日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-ZZ その他

[M-ZZ41] 地球科学の科学史・科学哲学・科学技術社会論

2025年5月26日(月) 15:30 〜 17:00 コンベンションホール (CH-A) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:矢島 道子(東京都立大学)、青木 滋之(中央大学文学部)、山田 俊弘(大正大学)、山本 哲、座長:青木 滋之(中央大学文学部)、山田 俊弘(大正大学)

16:30 〜 16:45

[MZZ41-11] プルトニズムとグローバル・テクトニクス:科学思想史的考察

*山田 俊弘1 (1.大正大学)

キーワード:プルトニズム(深成論)、地体構造論、ハットン、小川琢治、地学思想史

地質学の歴史上、プルトニズム(深成主義、深成論)は通常ハットン(James Hutton, 1726-1797)の名前に結びつけられ、水成論・火成論論争における火成論の陣営の、激変論・斉一論論争における斉一論の陣営の支持理論として現れる。しかし、それぞれの局面における機能の仕方は十分な分節化のうえ説明されているとは言えない。たとえば、火成論との関係ではマグマ形成の場所性から「深成岩」という下位概念に収まり、「斉一論」では動力源を説明する際の現在主義という枠内に閉じ込められてしまうという印象を受ける。もちろん両者ともに重要な過程なのだが、いつの間にか「プルトニズム」としての存在感は歴史記述から消えてしまうのである(Rudwick 2005)。
 本発表は、やや長いスパンを取ったひとつの科学思想の系譜という観点からプルトニズム概念を見直す試みである。
 地球の地下の火だまり、とくに中心火という観念は、地下の水たまりとともに古代からあったと考えられるが、科学革命期には明確に地球論の説明装置として図像化され始める。たとえばキルヒャーは、「中心力」の概念とともに、中心火が地球体内に岩漿ネットワークを形成して地表の火山活動に連結する様子を描き出した(山田 2017)。地下深部の探査が有効なデータを生み出さない間は、この手のイマジネーションは観想としかみなされなかったが、主として地震波解析から内部構造の実態が明らかになってくる20世紀前半には、「プルトニズム」の復活とでも名づけられる現象が見られるようになる。
 よく知られているのはホームズの対流説であり、明らかに高温の中心核(コア)の存在を前提として成り立つ仮説である。日本の小川琢治(1870-1941)も、コアの存在や深発地震の発見によって、地球深処から発動する火成力を重視するグローバル・テクトニクスを展望した(小川 1929)。小川はウェゲナー批判者であったので、プレート理論の学説史からは脱落してしまうが、ホットスポット説やプルーム・テクトニクスの観点からは再評価が可能であり、地学思想史上の位置づけが必要となろう。

Rudwick, M., Bursting the Limits of Time: The Reconstruction of Geohistory in the Age of Revolution, University of Chicago Press, 2005
山田俊弘『ジオコスモスの変容:デカルトからライプニッツまでの地球論』勁草書房、2017
小川琢治『地質現象之新解釈』古今書院、1929