日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT38] 極端現象のマルチセンシング

2025年5月28日(水) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:中村 啓彦(鹿児島大学水産学部)、中道 治久(京都大学防災研究所)、前坂 剛(防災科学技術研究所)、真木 雅之(京都大学防災研究所)

17:15 〜 19:15

[MTT38-P04] 線状降水帯の予測精度向上に向けた差分吸収式水蒸気ライダーの開発・調整

*西橋 政秀1及川 栄治1永井 智広1、酒井 哲1、吉田 智1阿保 真2 (1.気象庁気象研究所、2.東京都立大学)

キーワード:水蒸気ライダー、DIAL、線状降水帯

線状降水帯は甚大な豪雨災害をもたらす可能性が高いことから、その予測精度を向上させることは社会的喫緊の課題である。線状降水帯の発達は低層の水蒸気プロファイルに非常に敏感であるため、その解決策の一つとして、大気下層における水蒸気濃度の鉛直プロファイルの正確な観測が有用であると考えられている。そのため、気象研究所と東京都立大学は、高精度・高時間分解能で連続観測でき、かつ将来の現業化も見据えた低運用コストの次世代型水蒸気ライダーを共同開発している。
本研究で開発している水蒸気ライダーの観測方式は、差分吸収式(Differential Absorption Lidar: DIAL)である。長期の運用実績があるラマン散乱式ライダーと比較すると、装置が複雑ではあるが、原理的に校正が不要、半導体レーザーの使用により装置が小型・軽量化可能、低い保守頻度、低運用コストなどの多くの利点が挙げられる。これまで、Abo et al. (2018)等により水蒸気DIALのプロトタイプが開発された。しかし、太陽背景光によって日中に高高度まで観測できない(約1km以下のみ)ことや、調整作業に長い時間と経験を要するなどの課題があった。そこで、本研究ではそのプロトタイプをベースに、昼夜問わず高度3~4kmまで観測でき、かつ観測現場での作業性や運用面を向上させた装置の開発・調整を進めている。
現在は、高高度からの微弱な散乱光を効果的に観測することにより、観測上限高度を向上させるため、受信分光器の透過率改善や、送信レーザー出力パワーの安定性向上に重点的に取り組んでいる。
これまでに気象研究所において試験観測を実施したところ、さらなる調整が必要ではあるが、観測された水蒸気濃度の鉛直分布は、近接して設置されているラマン散乱式ライダーや館野のラジオゾンデ、気象庁メソ解析のデータと概ね対応する結果が示されている。
2025年の出水期には、線状降水帯をターゲットとした観測を長崎にて実施する計画である。

参考文献
M. Abo, T. Sakai, P. P. L. Hoai, Y. Shibata, and C. Nagasawa: EPJ Web of Conferences 176 (2018) 04015.