日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS24] 歴史学×地球惑星科学

2025年5月28日(水) 09:00 〜 10:30 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:加納 靖之(東京大学地震研究所)、芳村 圭(東京大学生産技術研究所)、岩橋 清美(國學院大學)、玉澤 春史(東京大学生産技術研究所)、座長:加納 靖之(東京大学地震研究所)、玉澤 春史(東京大学生産技術研究所)、岩橋 清美(國學院大學)

09:00 〜 09:30

[MIS24-01] 1707年宝永地震の波源断層モデルの再検討

★招待講演

*今井 健太郎1楠本 聡1堀 高峰1 (1.国立研究開発法人 海洋研究開発機構)

キーワード:南海トラフ、1707年宝永地震、断層モデル、歴史記録

1707年宝永地震は歴史上最大クラスの南海トラフ巨大地震と考えられている.これまでに,著者らは安政東海・南海地震と昭和東南海地震の津波痕跡および地殻変動分布の再整理を行い,それらに基づいた波源域再評価を行ってきた(例えば,今井・他,2021).南海トラフ巨大地震の発生形態の多様性を明らかにするためには,宝永地震についても波源断層モデルの再評価が必要であり,そのためには膨大な史料の網羅的な再整理とそれに基づく地殻変動や津波痕跡高の再評価を行ってきた(今井・他,2023).本研究では,小断層配置に3次元のプレート構造を考慮し,地殻変動量分布や津波高分布に基づいて宝永地震の波源断層モデルを再考することを目的とする.
宝永地震による津波痕跡値は,津波痕跡データベース(東北大学・原子力規制庁)に格納されている既往研究による痕跡値に加えて,史料再精査によって見出した新たな津波痕跡値を用い,地殻変動量においては地震史料集における記述から評価した(今井・他,2023).波源断層モデルは南海トラフ沈み込み帯の3次元構造モデル(Nakanishi et al., 2018)を参照し,地殻変動や津波高の痕跡点数を考慮して東海震源域に6枚,東南海震源域は10枚,南海震源域は14枚,合計30枚の小断層で構成されるものと仮定した.各小断層のすべりによる地殻変動量はOkada (1985)の方法,津波のグリーン関数は線形長波理論(空間格子間隔150 m,時間間隔0.2 s)に基づき計算した.地殻変動の痕跡点は43点を利用した.津波痕跡点については既往研究のデータを含め298点あるが,空間格子間隔の問題や精緻な地形復元作業を必要とする痕跡点,内海の痕跡点を除外し,さらに同一集落の痕跡を集約することにより合計92点を利用した.津波痕跡高分布を説明する各小断層のすべり量は,再現性指標VRS(Imai et al., 2020)が最適値(≒1)に近づくようにSA(Kirkpatrick et al., 1983)を用いて推定した.本解析では,この誤差を10%程度と仮定して一様乱数により与え,1,000回試行のアンサンブル平均処理を行い,各小断層のすべり量を評価した.
求められた波源断層のすべり量分布を図 1に示す.VRSは0.76±0.01となった.地殻変動はおおむね再現でき,津波についても一部を除き再現することができた.本モデルの地震規模はMw 8.7±0.1となり,従来と同程度かやや大きく評価された.本モデルでは,静岡県清水の沈降や横須賀城の隆起を説明するために,東海震源域に平均7 mのすべりが生じている.一方で,東南海震源域では安政東海(今井・他,2021)と比べて大きなすべりは生じていないことや三重県熊野周辺の隆起を説明するために局所的に大きなすべりが生じていることがわかる.南海震源域においては,土佐湾内の津波を説明するために,沖合に10 mを越えるすべりが必要になる.ただし,宇佐青龍寺における当該地震による最大津波高25 mを再現できていない.副次的な津波波源を検討する必要があるかも知れない.
謝辞:本研究はR2-6年度文部科学省「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」(研究代表者:海洋研究開発機構 小平秀一)の一環として行われました.