日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT38] 極端現象のマルチセンシング

2025年5月28日(水) 15:30 〜 17:00 303 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:中村 啓彦(鹿児島大学水産学部)、中道 治久(京都大学防災研究所)、前坂 剛(防災科学技術研究所)、真木 雅之(京都大学防災研究所)、座長:中道 治久(京都大学防災研究所)、佐々 浩司(高知大学教育研究部自然科学系理学部門)

15:50 〜 16:10

[MTT38-02] レーダマルチセンシング観測網の有効性評価手法

★招待講演

*小堀 壮彦1真木 雅之2中村 啓彦1中道 治久2、Matthias Hort3 (1.鹿児島大学水産学部、2.京都大学防災研究所、3.ハンブルク大学)

キーワード:火山、噴煙柱、船舶レーダ

火山の噴火により噴出される火砕物は火口付近で飛散し直接的な脅威となるほか,上昇した噴煙は航空機の安全な運航を制限し,さらに地上への降灰は周辺住民の生活に様々な障害をもたらす.このため,火山の噴煙を観測することは火山防災の観点から重要である.近年では,監視カメラによる観測に加えて,可視条件による制約を受けにくいレーダによる観測も行われている [1].レーダを用いた観測では主にアンテナの方位角を回転させるPlan Position Indicator (PPI)スキャンと,仰角を回転させるRange Height Indicator (RHI)スキャンが用いられる.船舶用のレーダを90°倒すことにより数秒間隔でRHIスキャンする方式も提案されている [2].噴煙の観測を効果的に行うためには,レーダの配置やスキャン方式の設定が重要である.従来の最適なレーダ配置に関する研究では [3],主に気象レーダのPPIスキャンで観測範囲を最大化することに主眼が置かれてきたが,火山の噴煙観測の場合は観測範囲の網羅性だけでなく,噴石の観測では高い時間分解能が,降灰量の分布を正確に求める場合には空間分解能が必要になる.
そこで,我々は網羅性に加えて観測頻度や空間分解能など様々なレーダ特性を評価に組み込んだ指標を計算するレーダマルチセンシングシミュレータを開発した.このシミュレータはPPIスキャンの他,船舶レーダを使ったRHIスキャンにも対応しており,評価対象範囲を等緯度・経度のグリッドで分割し,各点における可視性や感度,空間分解能,時間分解能などを計算する.さらに,計算したそれぞれの特性についてユーザが設定した閾値条件を満足する領域の面積比を求め,これらの面積比の加重平均を計算して有効性の指標「噴煙観測ポテンシャル(Volcanic Eruption Cloud Monitoring Potential: VCMP)」を得る.
開発したレーダマルチセンシングシミュレータの適用例として,桜島の噴煙を観測対象として複数台の船舶レーダと現業の気象レーダを組み合わせた観測網を仮定し,レーダの位置や設置方法に応じたVCMPを算出した(桜島の南岳火口を9台の船舶レーダと1台の気象レーダで観測した場合の覆域を解析した例を添付図に示す).シミュレータから得られる定量的な指標は,設置場所やスキャン設定などの評価を可能にし,効果的なレーダ観測網の設計に役立つ.

謝辞:本研究は京大防災研「一般共同研究」(2023GC-02)及びJSPS科研費(課題22K03760)の助成を受けて実施しました.