日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT39] インフラサウンド及び関連波動が繋ぐ多圏融合地球物理学の新描像

2025年5月28日(水) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:山本 真行(高知工科大学 システム工学群)、西川 泰弘(大阪教育大学 理数情報教育系 環境安全科学部門)、市原 美恵(東京大学地震研究所)、乙津 孝之(一般財団法人 日本気象協会)

17:15 〜 19:15

[MTT39-P02] 新型微気圧計を用いた厚木・河口湖でのアレー観測と大気脈動解析

*鈴木 彩水1大井 涼平1大井 拓磨1山河 和也2 (1.株式会社クローネ、2.山梨県富士山科学研究所 富士山火山防災研究センター)

キーワード:大気脈動、インフラサウンド、微気圧計、火山

要旨
 株式会社クローネが開発した新型微気圧計は、試験環境にて振幅100~200 mPaの大気脈動を複数回検知したことにより、その分解能は10 mPaであることが確認されている。しかし、この新型微気圧計を用いた実環境での観測事例はまだない。現在、既存の微気圧計は火山や津波、地震など地球規模の大きな変動から発せられるインフラサウンドの観測機として使われており、災害対策や地球物理学観測に活用されている。本微気圧計で同様の検知が可能であれば、新たな観測ツールとして利用できる可能性があると考えられる。本研究では大気脈動の到来方向を特定し、本微気圧計のインフラサウンド観測機としての有用性と防災への応用の可能性について考察することを目的とする。また、観測点ごとの波形の違いからその土地の特性についても考察を行う。

 本研究は国立研究開発法人海洋研究開発機構と山梨県富士山科学研究所にご指導とご協力をいただき、厚木・伊勢原市内(厚木アレー)と河口湖(河口湖アレー)の2か所に観測アレーを設置した。各観測アレーには2km間隔で3点の新型微気圧計を設置した。新型微気圧計にはGPSアンテナを接続し、時刻同期を行っている。また、観測データは外付けSSDに保存し、定期的に回収している。大気脈動は0.2Hz周期であることが分かっているため、本研究では、スペクトル解析を用いて、大気脈動が発生している時刻を特定し、波形の相関解析により、アレー内の各観測点の距離と時間差から到来方向を求めた。加えて、各観測点のノイズの違いからその地域の地盤や周辺環境特性に着目し、微気圧計の設置場所を検討する上での環境についても考察した。

 2024年10月10日から2025年1月20日までの観測データをスペクトル解析にかけた結果、複数の日付で0.2 Hzのピークが見られた。このことから、観測期間中に強い大気脈動が発生し、新型微気圧計で検知することができたと考えられる。また、そのうち2回は特に顕著な波形を検出することができた。この2回を相関解析にかけた結果、音波に近い速さで到来しており、このことからも大気脈動であると考えられる。到来方向については、厚木アレーと河口湖アレーで正反対の方向を指し示すことがあった。また、大気脈動が波高の高い位置を波源とすると想定されることから気象庁発表の沿岸波浪図とも比べたが少し異なる方向を指し示した。この原因としては、それぞれのアレー観測点近傍の地形が大気脈動の波動伝播に影響を与えている可能性や解析ソフトが開発段階にあるため、目視により時間差を求めていることによるずれなどが考えられる。
 本研究において、厚木アレーと河口湖アレーで一貫した結果が得られなかったが、大気脈動の検知ができたことから、本新型微気圧計はあらゆる自然現象から発せられるインフラサウンドを検知することができる可能性があると考えられる。今後は、解析手法を精緻化し、アレー観測の再解析とその結果から防災などへ活用法を検討する。

謝辞
 本研究において国立研究開発法人海洋研究開発機構の深尾良夫氏、金泰運氏には大気脈動とその観測方法について熱心にご指導いただきました。観測においては株式会社ミトミ技研の北島俊明氏、今井光太氏に観測機器の構成および設置方法について有益なご助言をいただきました。観測点を快く提供いただいた厚木アレーの曹洞宗関泉寺、自修館中等教育学校、株式会社ミトミ技研、河口湖アレーの富士河口湖町立小立小学校、富士河口湖町立大石小学校、富士河口湖町立河口湖北中学校の皆様にも深く感謝申し上げます。また、富士河口湖町の観測点につきましては、富士山科学研究所の久保智弘氏と富士河口湖町教育委員会のご協力を得てご提供いただきました。河口湖アレーにつきましては【令和6年度やまなし火山防災イノベーションピッチコンテスト】に採択いただき、その補助金により観測が行われました。この場を借りて深く御礼申し上げます。