日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT38] 極端現象のマルチセンシング

2025年5月28日(水) 15:30 〜 17:00 303 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:中村 啓彦(鹿児島大学水産学部)、中道 治久(京都大学防災研究所)、前坂 剛(防災科学技術研究所)、真木 雅之(京都大学防災研究所)、座長:中道 治久(京都大学防災研究所)、佐々 浩司(高知大学教育研究部自然科学系理学部門)

16:45 〜 17:00

[MTT38-05] 2022年6月3日関東地方で発生したスコールラインにおいてひょうをもたらした対流域の偏波レーダー解析

Jara Oyuki1、*出世 ゆかり2、梅原 章仁3、横山 仁2 (1.筑波大学大学院、2.国立研究開発法人防災科学技術研究所、3.気象庁気象研究所)

キーワード:ひょう、Xバンド偏波レーダー

降ひょうは激しい対流雲によってもたらされ,農業や公共インフラ,車両や建物などに甚大な被害をもたらす.またひょうの降り方は温暖化する気候に対応して今後変化すると指摘されている.ひょうをもたらす雲の微物理的特性を理解するためには,雲中でのひょうの形成と落下プロセスに関する知識を向上させることが重要である.
偏波レーダーは雲内のひょうの分布の観測に非常に有用である.レーダーパラメータの典型的なひょうのシグナルとその空間分布はこれまでの研究でも示されてきたが,それらの時間発展について解析した事例は少なく,未解明な点が多い.本研究では,2022年6月3日に関東地方にひょうをもたらした雲について,国土交通省の4台のXバンド偏波レーダーを用いてレーダーパラメータの時間発展を明らかにする.解析に用いた偏波パラメータは,Zh(レーダー反射因子),ZDR(レーダー反射因子差),KDP(比偏波間位相差),ρHV(偏波間相関係数)である.地上のひょう分布の解析には,防災科学技術研究所の気象リポートシステム「ふるリポ!」,埼玉県,群馬県,千葉県のひょう情報,およびその他の市民からの報告を用いた.
ひょうをもたらした対流域(CR4)は,5つの対流域で構成されるスコールラインの一部であった.5つの対流域のうち,CR4 だけが地上にひょうをもたらした.CR4では,14時55分から15時35分に1回目の降ひょうピークが,15時55分から16時25分に2回目の降ひょうピークが観測された.1回目の降ひょうピーク期間中,CR4では, 55dBZ以上のZh最大値,0dB未満のZDR最小値の地上への到達,高度2km以下のKDP値の範囲が3° km-1から7° km-1,0.7未満のρHV最小値の地上への到達,といった特徴が観測された.これらのひょうのシグナルは,1回目の降ひょうピークの期間中,継続的に観測された.
CR4におけるひょうのレーダシグナルの時間変化の解析から,1回目の降ひょうピークに至る発達段階において3つの異なるフェーズが明らかになった:フェーズ1)上層での散発的なひょうの存在(13時20分~14時00分),フェーズ2)上層での一貫したひょうの存在(14時00分~14時55分),フェーズ3)地上での降ひょう(14時55分~15時35分).フェーズ2では,雲内上層でひょうが継続的に成長したことがレーダパラメータの解析により確認された.フェーズ3の地上での降ひょう期間には,ひょうと雨の両方,または水膜で覆われたひょうが地上に降ったことがレーダパラメータにより示された.