日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT39] インフラサウンド及び関連波動が繋ぐ多圏融合地球物理学の新描像

2025年5月28日(水) 10:45 〜 12:15 104 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:山本 真行(高知工科大学 システム工学群)、西川 泰弘(大阪教育大学 理数情報教育系 環境安全科学部門)、市原 美恵(東京大学地震研究所)、乙津 孝之(一般財団法人 日本気象協会)、座長:山本 真行(高知工科大学 システム工学群)、乙津 孝之(一般財団法人 日本気象協会)

11:30 〜 11:45

[MTT39-10] 大気圏再突入物体から発生する衝撃波観測:OSIRIS-RExとHAYABUSA2 Sample Return Capsule

*西川 泰弘1山本 真行1ハママ イスラム2エルベリヒ ハニ1,2蓮見 佑太1 (1.高知工科大学 システム工学群、2.エジプト国立データセンター(国立天文学・地球物理学研究所))

キーワード:インフラサウンド、衝撃波、Sample Return Capsule、大気圏再突入

隕石の大気圏突入は、自然現象として非常に稀で予測困難であり、能動的な観測が難しいという課題がある。しかし、このような現象の観測研究は、災害軽減、大気音波伝播、大気構造の理解において重要な役割を果たす。一方、宇宙ミッションにおけるサンプルリターンカプセル(SRC)の大気圏再突入は、予測可能な軌道と再突入ダイナミクスに従い、計画的な観測が可能である。SRCの再突入時に発生する衝撃波の伝播を観測することは、大気音波の性質や伝播特性を理解する貴重な機会である。

2020年12月5日、はやぶさ2のSRCが大気圏に再突入しオーストラリアのウーメラ砂漠へ着陸した。このイベントを観測するため、28台の携帯型インフラサウンドセンサーが7つの観測アレイで展開された。このセンサー配置により、SRCの三次元軌道を高精度で決定することができ、衝撃波を解析できた。この観測結果により、SRCによる大気中の音波伝播に関する新たな知見が得られ、再突入時に発生する衝撃波の特性が明らかとなった。しかし、SRCの着陸地点として選ばれる場所は、砂漠などの人があまりいない場所であり、広範囲な観測ネットワークを設置することは物理的・運用的に難しいという制約がある。

2023年9月24日、OSIRIS-RExのSRCが大気圏に再突入しアメリカ合衆国ユタ州の試験訓練場に着陸した。このイベントを観測するために、我々は4つのインフラサウンドセンサーからなる小規模な観測アレイをネバダ州ユーレカ空港に設置した。この限られたネットワークでは三次元の軌道決定は行えなかったが、SRCの軌道下における音波の観測が可能となり、SRCの軌道を確認できた。これにより、はやぶさ2とOSIRIS-RExのデータを比較することで、SRCによる衝撃波の発生メカニズムやその特徴に関する重要な知見が得られた。

本研究では、SRC再突入時のインフラサウンドデータを用いて、軌道推定の精度向上と大気中の音波伝播の理解を深めることを目指す。また、観測アレイの規模がデータ解析に与える影響を明らかにし、限られた観測リソースを最大限に活用するためのインフラサウンドセンサーの設置方法についても考察する。さらに、SRC再突入時に得られる音波データが、今後の人工物帰還ミッションにおける観測方法の確立に寄与することを示唆する。

本研究の成果は、大気圏で発生する音波伝播のメカニズムに関する基礎的な理解を深めるとともに、科学的な観測手法の向上に貢献する。また、災害対応や宇宙探査における技術的応用にも重要な意義を持ち、今後のミッションにおける観測計画や解析方法に対する示唆を提供することで、さらなる研究の発展に寄与することが期待される。