日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT37] 稠密多点GNSS観測が切り拓く地球科学の新展開

2025年5月26日(月) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:太田 雄策(東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター)、藤田 実季子(国立研究開発法人 海洋研究開発機構)、大塚 雄一(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、西村 卓也(京都大学防災研究所)

17:15 〜 19:15

[MTT37-P01] ソフトバンク独自基準点時系列に含まれる保守等に起因する変位ステップの補正手法の提案

*大舘 未来1太田 雄策1 (1.東北大学大学院理学研究科)

キーワード:GNSS、稠密観測網、ソフトバンク独自基準点、時系列解析

GNSSデータを用いた地殻変動解析の際,地殻変動と関係がない座標変化は,目的とする地殻変動現象の理解の妨げとなる.一方,それらが人為的な保守等の要因の場合,日付を特定できるため,変化量の推定が容易である.国土地理院のGEONETでは,電子基準点の座標に影響する可能性が高いものを電子基準点保守作業リストとして公開し,多くの研究者はこれを利用した補正を行っている.一方,近年その活用が進むソフトバンク独自基準点 (e.g., Ohta and Ohzono, 2022) は,その後処理解析用データがソフトバンク独自基準点データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム(以下,CSESS (https://csess.jp/))の枠組みを通じて提供されているが,それら各観測点の保守作業日は公開されていない..短期間かつ少数点の解析であれば目視での補正により対応できるが,長期間かつ広範囲の解析を行う場合,目視による補正は困難である.そこで本研究ではソフトバンク全点の時系列解析を行い,半自動的に保守作業候補日リストを作成する手法を開発した.
CSESSの枠組みで提供されているGNSS観測データは,現在,東北大学により独自の日座標値推定がルーチン的に実施され,CSESS内部での研究に供用されている.具体的にはSoftBank独自基準点およびGEOENTのRINEXデータに対してGipxyX Ver.2.2 の精密単独測位法 (PPP-AR) を適用することで,日座標値推定を実施している.RINEXデータ自体はマルチGNSSのデータを含むが,日座標値推定にはGPSのみを用いている.こうして供用されている2021年5月1日から2024年12月31日を解析の対象とした.欠損日が50日以上連続する観測点は使用しないこととした.また,国土地理院が公開する「GEONETにより地殻変動を観測した地震一覧」をもとに,地震時オフセットの除去を行った.
上記で作成した時系列データの外れ値の除去を次の手順で行った.はじめに,日座標値の推定誤差を対象に信頼区間99%のスミルノフ・グラブス検定を各観測点・各成分で行った.この段階で外れた座標値は外れ値レベル1とした.続いて,レベル1の外れ値を取り除いた時系列データに(1)時間窓50日,閾値4σと,(2)時間窓10日,閾値3σのHampelフィルターをかけた時系列データをそれぞれ用意した.(1)と(2)で外れ値とみなされた日付が一致する日座標値は外れ値レベル2,一致しなかった日座標値を外れ値レベル3とした.なお,1,2は周囲の値から極端に外れた日座標値であるため,除外が適当であるが,レベル3は保守オフセット日の可能性がある日付を検出することを目的としている.
次に,上記で定義した外れ値レベル1, 2, 3に該当する日の座標値を除去したデータを用い,欠損部分は欠損発生前の最後の座標値で補完した.その後,各日付について前後10日間の中央値の差分からなる時系列を作成した.ここから,作業は3つのプロセスに分岐する.
(i)作成した差分時系列に対して時間窓30日,閾値3σのHampelフィルターをかける.これによって,周囲から逸脱した日座標値を取り出す.
(ii)作成した差分時系列の変位量に対しそれぞれの成分で,信頼区間90%のスミルノフグラブス検定行う.
(iii)作成した差分時系列の変位に対してそれぞれの成分で,信頼区間99%のスミルノフグラブス検定を行う.
ここで,(ii)と(iii)では観測点ごとに閾値を設定し,単純に変位量が特段大きい日座標値を抽出することを目的とした. (i)と(iii)が一致する日付を保守レベルA,(i)と(iii)が一致する日付を保守レベルB,(ii) (iii)に含まれない(i)のうち,水平成分が(i)で検出された変位量の中央値,上下成分が平均値+1σを超える日付を保守レベルCとした.
これらの手法で検出されたレベルAの日数の平均値は対象としている期間で約7日とGEONETで想定されている日数よりも非常に多い.これは,取り切れなかった外れ値や短波長の地殻変動を含めて保守候補日として検出している可能性を示唆しており,上記で示した手法を使用する際には注意が必要である.

謝辞:本研究で使用したソフトバンクの独自基準点の後処理解析用データは,「ソフトバンク独自基準点データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム」の枠組みを通じて,ソフトバンク株式会社およびALES株式会社より提供を受けたものを使用しました.

キーワード:GNSS, 稠密観測網 ,ソフトバンク独自基準点, 時系列解析