日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS23] 非破壊分析による環境復元の展開

2025年5月27日(火) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:天野 敦子(産業技術総合研究所)、田中 えりか(高知大学)

17:15 〜 19:15

[MIS23-P05] XRFコアスキャナを用いた沖縄島那覇低地における沖積層コア試料の元素分析

*佐藤 善輝1、小野 映介2、小岩 直人3 (1.産業技術総合研究所地質調査総合センター、2.駒澤大学文学部、3.弘前大学教育学部)

キーワード:XRFコアスキャナ、那覇低地、CNS元素分析、沖縄島、沖積層

完新世において,沖縄島(沖縄本島)の沿岸部ではサンゴ礁が発達するとともに,海や川の作用によって土砂が堆積して形成された比較的小規模な沖積低地が形成されている(氏家・兼子,2006).しかしながら,これまで沖積低地を対象とした研究は少なく,特に堆積環境変遷や地形発達過程について不明な点が多く残されている.その要因のひとつとして,サンゴ礫の影響で微化石が溶解しやすく堆積環境復元が困難であることや,硬水効果によって堆積年代が確定しづらいことなどがあげられる.
発表者らは,沖縄島南西部,安里川~国場川下流域に分布する沖積低地(那覇低地)における地形発達過程を明らかにするため,那覇市前島において掘削深度7.5 mのオールコア試料を掘削した.このコア試料には層厚約6.8 mの沖積層が認められ,主に砂泥質堆積物から成り,琉球石灰岩を直接覆う(佐藤ほか,2021).コア試料には貝化石やサンゴ礫が多量に含まれる一方,珪藻化石は全く保存されていない.本研究では産総研の所有するItrax XRFコアスキャナを用いて元素濃度分析を行った.測定間隔は2 mm,X線照射時間は30秒とした.また,測定結果との対比のため,計7層準から採取した試料のCNS元素を蒜山地質年代学研究所に依頼して実施した.
臨海部の堆積物では,海成・陸成の判断指標として硫黄Sの多寡が用いられることが多い.これは還元環境で堆積した海成層に硫化鉄が多く含まれ,S含有量が多くなることを応用したものである.本研究で使用したXRFコアスキャナのSの測定値は,Amano et al. (2020)により標準物質の濃度と高い正相関を示すことが確認されている.本研究での分析結果においても,コアスキャナのS測定値とCNS元素分析のTSは相関係数0.89の非常に強い正相関を示すことが確認された.したがって,コアスキャナのSの測定値が高いほど堆積物中にSが多く含まれると解釈できる.コア試料の標高0.43 m以深では概ねを境としてSの測定値が1,500~2,500 counts,最大で20,000 counts程度であるのに対し,それよりも上位では100~200 counts前後に大きく減少する.このことから,標高0.43 m以深の堆積物は海水の影響を受ける内湾や干潟の環境で堆積し,これより上位では堆積物の累重によって潮汐の影響の及ばない陸域へと環境が変化した可能性が示唆される.この推論は,堆積物に含有される貝化石の生息環境とも調和的である.また,コアスキャナによるS測定値は,塩素Clとやや強い正相関(相関係数0.56)を示すが,有機含有量を示すとされるMo ratio(Mo inc/M coh比,Chagué Goff et al., 2016)とは相関を示さない(相関係数0.09).
コアスキャナによる測定値のうち,Sr,Ca,Mnは同期的に変化し,各測定値の相関係数は0.37~0.60を示す.これらはサンゴ片あるいは貝殻片の含有層準と対応して,スパイク状のピークを示す.例外もあるが,貝殻片に対応する層準ではCaのみに顕著なピークがあり,サンゴ礫に比べてSrの増加が不明確な場合が多い.また,Fe,Al,Tiはそれぞれ相関係数0.97~0.98の非常に強い正相関を示し,与那覇ほか(2008)の表層堆積物と同様の傾向を示す.これら3元素はSr,Ca,Mnとほとんど相関がなく,有機質な泥質堆積物から成る層準を除いて測定値に変化がみられない.島尻層群を母岩とする土壌にFe,Al,Tiが多く含まれること(与那覇ほか,2008)から,これらは後背地の島尻層群に由来し,バックグランドとして恒常的に沖積低地に供給されてきた可能性が示唆される.


引用文献
Amano et al. (2020) JpGU-AGU Joint Meeting 2020, MIS12-P09
Chagué Goff et al. (2016) Island Arc, 25, 333–349.
佐藤善輝ほか(2021)2021年度日本地理学会秋季学術大会,P010.
氏家 宏・兼子尚知(2006)那覇及び沖縄市南部地域の地質.地域地質研究報告(5万分の1地質図幅),産総研地質調査総合センター,48 p.
与那覇 寛ほか(2008)日本サンゴ礁学会誌,10,25–45.