17:15 〜 19:15
[MIS22-P08] 気候変動は黒ぼく土の有機物動態を変えるのか? ―温度・水分変動に対する土壌微生物の有機物分解活性の応答―
キーワード:黒ぼく土、有機物分解、土壌微生物、安定同位体トレーサー、温度感受性、水分感受性
【背景・目的】火山噴出物から発達した黒ぼく土には多量の有機物が蓄積されており,炭素貯留能が高い土壌として着目されている.しかし,土壌は環境条件や管理方法によって炭素の放出源にも吸収源にもなりうる.近年の気候変動に伴う気温の上昇により,土壌微生物の有機物分解活性が上昇し土壌炭素貯留量が減少する可能性が指摘されている.一方,湿潤気候下にある日本の森林においても,年間の無降水日数の増加による短期的な乾燥ストレスのために土壌微生物の有機物分解が抑制され,炭素貯留量が増加する可能性もある.有機物の分解を担う土壌微生物の温度・水分感受性は,分解する有機物の化学的性質や微生物の群集構造,土壌の理化学性によって異なることが報告されているが,そのメカニズムを解明することができれば,森林下の黒ぼく土を炭素の吸収源として管理することが可能になると期待される.
本研究では,異なる森林の黒ぼく土壌において,(1)微生物による有機物分解速度の温度・水分感受性,(2)水分変動に対する土壌微生物の有機物分解酵素活性の応答について比較した.
【材料・方法】実験に供する黒ぼく土として,栃木県日光市と岐阜県高山市の森林表層土を用いた.(1)では,異なる温度・水分条件において13C15N標識リター(コナラ/アラカシ)添加土壌の培養実験を行った.温度条件は適温20℃,高温35℃,水分条件は適潤を最大容水量(WHC)の60 %,乾燥を20 %とした.13C15N標識リターを土壌に添加後,インキュベーターで培養した.培養期間中ガスを経時的にサンプリングし,全CO2放出量をGC-TCD,および炭素安定同位体比(atom%)をGC-MSにより定量した.(2)ではBiolog社のエコプレートを用いて,(1)と同様の水分条件下で単糖,有機酸,アミノ酸などの代謝基質(31種)の分解程度をマイクロプレートリーダーにより吸光度を測定し(二宮,2017),分解反応の差異を調べた.各プレートの平均的な代謝の指標として平均吸光度(AWCD)を用いた.
【結果・考察】(1)両試験区に共通して,日数経過につれ指数関数的に全CO2放出量が増加した.全CO2放出量および13CO2放出量は1ヶ月を通して高山土壌で多かったことから,日光土壌より高山土壌の有機物分解速度が速いと考えられた.分解速度を比較すると,日光土壌では水分感受性,高山土壌では温度感受性が高い傾向を示した.以上より,分解速度の温度・水分感受性は森林・黒ボク土のタイプによって変化すると考えられた.(2)AWCDの値は高山土壌で高い傾向を示し,平均的な分解活性は日光土壌より活発だと推測された.それぞれの水分条件における各基質の吸光度の平均値を比較すると,適潤条件では高山土壌,乾燥条件では日光土壌の値が有意に高かった(p < 0.05).31種の代謝基質に着目すると,日光土壌は水分条件によらず発色の傾向が類似していたが,高山土壌では水分条件によって傾向が異なり,乾燥条件下においても活発に分解される基質が観察された.このことから,日光土壌と高山土壌では微生物群が異なる可能性が示唆された.以上2項目より,温度・水分変動に対する有機物分解活性の応答は,森林・黒ボク土のタイプによって微生物群が異なるために変化する可能性が考えられた.
本研究では,異なる森林の黒ぼく土壌において,(1)微生物による有機物分解速度の温度・水分感受性,(2)水分変動に対する土壌微生物の有機物分解酵素活性の応答について比較した.
【材料・方法】実験に供する黒ぼく土として,栃木県日光市と岐阜県高山市の森林表層土を用いた.(1)では,異なる温度・水分条件において13C15N標識リター(コナラ/アラカシ)添加土壌の培養実験を行った.温度条件は適温20℃,高温35℃,水分条件は適潤を最大容水量(WHC)の60 %,乾燥を20 %とした.13C15N標識リターを土壌に添加後,インキュベーターで培養した.培養期間中ガスを経時的にサンプリングし,全CO2放出量をGC-TCD,および炭素安定同位体比(atom%)をGC-MSにより定量した.(2)ではBiolog社のエコプレートを用いて,(1)と同様の水分条件下で単糖,有機酸,アミノ酸などの代謝基質(31種)の分解程度をマイクロプレートリーダーにより吸光度を測定し(二宮,2017),分解反応の差異を調べた.各プレートの平均的な代謝の指標として平均吸光度(AWCD)を用いた.
【結果・考察】(1)両試験区に共通して,日数経過につれ指数関数的に全CO2放出量が増加した.全CO2放出量および13CO2放出量は1ヶ月を通して高山土壌で多かったことから,日光土壌より高山土壌の有機物分解速度が速いと考えられた.分解速度を比較すると,日光土壌では水分感受性,高山土壌では温度感受性が高い傾向を示した.以上より,分解速度の温度・水分感受性は森林・黒ボク土のタイプによって変化すると考えられた.(2)AWCDの値は高山土壌で高い傾向を示し,平均的な分解活性は日光土壌より活発だと推測された.それぞれの水分条件における各基質の吸光度の平均値を比較すると,適潤条件では高山土壌,乾燥条件では日光土壌の値が有意に高かった(p < 0.05).31種の代謝基質に着目すると,日光土壌は水分条件によらず発色の傾向が類似していたが,高山土壌では水分条件によって傾向が異なり,乾燥条件下においても活発に分解される基質が観察された.このことから,日光土壌と高山土壌では微生物群が異なる可能性が示唆された.以上2項目より,温度・水分変動に対する有機物分解活性の応答は,森林・黒ボク土のタイプによって微生物群が異なるために変化する可能性が考えられた.