日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT36] 雪氷圏地震学: 地震動の解析を通じた雪氷圏における変動の理解

2025年5月27日(火) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:箕輪 昌紘(北海道大学・低温科学研究所)、金尾 政紀(国立極地研究所)、Podolskiy Evgeny A.(北極域研究センター, 北海道大学)、橋本 真美(地震予知総合研究振興会)

17:15 〜 19:15

[MTT36-P04] GLISN観測網15周年 (2):成果

*豊国 源知1趙 大鵬1金尾 政紀2坪井 誠司3竹中 博士4 (1.東北大学 大学院理学研究科 地震・噴火予知研究観測センター、2.国立極地研究所、3.海洋研究開発機構、4.岡山大学 学術研究院環境生命自然科学学域(理学系))

キーワード:グリーンランド、地震波トモグラフィー、氷床、ホットプルームとスラブ

グリーンランドにおける地震観測網GLISNは2011年に完成し,この15年間に蓄積されたデータが鋭意解析されている(S-SS05セッション「GLISN観測網15周年 (1):観測」参照).本発表では,発表者らの研究成果を中心に,その成果を報告する.

氷床
常時微動から抽出したレイリー波の観測波形と理論波形との比較から,超長距離伝播(数100~1,000 km)で初めて氷床の高減衰 (Qp,Qs)=(20,20) が明らかとなった (Toyokuni et al., 2021, JGR).またレイリー波位相速度の季節変化・経年変化の検出で,グリーンランド北部の氷床底部融解の可能性が示された (Toyokuni et al., 2018, PEPI).

上部マントル
P波リージョナルトモグラフィー (Toyokuni et al., 2020a, JGR) によって,氷床底部融解が起きている地域は,アイスランドプルームとヤンマイエンプルームの熱軌跡の交点の,地殻熱流量が高い場所であることが明らかとなった.またスバールバル諸島下の上部マントルにホットプルーム(=スバールバルプルーム)が発見された.グリーンランド北東沖の上部マントルに,大規模な高速度岩体(=北東岩体)を発見した.これは4.9~3.9億年前に閉じたイアペタス海リソスフェアの残骸で,大西洋中央海嶺の拡大様式にも影響を与えたと考えられる.また本地域は北米下に沈み込んでいたファラロンスラブとユーラシア下に沈み込んでいたイザナギスラブとのリッジ部分に位置し,軽いリッジがマントル遷移層に停滞して形成されたと考えられる長大なflat slabが見いだされた。グリーンランドとカナダの分裂や,関連した西海岸の火山活動は,flat slab上に形成されたbig mantle wedgeの活動として理解できるようになった (Toyokuni & Zhao, 2023, PEPS).

下部マントル
P波グローバルトモグラフィー (Toyokuni et al., 2020b, JGR) によって,グリーンランド直下の核-マントル境界(深さ2,890 km)からマントル遷移層の底(深さ~660 km)まで上昇するホットプルーム(=グリーンランドプルーム)が見いだされた.ヤンマイエンプルームとスバールバルプルームは,上部マントルにおけるグリーンランドプルームの支流で,北東岩体によって分裂したと考えられる.アイスランドプルームは,グリーンランドプルームと2箇所,西ヨーロッパの別のプルームと1箇所で繋がっていると考えられる.熱いマントル物質の供給ルートが複数存在することで,アイスランドには周辺の他地域に比べて圧倒的多数の火山が存在するものと思われる.またP波異方性リージョナルトモグラフィー (Toyokuni & Zhao, 2021, ESS) により,アイスランドプルームによると考えられる周辺のマントルの流れ場が推定された.

このようにGLISN観測によって氷床から核-マントル境界にいたるまでのグリーンランドとその周辺地域下の詳細な構造が明らかになり,下部マントルにおけるホットプルームとその支流の活動として,火山活動・地熱活動・氷床融解が統一的な熱システムとして理解できるようになった.今後の観測点保守による継続的なデータ蓄積で,本地域の理解はさらに深まると期待できる.