日本地球惑星科学連合2025年大会

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[J] ポスター発表

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[M-ZZ42] 地球化学の最前線:新しい挑戦と将来の展望

2025年5月30日(金) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:小畑 元(東京大学大気海洋研究所海洋化学部門海洋無機化学分野)、羽場 麻希子(東京工業大学理学院地球惑星科学系)、角野 浩史(東京大学先端科学技術研究センター)、井上 麻夕里(岡山大学大学院自然科学研究科)

17:15 〜 19:15

[MZZ42-P02] 高精度同位体分析による初期太陽系La同位体不均質性の検証

*佐野 凌1飯塚 毅1鈴木 充1 (1.東京大学)

キーワード:高精度同位体分析、MC-ICP-MS、同位体不均質性、初期太陽系

近年の高精度同位体分析により様々な元素の同位体組成が初期太陽系において不均質であったことが明らかになった(eg. 50Ti, 54Cr; Warren,2011). その起源として, 超新星爆発放出物の不均質分布が提唱されている. 実際に, 外側太陽系由来の隕石NWA 6704には, 内側由来の数多くの隕石に比べ, 超新星爆発でのみ合成される消滅核種92Nbが多く含まれていたことが明らかになった(Hibiya et al., 2023). しかし, 消滅核種92Nbの存在度を決定するのは困難であり, 他の外側太陽系由来の隕石の分析には未だ成功していない. 長寿命核種138Laは92Nbと同様に超新星爆発放出物の良いトレーサーとなり, その存在度を直接測定できる. さらに92Nbの均質分布を仮定していた従来のNb-Zr年代学の較正に利用できる. このためには, 太陽系内側〜外側に由来する種々隕石の全岩La同位体比を高精度に求める必要がある.
 これまでに表面電離型質量分析計を用いた測定によってアエンデ隕石(炭素質コンドライト)の難揮発性包有物CAI中に最大+60±16ε(2SD)のLa同位体異常が報告されているものの(Shen & Lee, 2003), 全岩隕石試料の分析では分析精度が不十分であり(±8〜12ε, 2SD ; Shen et al., 1994),有意な同位体異常の検出には至っていない.
そこで本研究ではMC-ICP-MSを用いた高精度La同位体分析手法を確立し, 隕石全岩スケールでの核合成起源La同位体異常を検証することを目的とする.
La同位体分析においては, 138Laの存在度が非常に小さいこと, 同位体が二つしかないためにLaのみでの装置内質量分別補正ができないこと, 138Ba, 138Ceによる同重体干渉の影響が大きいことが問題となる.
 本研究では1013Ω増幅器を適用したファラデー検出器の利用により存在度が小さい138Laの高感度検出を行った. また試料に添加したNd標準試薬(JNdi-1)のNd同位体質量分別をモニターして装置内におけるLa同位体質量分別の補正を行った(外部補正法). またBa同重体補正について, 毎回の試料測定後に行うBa添加試験によって補正係数を決定することで, 高いBa/La比を持つ試料についても十分に補正できるようにした.
 同重体干渉の影響の低減ついては3段階のカラムクロマトグラフィー手法によりBa, Ceを除去しつつLaを単離する. ただし本手法で用いるLnレジン(Ln-spec resin)では回収率低下時に同位体分別が生じることがCeやNdにおいて指摘されており(Ohno & Hirata, 2013), Laでも分別が生じる可能性がある. 本研究ではLa単離時の同位体分別効果の検証を行い, 実際にLa同位体分別が生じることが確認された. 80%以上のLaを回収することができれば同位体分別効果は測定誤差の範囲内に収まり, 無視できることが分かった.
Laは同位体が質量数138と139の2つのみであるため実際の隕石試料の分析に際しては, 核合成起源以外の要因, すなわち「地質過程による同位体分別」および「中性子捕獲反応」による同位体変動を個別に評価する必要がある. 地球のさまざまな火成岩・堆積岩標準試料のLa同位体分析を行い, 地質過程による同位体分別効果を検証した. 測定された地質試料は測定精度の範囲内で一致しており, 地質過程による同位体異常は検出されなかった. 地質過程による同位体変動は±2.2εに収まることが分かった. また中性子捕獲反応の影響は中性子捕獲断面積と中性子フルエンスを用いた計算により, 0.5ε以下であることが分かった. これは現状の測定精度では問題とならない.
本研究ではさらに実際の隕石試料として太陽系内側天体由来と考えられるユークライトと太陽系外側由来と考えられるアエンデ隕石のLa同位体分析を行った. ユークライトではLa同位体異常が見られなかったのに対して(ε138La=-1.3〜+2.0), アエンデ隕石では正のLa同位体異常が検出された(ε138La=+10.5±2.5). これにより初期太陽系における隕石全岩スケールでの核合成起源La同位体不均質性が明らかとなった.