日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT39] インフラサウンド及び関連波動が繋ぐ多圏融合地球物理学の新描像

2025年5月28日(水) 09:00 〜 10:30 104 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:山本 真行(高知工科大学 システム工学群)、西川 泰弘(大阪教育大学 理数情報教育系 環境安全科学部門)、市原 美恵(東京大学地震研究所)、乙津 孝之(一般財団法人 日本気象協会)、座長:西川 泰弘(高知工科大学 システム工学群)、齊藤 大晶(北海道大学 理学研究院)

09:45 〜 10:00

[MTT39-04] 微気圧の野外100点集中観測に見られる気圧擾乱の特徴

*平峯 拓実1中島 健介2 (1.九州大学 大学院理学府 地球惑星科学専攻、2.九州大学 大学院理学研究院 地球惑星科学部門)

キーワード:微気圧変動、風速推定、インフラサウンド、乱流、境界層

1.研究背景
 今田・中島(2022 JpGU)[1]は津波早期警戒を念頭に安価で多数設置可能な微気圧観測システムを開発した.これは35ms毎の測定で0.5Paの測定分解能を持ち,雷や乱流等による微気圧変動を捉える可能性がある.平峯・今田・中島(2023 JpGU) [2]は上のシステムを100台作成し野外集中観測を試行した.平峯・今田・中島(2024 JpGU) [3]は上で得られた観測データを解析し,時空間スペクトル及び孤立的擾乱の移動速度と風速の関係を調べた.本発表では,さらに時空間相関解析を加え,風と気圧擾乱の関係を総合的に考察する.

2.微気圧多点観測システム
 容量式MEMS気圧センサDPS310をマイクロコントローラM5Stack-ATOM Liteに接続する乾電池駆動の微気圧計を100台作成した.測定データはWi-Fi通信でDebian/GNU Linux小型PCに収集した.

3.野外観測
 2023年4月8日15時12分~17時20分,九州大学理系図書館近くの平らな広場で観測を行った.100台の微気圧計を10×10の格子点(0.295m間隔)上に配置した.観測領域は正方形であり,対角線の1つは南北走向である.超音波風向風速計ULSA BASICを観測領域から北2.8mの地点に設置し,地上1.5mの風速を0.1秒毎に測定した.以下では,100台全てで35ms毎のデータが得られた15:12~15:23,15:32~15:44,16:10~16:44,17:10~17:20を,5ms線形補間・バイアス補正をした上で解析した結果を示す.

4.結果
4.1 時空間スペクトル
 各時間帯で3次元フーリエ変換を行い,水平波数軸を東西・南北に変換し,南北(東西)波数で積分して周波数-東西(南北)波数空間のパワースペクトルを作成した.総じて,短波数・短周波数ほどパワーが大きかったが,平均風向に対応する成分にパワーが偏っており(Fig. 1),風速が大きいほどその偏りはより高周波数側に移った.以上の結果は,気圧場は風の影響を受けて変動していることを示す.

4.2 孤立的な擾乱の追跡
 各時刻で観測領域の内部に気圧の極大(極小)の点が存在すれば,それを擾乱とみなし,気圧上(下)位9地点の重心を10番目に高(低)い地点との気圧差を重みとして計算して中心位置とし,さらに時間的連続性の判定を加味して移動擾乱を抽出した.その結果,観測領域内で0.5秒以上継続する64個の孤立的擾乱を同定した.このうち低気圧は47個(約73%)で,直径1m程度の渦の存在が示唆される(Fig.2).
 また,各擾乱の軌跡を時間の一次関数に最小二乗でフィットして移動速度を求め,東西・南北各成分で出現時間中の平均風速と比較した.その結果,擾乱の移動方向は概ね風向に対応しており, 擾乱移動速度と風速との間に強い正の相関があったが,擾乱移動速度の大きさは風速の半分程度であった(Fig.3).

4.3 時空間相関
 短周期変動(1秒移動平均の2秒移動平均からの偏差)と長周期変動(10秒移動平均の20秒移動平均からの偏差)について,各時間帯で観測領域の中央付近の1点(基準点)と他点との2点ラグ相関を計算し,各点毎の相関係数の最大値とその遅れ時間を調べた(Fig.4a).その結果,相関係数の最大値は基準点に近いほど高く,平均風速が大きいほど相関が強い領域が広かった.また,相関係数が最大となる遅れ時間の分布は平面波的な構造を示し,その伝播速度は風速の2倍前後となった.向きは大体風向と一致する時間帯が支配的であったが,長周期変動では90度近く異なる時間帯もあった.さらに,基準点の自己相関関数(Fig.4b)のラグ0前後の2つの負のピークの時間差に伝播速度を乗じて擾乱の水平スケールを見積もると,短周期変動で6~10m程度,長周期変動で60~160m程度と推定された.

5.考察
 各解析で得られた擾乱の移動は必ずしも観測した風と一致しなかった(Fig. 5).渦度の移流保存性を念頭に置くと,孤立的擾乱の移動は風速計の高度よりずっと地面に近い高さの風速に対応する可能性がある.逆に,時空間相関で推定された擾乱の水平スケールは観測領域の広さよりずっと大きい.鉛直スケールもこれと同程度とすると,風速計の高度よりずっと背の高い風速場と対応する可能性がある.すなわち,各解析結果は異なる高度の風速を反映しているかもしれない.

参考文献
[1]今田衣美,中島健介,“地面の運動に伴って励起される大気ラム波観測のための微気圧観測システムの開発”,MTT45-P04,日本地球惑星科学連合2022年大会.
[2]平峯拓実,今田衣美,中島健介,“微気圧変動の超多点集中観測の試み” ,MTT37-P03,日本地球惑星科学連合2023年大会.
[3]平峯拓実,今田衣美,中島健介,“微気圧変動の超多点集中観測に見られる接地境界層擾乱の特徴” ,MTT38-P03,日本地球惑星科学連合2024年大会.

謝辞
 本研究はJSPS科研費22K18872の助成を受けて行った.