日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT37] 稠密多点GNSS観測が切り拓く地球科学の新展開

2025年5月26日(月) 13:45 〜 15:15 104 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:太田 雄策(東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター)、藤田 実季子(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、大塚 雄一(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、西村 卓也(京都大学防災研究所)、座長:太田 雄策(東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター)

14:00 〜 14:15

[MTT37-02] 激しい雨によって膨張する富士火山:稠密GNSS網による水文測地学

*日置 幸介1、Zheng Shuo2 (1.北海道大学大学院理学研究院、2.香港理工大学)

キーワード:富士火山、全地球航法衛星システム、水文測地学、降雨、隆起、地下水

深部のマグマ溜まりの膨張等による活動的火山の変形は、傾斜計や全球航法衛星(GNSS)受信局によって日々監視されている。多くの若い成層火山の斜面には恒久的な河川は存在せず、斜面に降った雨は地面に浸透し、溶岩流に挟まれた透水性の高いクリンカー層を通って斜面を下り、しばしば名水として湧出する。本研究で取り上げる富士山でも、斜面に降った雨が浅い水脈を通じて麓に達して富士五湖を涵養し、湧出量の多い忍野八海や柿田川湧水等をもたらしている。しかし、このような水文学的なプロセスが測地学的にどのように観測されるかは従来研究されていない。マグマ活動に伴う地殻変動を正しく解釈するために、降雨等がもたらす地殻変動の理解が重要である。本研究では富士山周辺のGNSS局の位置変化から、激しい雨に続いて起こる水文学的な火山の大規模な変形を明らかにする。
GEONET、GNSS局のF5解から共通誤差(common mode error)をZhan et al. (2021 JGR)の方法で取り除いた。その結果、頂上のおよそ30 km以内のGNSS局が、台風や線状降水帯に伴う激しい雨によって数cm隆起することが見出された。これらは富士五湖の水位上昇や火山斜面の傾斜変化と同期しており、浅部の地下水水脈の間隙水圧上昇による地表の隆起を捉えたものと考えられる。
地下水の流動は主に新富士火山の旧期溶岩流 (11,000-8,000 yBP)によって担われるため、隆起はそれらの溶岩流に覆われた地域で起こる。また山頂の30 km以内でも山体崩壊や浸食に伴って生じた厚い堆積物の上にあるGNSS点では変位は不明瞭になる。また富士五湖は古富士火山の溶岩等の深い水脈によっても涵養されるため、大雨に伴う水位上昇は一週間程度の時間スケールで継続することが多い。降雨による山体膨張は頂上からの距離とともに減衰する。40 kmより外側の地域では、日本列島に通常みられる雨水荷重に比例する沈降(1Gtの雨に対して約0.1立方kmの体積沈降)(Heki & Arief, 2022 EPSL)を示す。