16:30 〜 16:45
[MTT37-11] MHM法によるGNSSマルチパスノイズ低減手法の最適化
キネマティックGNSS解析による高い時間サンプリングでの地殻変動の把握は,特に1日以下のタイムスケールの地震・火山現象の把握に重要な技術である.しかし,キネマティックGNSS解析は数時間から数日の時間帯域ではノイズレベルが高く,変動の時間スケールが類似する小規模な変動の検出は難しい.そのノイズ原因の1つとして,GNSS受信アンテナ周囲の環境に起因するマルチパスノイズが挙げられ,マルチパス源が時間的に不変の場合,座標時系列に周期的な変動パターンが現れる(Larson et al., 2007).同特性を活用し,GPS衛星の衛星再訪周期を利用したsidereal filter(e.g. Genrich and Bock, 1992; Larson et al., 2007; Itoh and Aoki, 2022)を利用する方法や,測位解析前にマルチパス起源と考えられる搬送波位相残差マップ(Multipath Hemispherical Map)を作成し,搬送波位相データに対して補正することで除去するMHM法(e.g. Iwabuchi et al., 2004; Fuhrmann et al., 2015)等がマルチパスノイズ低減手法としてあげられる.特に,搬送波位相データを補正する方法は,マルチGNSS測位解析の場合に対しても適用可能であることが示されている(e.g. Geng et al., 2018; Zheng et al., 2019).我々は,マルチパスノイズ低減対象のGNSS観測点に対して,複数基線での短基線相対測位から得られる搬送波位相残差マップを生成し,マルチパスを除去するMSS-MHM法(MSS-MHM法,Multi Sites Stacked Multipath Hemispherical Map)を開発した.本手法をマルチパスの影響が強いことが想定されるソフトバンク株式会社が運用する独自基準点(GNSS観測点,以降,ソフトバンク点)1点に対して適用したところ,マルチGNSS測位解析に対して座標時系列の安定性の向上が確認できた.本手法は理論的にMHM作成時の対流圏遅延や電離層遅延の影響を受けにくく,さらに,マルチパスを除去した搬送波位相データをRINEX形式でファイル出力するため,測位解析ソフトウェアや測位解析ストラテジーに依存しないことが期待される.一方,補正対象のGNSS観測点に対して,対流圏遅延や電離層遅延が無視できる基線長を維持しながら,複数の基準局を選定して相対測位解析を行う必要がある.本研究では,国土地理院のGEONETおよびソフトバンク株式会社が運用する独自基準点からなる超稠密GNSS観測点網を利用し,①数時間から数日スケールの微小な地殻変動の検出,②マルチGNSS(GPS, GLONASS, Galileo, QZSS)測位解析に対しても応用可能,③測位解析ソフトウェアや測位解析手法に依存しない手法,上記3つの目的の実現のために,MSS-MHM法の最適化を行った.
本研究では,2023年1月1日から2023年1月30日までの国土地理院のGEONETおよびソフトバンク点で取得された30秒サンプリングデータを使用した.解析ソフトウェアにはRTKLIB(Takasu, 2013)を用い,衛星軌道,時計情報にはBern大学により公開されているCODE MGEX 最終暦(Dach et al., 2024)を使用した.
補正対象の観測点に対して,以下の手順でマルチパス起因の誤差の補正を行った.i.) 対象の観測点を移動局,周囲のGEONET観測点を基準局として補正対象日の前日までの期間(期間長は1~15日間)で相対測位解析を行う.ii.) 補正対象の観測点が移動局となっている基線解析(基線数:1~5)から得られた搬送波位相残差について,各衛星の仰角および方位角の最適なグリッドサイズでの中央値を計算し,各グリッドにおける位相残差の値を計算する.iii.) 対象観測点,対象日のRINEX観測ファイル中の搬送波位相データに対し,各時刻,各衛星のサイクル値に対して,iiで得られた搬送波位相残差値で補正する.iv.) 補正したRINEX観測ファイルを用いて,長基線相対測位解析を行い,補正前後の座標時系列の標準偏差とアンビギュイティ解決の割合(AR-FIX率)の比較を行う.
試行としてGPS+GLONASS+QZSSのマルチGNSS解析に適用したところ,補正期間が衛星の衛星再訪周期より長く,基線数がより多い場合に座標時系列の標準偏差の低下とAR-FIX率の向上が確認できた.今後は網羅的な解析を行い,マルチパスノイズ低減効果の高いパラメータの最適化を進める予定である.
謝辞:本研究で使用したソフトバンクの独自基準点の後処理解析用データは,「ソフトバンク独自基準点データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム」の枠組みを通じて,ソフトバンク株式会社およびALES株式会社より提供を受けたものを使用しました.
本研究では,2023年1月1日から2023年1月30日までの国土地理院のGEONETおよびソフトバンク点で取得された30秒サンプリングデータを使用した.解析ソフトウェアにはRTKLIB(Takasu, 2013)を用い,衛星軌道,時計情報にはBern大学により公開されているCODE MGEX 最終暦(Dach et al., 2024)を使用した.
補正対象の観測点に対して,以下の手順でマルチパス起因の誤差の補正を行った.i.) 対象の観測点を移動局,周囲のGEONET観測点を基準局として補正対象日の前日までの期間(期間長は1~15日間)で相対測位解析を行う.ii.) 補正対象の観測点が移動局となっている基線解析(基線数:1~5)から得られた搬送波位相残差について,各衛星の仰角および方位角の最適なグリッドサイズでの中央値を計算し,各グリッドにおける位相残差の値を計算する.iii.) 対象観測点,対象日のRINEX観測ファイル中の搬送波位相データに対し,各時刻,各衛星のサイクル値に対して,iiで得られた搬送波位相残差値で補正する.iv.) 補正したRINEX観測ファイルを用いて,長基線相対測位解析を行い,補正前後の座標時系列の標準偏差とアンビギュイティ解決の割合(AR-FIX率)の比較を行う.
試行としてGPS+GLONASS+QZSSのマルチGNSS解析に適用したところ,補正期間が衛星の衛星再訪周期より長く,基線数がより多い場合に座標時系列の標準偏差の低下とAR-FIX率の向上が確認できた.今後は網羅的な解析を行い,マルチパスノイズ低減効果の高いパラメータの最適化を進める予定である.
謝辞:本研究で使用したソフトバンクの独自基準点の後処理解析用データは,「ソフトバンク独自基準点データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム」の枠組みを通じて,ソフトバンク株式会社およびALES株式会社より提供を受けたものを使用しました.