日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-ZZ その他

[M-ZZ42] 地球化学の最前線:新しい挑戦と将来の展望

2025年5月30日(金) 15:30 〜 17:00 103 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:小畑 元(東京大学大気海洋研究所海洋化学部門海洋無機化学分野)、羽場 麻希子(東京工業大学理学院地球惑星科学系)、角野 浩史(東京大学先端科学技術研究センター)、井上 麻夕里(岡山大学大学院自然科学研究科)、座長:小畑 元(東京大学大気海洋研究所海洋化学部門海洋無機化学分野)、羽場 麻希子(東京工業大学理学院地球惑星科学系)、角野 浩史(東京大学先端科学技術研究センター)、井上 麻夕里(岡山大学大学院自然科学研究科)

16:40 〜 16:55

[MZZ42-10] カーボンニュートラルに向けた土壌団粒促進に関する研究:森林土壌団粒中の鉄化学種と土壌有機物の局所分布

*古川 丈真1、高橋 理1、小林 耕野2、和穎 朗太2 (1.トヨタ自動車株式会社、2.農研機構 農業環境変動研究センター)

キーワード:カーボンニュートラル、土壌団粒、土壌有機物、STXM、XAFS、炭素安定化

2050年のカーボンニュートラル達成に向け、陸域の生態系を活用したCO2吸収に関する取り組みが注目を集めている。その中でも、土壌団粒に含まれる有機物(OM)は、微生物から分解されにくく、かつ土壌団粒は養分保持力の向上に寄与するため、植物の成長を促進し、カーボンニュートラルにも貢献すると考えられる。土壌団粒は階層的構造を持つことが知られているが、その基盤となる低次構造の形成には、粘土鉱物および比表面積および表面活性の高い非晶質金属酸化物(フェリハイドライトやアルミニウムの水和物等)とOMの相互作用の重要性が指摘されている。しかし、その形成機構および微視的スケールにおけるこれら鉱物、有機物の分布を直接観察した研究はまだ少ない。
そこで本研究では、非晶質鉄とOMの接着機構の解明に向け、森林土壌中のサブミクロ団粒中の鉄やOMの化学種の解析や局所分布解析を行った。愛知県豊田市に位置するトヨタテクニカルセンター下山の森林表層土壌を対象に、土壌中の鉄化学種を明らかにするため、鉄のX線吸収微細構造(XAFS)を取得し、標準試料とのXAFSスペクトルとの比較から試料中の鉄化学種の同定及び定量を行った。さらに透過法と電子収量法を組み合わせて、バルク及び団粒表面の鉄化学種をそれぞれ解析した。また、サブミクロ団粒中の鉄とOMの局所分布解析のためにミクロ団粒試料を包埋した樹脂薄片を製作し、走査型透過X線顕微鏡(STXM)を用いてミクロスケールでのX線吸収端近傍微細構造(NEXAFS)を取得した。得られたNEXAFSスペクトルを用いて、サブミクロ団粒中の土壌有機物と非結晶鉄をマッピングし局所分布解析を行った。
鉄の透過XAFSの解析結果から、団粒中の主な鉄化学種は、フェリハイドライトや粘土鉱物であるイライトや黒雲母等である事が分かり、比表面積の大きいフェリハイドライトの団粒形成への関与が示唆された。さらに透過法と電子収量法を組み合わせた解析から、フェリハイドライトの全鉄に占める比率は、団粒表面の方が団粒全体の値よりも高かった。この事から、フェリハイドライトはミクロ団粒表層に局在しており、それが黒雲母等の表面活性の低い鉱物粒子を繋ぎとめる機構があると推察された。また、STXMを用いた炭素と鉄の局所マッピングから、サブミクロ団粒中の土壌有機物とフェリハイドライトの空間分布が一致し、かつフェリハイドライトが黒雲母を取り囲むように存在する事が確認された。この結果は、鉄のXAFS解析結果とも整合的であり、フェリハイドライトは粘土鉱物表面だけでなく有機物とも結合し、土壌ミクロ団粒を形成する核となり得る事が示唆された。これらの結果から推測されるメカニズムを基に、カーボンニュートラル達成に向けた土壌団粒化促進技術への応用が期待できる。