16:15 〜 16:30
[MIS22-10] 農地における土壌藻類によるCO2固定の特性解明
キーワード:土壌藻類、光合成、陸域炭素循環、CO2 フラックス
土壌の炭素循環において微生物は主に植物由来有機物の分解者、変換者として位置づけられており、土壌微生物によるCO2固定の意義については十分考慮されてこなかった。本研究では、農地における土壌藻類のCO2固定を評価するとともに、その時空間変動と環境要因との関係を解析した。
名古屋大学大学院生命農学研究科東郷フィールド(以下、東郷フィールド)の水田、畑圃場において、植生を避けてLEDライト付チャンバーを土壌に設置し、暗条件・明条件(光強度:800 µmol m-2 s-1)における土壌CO2フラックスを測定した。全347回の測定のうち、263回(75%)で明条件のCO2フラックスが暗条件に比べて低かったことから、多くの地点で土壌呼吸により大気へ放出されるCO2の一部が藻類の光合成により土壌表層で再吸収されたと推察した。土壌藻類によるCO2吸収速度(NPP)は、土壌呼吸速度(D flux)の0–100%(中央値:24%)を占めると算定された。また、土壌呼吸由来のCO2に加えてさらに大気由来CO2を吸収する場合も観察された。NPPは、D flux、温度(地温・気温)、水分(土壌水分含量・湿度・降水量)と正の相関を示した。また、多地点から採取した土壌コア(n=68)を用いた室内培養(25 ℃)でも光照射(200 µmol m-2 s-1 )に伴うCO2の吸収が確認された。室内培養で算出したNPPは、D flux、土壌水分含量、Chlorophyll a量と正の相関を示した。水田土壌コアでは水抽出性NH4+ -Nとも正の相関を示した。圃場観測・土壌コア培養実験で得られたデータを用いたランダムフォレスト回帰により、NPPに影響を与える因子としてD fluxと土壌水分含量の重要性が示された。
次に、NPPに及ぼす土壌水分含量の変動の影響を室内操作実験で検証した。東郷フィールドの水田、畑から土壌コア(表層0–5 cm)を採取し、25℃、暗期12 h / 明期12 hで10日間(畑)もしくは19日間(水田)培養した。培養中に失われた水分を随時補充する湿潤条件、補充しない乾燥条件のコアをそれぞれ用意し、経時的にD flux、NPPを測定した。湿潤条件の水田・畑土壌コア(水分含量はそれぞれ33%、20%)はいずれも期間を通してD fluxと同等かそれ以上のNPPを示した。乾燥条件では、水田土壌コアで水分含量が20%、畑土壌コアで12%に低下するまでは培養初日と同等かそれ以上のNPPを維持し、水分含量7.4%に低下するとNPPも低くなった。その後再湿潤すると、水田・畑ともに数時間でNPPの上昇が認められ、水田で4日、畑では2日で最大に達した。この時点のNPPは土壌の乾燥が進む前と同等であった。その後再度土壌水分含量の低下が進むと、当初の乾燥条件と同様のNPPの低下が観察された。
本研究の結果から、土壌藻類の光合成は農地土壌の炭素循環の中で重要な役割を担っていることが示された。その活性は土壌呼吸のほか土壌水分と深い関りを持つと想定された。一方で、土壌藻類の光合成は土壌の乾燥に対してある程度の耐性を有すること、また土壌が乾燥しても再湿潤にともない速やかに回復することなど、土壌水分の変化に対する適応性も併せ持つことが示唆された。
名古屋大学大学院生命農学研究科東郷フィールド(以下、東郷フィールド)の水田、畑圃場において、植生を避けてLEDライト付チャンバーを土壌に設置し、暗条件・明条件(光強度:800 µmol m-2 s-1)における土壌CO2フラックスを測定した。全347回の測定のうち、263回(75%)で明条件のCO2フラックスが暗条件に比べて低かったことから、多くの地点で土壌呼吸により大気へ放出されるCO2の一部が藻類の光合成により土壌表層で再吸収されたと推察した。土壌藻類によるCO2吸収速度(NPP)は、土壌呼吸速度(D flux)の0–100%(中央値:24%)を占めると算定された。また、土壌呼吸由来のCO2に加えてさらに大気由来CO2を吸収する場合も観察された。NPPは、D flux、温度(地温・気温)、水分(土壌水分含量・湿度・降水量)と正の相関を示した。また、多地点から採取した土壌コア(n=68)を用いた室内培養(25 ℃)でも光照射(200 µmol m-2 s-1 )に伴うCO2の吸収が確認された。室内培養で算出したNPPは、D flux、土壌水分含量、Chlorophyll a量と正の相関を示した。水田土壌コアでは水抽出性NH4+ -Nとも正の相関を示した。圃場観測・土壌コア培養実験で得られたデータを用いたランダムフォレスト回帰により、NPPに影響を与える因子としてD fluxと土壌水分含量の重要性が示された。
次に、NPPに及ぼす土壌水分含量の変動の影響を室内操作実験で検証した。東郷フィールドの水田、畑から土壌コア(表層0–5 cm)を採取し、25℃、暗期12 h / 明期12 hで10日間(畑)もしくは19日間(水田)培養した。培養中に失われた水分を随時補充する湿潤条件、補充しない乾燥条件のコアをそれぞれ用意し、経時的にD flux、NPPを測定した。湿潤条件の水田・畑土壌コア(水分含量はそれぞれ33%、20%)はいずれも期間を通してD fluxと同等かそれ以上のNPPを示した。乾燥条件では、水田土壌コアで水分含量が20%、畑土壌コアで12%に低下するまでは培養初日と同等かそれ以上のNPPを維持し、水分含量7.4%に低下するとNPPも低くなった。その後再湿潤すると、水田・畑ともに数時間でNPPの上昇が認められ、水田で4日、畑では2日で最大に達した。この時点のNPPは土壌の乾燥が進む前と同等であった。その後再度土壌水分含量の低下が進むと、当初の乾燥条件と同様のNPPの低下が観察された。
本研究の結果から、土壌藻類の光合成は農地土壌の炭素循環の中で重要な役割を担っていることが示された。その活性は土壌呼吸のほか土壌水分と深い関りを持つと想定された。一方で、土壌藻類の光合成は土壌の乾燥に対してある程度の耐性を有すること、また土壌が乾燥しても再湿潤にともない速やかに回復することなど、土壌水分の変化に対する適応性も併せ持つことが示唆された。