日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS22] 生物地球化学

2025年5月27日(火) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:福島 慶太郎(福島大学)、木庭 啓介(京都大学生態学研究センター)、山下 洋平(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)、大河内 直彦(海洋研究開発機構)

17:15 〜 19:15

[MIS22-P07] 黒ボク土のプライミング効果を駆動する土壌微生物群集の解明
~DNA解析からみた土壌深度による微生物叢の違い~

*高橋 悠1早川 智恵1、堀 知行2、青柳 智2藤井 一至3,4木庭 啓介5、小﨑 隆6 (1.宇都宮大学大学院、2.国立研究開発法人産業技術総合研究所、3.森林総合研究所、4.福島国際研究教育機構、5.京都大学、6.愛知大学)


キーワード:黒ボク土、プライミング効果、微生物組成、16S アンプリコンシーケンス解析

日本は有機物含量の多い黒ボク土が広く分布しており、表層だけでなく、下層の埋没腐植層にも多量の炭素が蓄積している。一般に微生物のバイオマス量・分解活性は土壌深と共に低下するが、深耕や反転耕起によって埋没腐植層が表土化されると、有機物施用や細根由来の易分解性有機物の添加により難分解性有機物の分解促進効果であるプライミング効果(Priming Effect;PE)が起こり(Kuzyakov, 2000)、埋没腐植の分解が促進される可能性がある。このプライミング効果による埋没腐植の分解を応用し、難分解化した堆肥の窒素・リンを作物の需要に合わせて分解・放出させる技術が確立されれば、化学肥料を低減した農地管理が期待される。しかし、プライミング効果は黒ボク土の炭素貯留効果を低減させるリスクもあるため、その応用には至っていない。そのため、今後はプライミング効果の応用を目指して、そのメカニズムの解明が必要となる。早川ら(2020)は北海道標茶区の森林土壌から採取した表層土および埋没腐植土において、13Cセルロース濃度を変えた添加培養実験を行い、 プライミング効果が発現することを確認した。プライミング効果は土壌微生物によって引き起こされるので、その担い手となる微生物群集の特定が必要となる。本研究では、その培養土壌を用いて、16S rRNA遺伝子を用いたアンプリコンシーケンス解析を行い、プライミング効果を引き起こす微生物群集の特定を目指した。
供試土壌は北海道標茶区の森林土壌から採取した表層土(A層, 0-9 cm)、埋没腐植土1(3A層, 40-70 cm)、埋没腐植土2(5A層, 90-103 cm)に13Cセルロースを無添加・少量添加・多量添加したものを187日間培養し、定期的(0日, 7日, 14日, 21日, 53日, 128日, 187日)にサンプリングを行ったものを3反復用いた。土壌DNA抽出はHori et al., (2014)に準じて実施し、抽出したDNAをポリメラーゼ 連鎖反応(PCR)の鋳型として使用した。プライマーは515F/806Rを用いて16S rRNA遺伝子のV4領域を増幅した(Parada et al., 2016; Apprill et al., 2015)。PCRの温度プロファイルは、Hori et al., (2014)を参考に条件検討を行い、98 ℃で90秒の初期変性をした後、98 ℃で10秒の変性、54 ℃で30秒のアニーリング、72 ℃で30秒の伸長を32サイクル、そして最終伸長を120秒の条件で実行した。PCR産物はLigation、ゲル抽出及びビーズ精製を経てDNA濃度の定量を行った。定量後DNAは滅菌水で2 nMに調製し、次世代シーケンサー(Miseq)を用いて解析を実行した。得られた配列は、16S rRNA遺伝子データベース(Silva-138)を用いて、Qiime 2により系統分類解析、主座標分析、α多様性解析を行った。
早川ら(2020)による13Cセルロース添加による微生物バイオマス量が有意に高くなっている期間(表層土;7-14日目, 埋没腐植土1;7-14日目, 埋没腐植土2;7-21日目)でプライミング効果が発現していると考えられる。本研究では、その期間をPE発現期間と呼ぶこととする。このPE発現期間に着目して、微生物群集構造の変化との関係について調べた。次世代シーケンス解析で得られたWeighted UniFrac dataを用いて主座標分析(PCoA)を行った。表層土では、PE発現期間の培養14日目でプロットされる位置に違いがみられた。これは、表層土においてプライミング効果が起こっている間はサンプルの多様性が変化していることが考えられる。これに対し、同様にPE発現期間の、埋没腐植土1の培養14日目、埋没腐植土2の培養7日目に大きな変化はみられなかった。これは、埋没腐植土は微生物のバイオマス量・分解活性が低いことが関係していると考えられる。α多様性解析では、サンプル中に存在する微生物の観測数と、その均一度を考慮した指数であるshannon指数において、表層土(少量添加, 多量添加)、埋没腐植土1(多量添加)、埋没腐植土2(少量添加)で、培養開始時と比較してPE発現期間に有意な低下がみられた(p < 0.05)。これは、PE発現期間は特定の微生物が活性化するため、微生物種の割合に偏りが生じることが考えられる。また、サンプル中に存在する微生物の均一度をあらわすevenness指数、観測数をあらわすobserved features指数、系統的な多様性をあらわすfaith pd指数の結果についても報告する予定である。系統分類解析では、PE発現期間にて、表層土(培養14日目)ではBacillus属、埋没腐植土1(培養14日目)の少量添加ではBacillus属、多量添加ではStaphylococcus属、埋没腐植土2(培養7日目)ではChloroflexi門のAD3綱が占める割合が大きかった。また、埋没腐植土2にて、PE発現期間の培養14日目ではStaphylococcus属の存在割合が最も高かった。このことより、これらの土壌微生物が黒ボク土での有機物分解を担っている可能性が示唆された。主座標分析とプライミング効果の速度との比較についても報告する予定である。