14:30 〜 14:45
[MSD35-04] 衛星搭載水蒸気観測用差分吸収ライダー(DIAL)の技術実証〜技術実証に向けた検出器とレーザの検討〜
キーワード:水蒸気、ライダー、豪雨
近年日本では線状降水帯による大雨の発生や台風の大型化が防災上大きな社会問題となっており防災・減災、国土強靱化のための対策が急務となっている。衛星搭載ライダーは日本周辺海上の水蒸気観測が可能であり、数値予報モデルへのデータ同化により豪雨予測精度の向上が期待される。
現在の水蒸気観測は、ラジオゾンデ、陸域リモートセンシング、衛星の赤外線・マイクロ波センサ、GNSSなどで行われているが、空間及び時間分解能に問題がある。さらに上部対流圏・下部成層圏の境界領域に観測の空白域がある。また、受動的衛星観測は水平方向のカバー領域は広いが、鉛直方向の分解能が十分とは言えない。衛星搭載ライダーは、全球域の高分解能・高品質水蒸気データを提供するとともに、バイアス誤差が無いためパッシブリモートセンシング装置の校正にも利用でき、衛星搭載センサによる面的な観測とのシナジー効果が期待できる。
我々は、1350nmの吸収帯を利用したOPA(Optical Parametric Amplifier)送信機を用いた2ビーム衛星搭載水蒸気DIALを提案している[1]。QPM(Quasi Phase Matching)素子を用いたOPAシステムは、1パスアンプであるため、従来の位相整合型OPO(Optical Parametric Oscillator)に比べて制約が少なく、衛星搭載用として有利である。
水蒸気の鉛直分布と同様に、海面付近の水蒸気量の測定は、豪雨の予測や海洋と大気間のフラックスの推定に特に重要である。そこで、我々はDIALミッションの仕様を大きく変えることなく、IPDA(Integrated Path Differential Absorption)技術を用いて、大気後方散乱と海面反射の両方の信号を用いた海面付近の水蒸気のDIAL観測を追加提案した。これは大気後方散乱信号よりも強い海面反射信号の差分吸収を利用するものである。衛星軌道高度を400kmとしたIPDA-DIALは、昼間観測でも水平分解能50kmで、海面から高度500mまでの水蒸気積算量を誤差10%で測定可能である。(JpGU2022, 2023)
また衛星搭載ライダーで測定される海面散乱係数から海上の風速を推定する方法[2]をIPDA-DIALのoff信号に適用することにより、大気混合層(熱帯では海面から高度500m前後)の水蒸気量と同時に、海面付近の風速を計測することができる。これらと客観解析データなどの気温情報を合わせると、潜熱・顕熱フラックスのスナップショット毎の計算が可能になる。実際のCALIPSOの海面散乱係数データを用いて、日本南方の海上風速を推定した。推定した風速とマイクロ波放射計による海上風速データ、観測船による気象観測データとの比較を行った結果、比較的風速が低い領域では両衛星観測データと観測船での測定値はよく一致しており、海面散乱係数からの海上風速推定の有効性が確認できた。(JpGU2024)
今回は実際の技術実証に向けて検出器とレーザの再検討を行った。検出器については使用を想定していたInGaAs APDに加えて衛星搭載ライダーの近赤外高感度検出器として注目されているHgCdTe APD[3]の利用検討を行った。HgCdTe APDは検出効率が高くノイズレベルが低いため、レーザ出力を抑えることにより電力が低減され、実現性が高まる。レーザについては当初提案の1350nmの吸収帯を見直し、新たに1480nmの吸収帯利用を検討した。この波長見直しによりQPM(Quasi Phase Matching)素子の入手性が高まるとともに、航空機搭載によるIPDA実証実験の際にファイバーアンプなどを利用した低エネルギパルス高繰返し光源の利用が可能になる。
参考文献
[1] 阿保真他、レーザセンシング学会誌、1 (2020) 72.
[2] Y. Hu et al., Atmos. Chem. Phys., 8 (2008) 3593.
[3] X. Sun, Sensors, 24(2024) 6620.
現在の水蒸気観測は、ラジオゾンデ、陸域リモートセンシング、衛星の赤外線・マイクロ波センサ、GNSSなどで行われているが、空間及び時間分解能に問題がある。さらに上部対流圏・下部成層圏の境界領域に観測の空白域がある。また、受動的衛星観測は水平方向のカバー領域は広いが、鉛直方向の分解能が十分とは言えない。衛星搭載ライダーは、全球域の高分解能・高品質水蒸気データを提供するとともに、バイアス誤差が無いためパッシブリモートセンシング装置の校正にも利用でき、衛星搭載センサによる面的な観測とのシナジー効果が期待できる。
我々は、1350nmの吸収帯を利用したOPA(Optical Parametric Amplifier)送信機を用いた2ビーム衛星搭載水蒸気DIALを提案している[1]。QPM(Quasi Phase Matching)素子を用いたOPAシステムは、1パスアンプであるため、従来の位相整合型OPO(Optical Parametric Oscillator)に比べて制約が少なく、衛星搭載用として有利である。
水蒸気の鉛直分布と同様に、海面付近の水蒸気量の測定は、豪雨の予測や海洋と大気間のフラックスの推定に特に重要である。そこで、我々はDIALミッションの仕様を大きく変えることなく、IPDA(Integrated Path Differential Absorption)技術を用いて、大気後方散乱と海面反射の両方の信号を用いた海面付近の水蒸気のDIAL観測を追加提案した。これは大気後方散乱信号よりも強い海面反射信号の差分吸収を利用するものである。衛星軌道高度を400kmとしたIPDA-DIALは、昼間観測でも水平分解能50kmで、海面から高度500mまでの水蒸気積算量を誤差10%で測定可能である。(JpGU2022, 2023)
また衛星搭載ライダーで測定される海面散乱係数から海上の風速を推定する方法[2]をIPDA-DIALのoff信号に適用することにより、大気混合層(熱帯では海面から高度500m前後)の水蒸気量と同時に、海面付近の風速を計測することができる。これらと客観解析データなどの気温情報を合わせると、潜熱・顕熱フラックスのスナップショット毎の計算が可能になる。実際のCALIPSOの海面散乱係数データを用いて、日本南方の海上風速を推定した。推定した風速とマイクロ波放射計による海上風速データ、観測船による気象観測データとの比較を行った結果、比較的風速が低い領域では両衛星観測データと観測船での測定値はよく一致しており、海面散乱係数からの海上風速推定の有効性が確認できた。(JpGU2024)
今回は実際の技術実証に向けて検出器とレーザの再検討を行った。検出器については使用を想定していたInGaAs APDに加えて衛星搭載ライダーの近赤外高感度検出器として注目されているHgCdTe APD[3]の利用検討を行った。HgCdTe APDは検出効率が高くノイズレベルが低いため、レーザ出力を抑えることにより電力が低減され、実現性が高まる。レーザについては当初提案の1350nmの吸収帯を見直し、新たに1480nmの吸収帯利用を検討した。この波長見直しによりQPM(Quasi Phase Matching)素子の入手性が高まるとともに、航空機搭載によるIPDA実証実験の際にファイバーアンプなどを利用した低エネルギパルス高繰返し光源の利用が可能になる。
参考文献
[1] 阿保真他、レーザセンシング学会誌、1 (2020) 72.
[2] Y. Hu et al., Atmos. Chem. Phys., 8 (2008) 3593.
[3] X. Sun, Sensors, 24(2024) 6620.