17:15 〜 19:15
[MIS24-P05] 通信調査に基づく1891年濃尾地震による北陸地方の液状化現象
★招待講演
キーワード:液状化現象、1891年濃尾地震、北陸地方、噴水噴砂
1. はじめに
濃尾地震は1891年(明治24年),岐阜県中部を震源として起こったM=8.0の巨大地震である.この地震によって根尾谷断層が活動し,岐阜県を中心に大きな被害が発生したことはよく知られている.震度分布図などによると北陸地方は,現在の震度で6~3を記録し(宇佐美ほか,2013;国立天文台,2022),古老の言い伝えや文献などから,かなり大きな地震動であったことが記録されている.しかし,この地震による液状化現象については,詳しく知られていなかった.その後,若松(2011)は,この地震による液状化発生地点を特定したが,その詳細については記述しなかった.一方,青島(2024.2025)は,濃尾地震による東海地方の液状化の分布や特徴を明らかにしたが,日本海側の北陸地方については,言及しなかった.そこで,この地震による北陸地方の液状化現象の詳細について調べた.
2. 方法
今回の調査に用いた資料は「明治24年10月28日濃尾地震資料集」(東京大学地震研究所,1992)とこれを活字化した「濃尾地震(明治24年)当時のアンケート調査回答集」(村松・小見波,1992)である.この資料集は地震発生約1力月後に行われた通信調査の回答票の帳簿をまとめたものである.この通信調査は当時の東京帝国大学総長加藤弘之の名でなされており,各地の郡市町村役場と一部の警察署,郵便局,灯台看守等に配布された.回答総数は1,616通で九州から北海道まで及んでいる.このアンケート票には体感,家屋被害,地裂,池や井戸水の振動などの諸現象の観察結果が記載されている.この中から「地面から水,砂,泥が噴き出した.」「井戸から水,砂,泥が噴き出した.」「井戸が濁った.」「井戸の水位が変化した.」「一面水浸しになった.」「地震のあとに砂の山ができた.」「地震のあと地面が沈んだ.」などの液状化現象として特定される記述を選び出した.次にこれらの記述を表にまとめて地形図にプロットし,液状化地点と地形や地盤,震央距離との関係を調べた.この資料の利点は,液状化が認められなかった地区の回答も「記録なし」として記載されているために,液状化した地区のみならず,液状化を認めなかつた地区も知ることができることである.しかし,アンケート調査が市町村単位で行われたために,液状化発生地点を特定できにくいという限界もある.
3. 結果
北陸地方の279件のアンケート票のうち,「地割れより水,泥,砂が吹き出した」報告が22件,「井戸から水,泥,砂などが吹き出した」報告が78件,計100件であった.図1にその地域を示す.特に福井県丹生郡天津賀村(現福井市御油町)では「土地亀裂ノ長経ハ南北ニシテ東南モ随所アリ頓ニ泥水土砂ヲ噴出スルコト殆ンドポンプノ 如シ然レドモ30分間或ハ50分間ニシテ止ミ青砂5, 6 寸ヨリ1尺余モ塊積スルアリ」という記載や河北郡高松村字内高松(現石川県かほく市内内高松)では「コノ処ヨリ赤錆色ノ水ト泥砂ノ混交シタルモノ高サ5尺斗リ噴出セリ」という記載もある.
4. 考察
液状化は主に福井県北東部と石川県南西部の低地で多発しており,福井平野の九頭竜川の自然堤防や旧河道沿いに集中している.これらの地域は完新統の砂層,砂礫層,泥砂礫層である.また,石川県の沿岸部では,砂丘の発達により内湾が外海から切り離されてできた湖沼(潟湖)が多数あり,これらの地域では液状化が多数発生している.特に2024年能登半島地震で液状化が発生した現河北郡内灘町では「内灘村字大根布へ1ケ所ヨリ砂ヲ噴出セシ周囲4尺斗リ」という記載があり,濃尾地震でも震央から離れているにも関わらず,液状化が発生した(図2参照).震央距離との関係では,液状化は震央に近い震度4強以上の地域で発生しており,特に震央に最も近い福井県大野市の盆地内でも見られた.一方,震央から180㎞離れた能登半島北部や富山県では液状化の報告はなかった(図3参照).
引用文献
青島晃,2024a,アンケート調査に基づく1891年濃尾地震による静岡県の液状化現象,歴史地震,39,245.
青島晃,2024b,通信調査に基づく1891年濃尾地震による岐阜県・愛知県の液状化現象,歴史地震研究会講演要旨集,P-07.
茅野一郎・宇津徳治,2001,日本の主な地震の表,第2版地震の事典,朝倉書店,657pp.
国立天文台,2022,理科年表2022年度版,丸善.
松田時彦,1974,1891年濃尾地震の地震断層,地震研究所研究速報,13,85-126.
村松郁栄・小見波正隆,1992,濃尾地震(明治24年)当時のアンケート調査回答集,NIED研究資料,155.
東京大学地震研究所,1992,明治24年10月28日濃尾地震資料集第1巻.
