16:30 〜 16:45
[MIS22-11] 慢性的な乾燥-再湿潤サイクルが温帯林土壌の炭素・窒素動態に与える影響
キーワード:土壌乾湿、微生物バイオマス、窒素無機化、微生物呼吸
地球温暖化に伴う気候変動により、一度の降雨強度は増加する一方で降雨頻度が低下している。この変化は現在湿潤な環境においても土壌の乾燥、再湿潤のストレスをもたらす可能性がある。少なくとも季節的に乾燥した生態系における研究により、土壌の乾燥-再湿潤のサイクルは微生物が担う物質循環プロセスに影響し、再湿潤後の二酸化炭素放出量や窒素無機化速度を増大させることが知られている。しかし、湿潤地における乾燥-再湿潤の影響とその影響の大きさを決める要因には不明な点が多く残る。そこで我々は温帯林から採取した土壌を5度の乾燥-再湿潤サイクル下で培養することで、慢性的な乾燥-再湿潤が湿潤な生態系の土壌炭素・窒素動態に与える影響を調査した。コントロールは一定の水分条件で培養した。乾燥土壌の再湿潤によって二酸化炭素の放出および窒素無機化速度は短期的に増大したが、その増大のピークの大きさは乾湿サイクル数の増加とともに減少した。また、培養終了時の硝酸態窒素量は乾湿処理土壌に比べてコントロールの土壌で高い傾向がみられたが、1回目、3回目、5回目の再湿潤後の純硝化速度は処理間で有意な差は見られなかった。乾湿処理土壌において微生物バイオマス炭素・窒素は減少を続け、可溶態有機炭素は再湿潤後に増加しその後減少した。可溶態有機窒素も再湿潤後に増加したが、この増加は1回目の再湿潤時にのみ見られた。また、再湿潤後の二酸化炭素放出量に対し、再湿潤後すぐの微生物バイオマス量は有意な正の、湿潤期間中の可溶態有機炭素の減少量は有意な負の相関関係を持ったが、乾湿により増大する二酸化炭素放出の炭素源となりうる再湿潤後すぐの可溶態有機炭素量との関係は有意ではなかった。同様に、再湿潤後の窒素無機化速度にも微生物バイオマス量および可溶態有機窒素の減少量が有意な正または負の相関を示した。窒素無機化速度に対しては再湿潤後すぐの可溶態有機窒素量も有意な正の相関を示した。一般に、乾燥を経験していない生態系の土壌微生物は乾燥地の微生物より耐乾性が低いことが考えられることから、本調査地では多くの微生物が乾湿ストレス下で生存できなかったことが想定される。そのため、これらの結果は乾湿ストレスを生き残った微生物の量が湿潤な生態系における土壌の乾燥-再湿潤が二酸化炭素放出および窒素無機化に与える影響の大きさを決定する要因であることを示唆している。