15:00 〜 15:15
[MZZ41-06] 気象関連科学技術の社会的活用にかかる課題と対処に関する研究
~台風研究に関する自治体防災関係者へのインタビューを例として~
キーワード:台風防災、インタビュー調査、ELSI、台風制御、自治体
1.研究の背景と目的
科学技術は社会に多くの恩恵をもたらすが,新技術の社会的導入に伴う倫理的・法的・社会的課題(Ethical, Legal and Social Issues; ELSI)が顕在化する場合もあり,科学技術とその成果を社会に適切に位置付けてより良いインパクトをもたらしていく道筋の洞察・検討も行われるようになってきた.また,責任ある研究・イノベーション(Responsible Research and Innovation; RRI)の考え方とその重要性も認識されるようになった.気象・気候は,人命・財産や産業をはじめ社会経済活動に幅広く関係し影響をもたらす.そのため,例えば,台風・豪雨等に伴う災害の軽減に資する研究開発においては,気象学的な研究(予測技術の向上など)を進展させつつ(予測の不確実性なども考慮しつつ),気象技術とその成果の活用実態や研究開発への意向(期待・不安など)の把握も通じて,社会的活用にかかる課題とその対処に関する検討を行う必要がある.本研究では,台風(豪雨等を含む.以下同じ.)に関する研究(ムーンショット型研究開発(目標8)で進める台風制御研究を含む.)の防災への活用にかかる課題と対処の検討に寄与するため,災害応急対策等に携わる自治体の防災担当者に対して行ったインタビュー調査とその結果を報告する.
2.インタビュー調査の概要と分析方法
本インタビューは,台風防災に資する研究やその社会的活用にかかる課題等の検討材料とするための実践的調査であり,自治体の防災担当者に対して,5つの項目(①台風の影響・被害や台風防災に関する意識など,②県民・市民の台風への意識・備え,③台風情報・防災気象情報の利用状況や要望・期待,④自治体における台風の被害軽減の取組,⑤台風制御に対する印象・期待・懸念など)について聞き取りを行った.台風被害の経験度や性質を幅広くカバーし,県庁と同じ県内の市を合わせて行うように,15道県・20市の計35自治体で,2024年1月から約1年をかけて順次実施した.
インタビュー調査は,事前に送付した質問(5つの聴き取り項目ごとに複数設定)への回答とともに関連した質問を適宜行い聴き取る対話形式(半構造化インタビュー)である.聴き取り内容のトランスクリプションをコーディングし,帰納的に全体的な傾向や類型化(地域や台風の経験度の違い,県と市の違いなど)の分析,課題抽出等を基本(質的研究)とした.また,別に調査した一般市民の台風に関する意識との違い等を分析するため量的研究の手法も取り入れた.
3.主な調査・分析結果
聴き取り項目①と②では,近年の台風に変化(動き・コース,強度の増加,発生場所)を感じている自治体が多く,また,台風関連災害の今後の激化・頻発化を予想(想定)し,行政としてハード・ソフト対策の強化とともに,市民レベルでの災害リスクの認識と自助・共助の強化を支援する取組の重要さに言及する自治体が多くあった.また,警戒するハザード(暴風よりも豪雨による浸水・土砂災害を重視・警戒する自治体が多いなど),台風に対する恐れの度合い(来てほしくないなど)や市民の備えは,各地域の台風被害の特徴や経験の違いを反映していることが確認された.
聴き取り項目③では,台風という自然現象とそのハザード・影響の把握や予測に携わる研究者/情報提供者と,台風から受ける影響や被害リスクの性質・時間・場所を想定して対応する自治体担当者では、視点や関心の違いに留意することの必要性・重要性が確認された.また,災害対応につながる簡潔でわかりやすい情報提供への期待と,他方で,予測に不確実性があるなかでは可能性のある複数のシナリオの提供が情報提供者への信頼性を高めることになるとの示唆ある回答も寄せられた.
聴き取り項目⑤では,台風制御の第一印象と,実際の研究内容やその体制の説明を受けた後の見解等の変化を通じて,研究の進展とともに利害関係者への適時の説明や意見聴取・課題共有の必要性・有効性などが確認された.具体的には,制御研究に関する理解が進むことで,新たな課題の気づきや課題整理がなされたり,ELSI検討にも取り組む研究体制が制御研究への否定的な印象を変えた例があった.防災対応や行政経験の知見に基づき自治体担当者から示された「制御」に対する懸念・予想される影響や課題としては,制御に関する倫理面や社会的価値観の違い等からくる合意形成の難しさ,大気や環境への影響や他地域などへの影響とそれらに伴う揉め事・賠償等の問題,周辺諸国を含む国際社会との関係,制御技術の能力・不確実さなどの正確な説明・周知の必要性,などが挙げられた.
