン濃度の上昇は見られなかった。一方、ササ筋刈り後にはその翌年に硝酸イオン濃度は15.1 μmol L−1にまで上昇し、有意に高まったことから、ササが皆伐後も窒素保持に貢献していることが示唆された。その後の2年後に濃度が低下する時期があったものの、その後パルス状に高い濃度を観測し、濃度変動が大きかった。ササ筋刈り前の硝酸イオンの平均濃度は0.7 μmol L−1であるのに対し、ササ筋刈り後は4.6 μmol L−1であり、両期間の間に有意な差があった(P < 0.001)。攪乱後13年が経過しても濃度の低下傾向はみられず、攪乱前の濃度レベルには戻らなかった。河川流量との関係では、攪乱後であっても、河川流量が0.1 l/s以下の基底流量付近では濃度は0.1 μmol L−1以下と低かった。しかし、それ以上の流量領域では濃度の変動幅が大きかった。これは比較的流量が低くても出水イベントであれば硝酸イオン濃度は高まる一方、出水が連続していれば希釈されて濃度が低下するためと考えられた。攪乱後に生態系内の無機窒素プールが増加し、長期間にわたって出水時に硝酸イオンを供給し続けている可能性が考えられた。ただし、その期間の最大濃度は33.6μmol L−1であり、攪乱影響としては比較的小さかった。以上から、北海道北部の冷温帯林生態系では、皆伐とその後のササ筋刈りという攪乱に対する河川水への硝酸溶脱の応答規模が小さい一方、攪乱後の回復時間は長いことが示された。