宇佐美龍夫・他,2013,日本被害地震総覧,UTP.
若松加寿枝,2011,日本の液状化履歴マップ,UTP.
濃尾地震は1891年(明治24年),岐阜県中部を震源として起こったM=8.0の巨大地震である.この地震によって根尾谷断層が活動し,岐阜県を中心に大きな被害が発生したことはよく知られている.震度分布図などによると北陸地方は,現在の震度で6~3を記録し(宇佐美ほか,2013;国立天文台,2022),古老の言い伝えや文献などから,かなり大きな地震動であったことが記録されている.しかし,この地震による液状化現象については,詳しく知られていなかった.その後,若松(2011)は,この地震による液状化発生地点を特定したが,その詳細については記述しなかった.一方,青島(2024.2025)は,濃尾地震による東海地方の液状化の分布や特徴を明らかにしたが,日本海側の北陸地方については,言及しなかった.そこで,この地震による北陸地方の液状化現象の詳細について調べた.
2. 方法
今回の調査に用いた資料は「明治24年10月28日濃尾地震資料集」(東京大学地震研究所,1992)とこれを活字化した「濃尾地震(明治24年)当時のアンケート調査回答集」(村松・小見波,1992)である.この資料集は地震発生約1力月後に行われた通信調査の回答票の帳簿をまとめたものである.この通信調査は当時の東京帝国大学総長加藤弘之の名でなされており,各地の郡市町村役場と一部の警察署,郵便局,灯台看守等に配布された.回答総数は1,616通で九州から北海道まで及んでいる.このアンケート票には体感,家屋被害,地裂,池や井戸水の振動などの諸現象の観察結果が記載されている.この中から「地面から水,砂,泥が噴き出した.」「井戸から水,砂,泥が噴き出した.」「井戸が濁った.」「井戸の水位が変化した.」「一面水浸しになった.」「地震のあとに砂の山ができた.」「地震のあと地面が沈んだ.」などの液状化現象として特定される記述を選び出した.次にこれらの記述を表にまとめて地形図にプロットし,液状化地点と地形や地盤,震央距離との関係を調べた.この資料の利点は,液状化が認められなかった地区の回答も「記録なし」として記載されているために,液状化した地区のみならず,液状化を認めなかつた地区も知ることができることである.しかし,アンケート調査が市町村単位で行われたために,液状化発生地点を特定できにくいという限界もある.
3. 結果
北陸地方の279件のアンケート票のうち,「地割れより水,泥,砂が吹き出した」報告が22件,「井戸から水,泥,砂などが吹き出した」報告が78件,計100件であった.図1にその地域を示す.特に福井県丹生郡天津賀村(現福井市御油町)では「土地亀裂ノ長経ハ南北ニシテ東南モ随所アリ頓ニ泥水土砂ヲ噴出スルコト殆ンドポンプノ 如シ然レドモ30分間或ハ50分間ニシテ止ミ青砂5, 6 寸ヨリ1尺余モ塊積スルアリ」という記載や河北郡高松村字内高松(現石川県かほく市内内高松)では「コノ処ヨリ赤錆色ノ水ト泥砂ノ混交シタルモノ高サ5尺斗リ噴出セリ」という記載もある.
4. 考察
液状化は主に福井県北東部と石川県南西部の低地で多発しており,福井平野の九頭竜川の自然堤防や旧河道沿いに集中している.これらの地域は完新統の砂層,砂礫層,泥砂礫層である.また,石川県の沿岸部では,砂丘の発達により内湾が外海から切り離されてできた湖沼(潟湖)が多数あり,これらの地域では液状化が多数発生している.特に2024年能登半島地震で液状化が発生した現河北郡内灘町では「内灘村字大根布へ1ケ所ヨリ砂ヲ噴出セシ周囲4尺斗リ」という記載があり,濃尾地震でも震央から離れているにも関わらず,液状化が発生した(図2参照).震央距離との関係では,液状化は震央に近い震度4強以上の地域で発生しており,特に震央に最も近い福井県大野市の盆地内でも見られた.一方,震央から180㎞離れた能登半島北部や富山県では液状化の報告はなかった(図3参照).
引用文献
青島晃,2024a,アンケート調査に基づく1891年濃尾地震による静岡県の液状化現象,歴史地震,39,245.
青島晃,2024b,通信調査に基づく1891年濃尾地震による岐阜県・愛知県の液状化現象,歴史地震研究会講演要旨集,P-07.
茅野一郎・宇津徳治,2001,日本の主な地震の表,第2版地震の事典,朝倉書店,657pp.
国立天文台,2022,理科年表2022年度版,丸善.
松田時彦,1974,1891年濃尾地震の地震断層,地震研究所研究速報,13,85-126.
村松郁栄・小見波正隆,1992,濃尾地震(明治24年)当時のアンケート調査回答集,NIED研究資料,155.
東京大学地震研究所,1992,明治24年10月28日濃尾地震資料集第1巻.
宇佐美龍夫・他,2013,日本被害地震総覧,UTP.
若松加寿枝,2011,日本の液状化履歴マップ,UTP.