科学技術は社会に多くの恩恵をもたらすが,新技術の社会的導入に伴う倫理的・法的・社会的課題(Ethical, Legal and Social Issues; ELSI)が顕在化する場合もあり,科学技術とその成果を社会に適切に位置付けてより良いインパクトをもたらしていく道筋の洞察・検討も行われるようになってきた.また,責任ある研究・イノベーション(Responsible Research and Innovation; RRI)の考え方とその重要性も認識されるようになった.気象・気候は,人命・財産や産業をはじめ社会経済活動に幅広く関係し影響をもたらす.そのため,例えば,台風・豪雨等に伴う災害の軽減に資する研究開発においては,気象学的な研究(予測技術の向上など)を進展させつつ(予測の不確実性なども考慮しつつ),気象技術とその成果の活用実態や研究開発への意向(期待・不安など)の把握も通じて,社会的活用にかかる課題とその対処に関する検討を行う必要がある.本研究では,台風(豪雨等を含む.以下同じ.)に関する研究(ムーンショット型研究開発(目標8)で進める台風制御研究を含む.)の防災への活用にかかる課題と対処の検討に寄与するため,災害応急対策等に携わる自治体の防災担当者に対して行ったインタビュー調査とその結果を報告する.
2.インタビュー調査の概要と分析方法
本インタビューは,台風防災に資する研究やその社会的活用にかかる課題等の検討材料とするための実践的調査であり,自治体の防災担当者に対して,5つの項目(①台風の影響・被害や台風防災に関する意識など,②県民・市民の台風への意識・備え,③台風情報・防災気象情報の利用状況や要望・期待,④自治体における台風の被害軽減の取組,⑤台風制御に対する印象・期待・懸念など)について聞き取りを行った.台風被害の経験度や性質を幅広くカバーし,県庁と同じ県内の市を合わせて行うように,15道県・20市の計35自治体で,2024年1月から約1年をかけて順次実施した.
インタビュー調査は,事前に送付した質問(5つの聴き取り項目ごとに複数設定)への回答とともに関連した質問を適宜行い聴き取る対話形式(半構造化インタビュー)である.聴き取り内容のトランスクリプションをコーディングし,帰納的に全体的な傾向や類型化(地域や台風の経験度の違い,県と市の違いなど)の分析,課題抽出等を基本(質的研究)とした.また,別に調査した一般市民の台風に関する意識との違い等を分析するため量的研究の手法も取り入れた.
3.主な調査・分析結果
聴き取り項目①と②では,近年の台風に変化(動き・コース,強度の増加,発生場所)を感じている自治体が多く,また,台風関連災害の今後の激化・頻発化を予想(想定)し,行政としてハード・ソフト対策の強化とともに,市民レベルでの災害リスクの認識と自助・共助の強化を支援する取組の重要さに言及する自治体が多くあった.また,警戒するハザード(暴風よりも豪雨による浸水・土砂災害を重視・警戒する自治体が多いなど),台風に対する恐れの度合い(来てほしくないなど)や市民の備えは,各地域の台風被害の特徴や経験の違いを反映していることが確認された.
聴き取り項目③では,台風という自然現象とそのハザード・影響の把握や予測に携わる研究者/情報提供者と,台風から受ける影響や被害リスクの性質・時間・場所を想定して対応する自治体担当者では、視点や関心の違いに留意することの必要性・重要性が確認された.また,災害対応につながる簡潔でわかりやすい情報提供への期待と,他方で,予測に不確実性があるなかでは可能性のある複数のシナリオの提供が情報提供者への信頼性を高めることになるとの示唆ある回答も寄せられた.
聴き取り項目⑤では,台風制御の第一印象と,実際の研究内容やその体制の説明を受けた後の見解等の変化を通じて,研究の進展とともに利害関係者への適時の説明や意見聴取・課題共有の必要性・有効性などが確認された.具体的には,制御研究に関する理解が進むことで,新たな課題の気づきや課題整理がなされたり,ELSI検討にも取り組む研究体制が制御研究への否定的な印象を変えた例があった.防災対応や行政経験の知見に基づき自治体担当者から示された「制御」に対する懸念・予想される影響や課題としては,制御に関する倫理面や社会的価値観の違い等からくる合意形成の難しさ,大気や環境への影響や他地域などへの影響とそれらに伴う揉め事・賠償等の問題,周辺諸国を含む国際社会との関係,制御技術の能力・不確実さなどの正確な説明・周知の必要性,などが挙げられた.