17:15 〜 19:15
[MZZ42-P04] 塩酸–2-プロパノール混合溶液中のアニオン交換樹脂への29元素の分配係数
キーワード:分配係数、イオン交換クロマトグラフィー、塩酸–2-プロパノール混合溶液、鉄隕石、カリウム
宇宙線生成核種は主に銀河宇宙線が引き起こす核破砕反応によって惑星物質中に生成される。カリウム(K)は多くの惑星物質に豊富に含まれるが、鉄隕石にはほとんど存在しない。そのため、鉄隕石を用いた宇宙線生成Kの同位体測定が可能である。40Kは長い半減期(約13億年)を持つ放射性核種であるため、長期間の宇宙線照射を経験した鉄隕石中の宇宙線生成カリウム同位体比から銀河宇宙線フラックスの長期変動(108–109年スケール)を検証できる可能性が提案されている(Wieler 2013)。
正確な同位体質量分析には、分析対象元素を他の元素から分離・精製する必要がある。一般に、元素の分離にはイオン交換樹脂を用いたイオンクロマトグラフィーが用いられる。しかし、Kと鉄隕石の主要元素であるNiの分離は、各種酸とイオン交換樹脂との間の分配係数(Kd)が類似しているため(Saito 1984)、容易ではない。先行研究では、濃塩酸と2-プロパノールの1:3混合溶液を溶媒とする方法でアニオン交換樹脂によるKとNiの分離を行った例がある(Nitoh et al. 1980)。本研究では、KとNiを含む29元素について、様々な濃度の塩酸–2-プロパノール混合溶液中のアニオン交換樹脂への分配係数を測定し、KとNiの分離に最適な混合率を検討した。
本実験でバイアルに加えた溶液と樹脂は正確に秤量した。多元素標準溶液XSTC-13(10 mg L−1, SPEX CertiPrep Inc.)をテフロン製バイアルに秤量し、90℃で乾固した。酸洗浄後に50℃で十分乾燥させたAG1x8樹脂(100–200 mesh, Eichrom)約100 mgをバイアルに入れ、塩酸(0.5–8 M)–2-プロパノール(0–90%)混合溶液3 mLを加えた。蓋を密閉し、室温で数日間静置した。この間バイアルは毎日よく振盪した。その後、600 μLの上澄み液を清浄なテフロンバイアルに移し、100℃で乾固した。誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)での測定用に内標準として100 ppb Rh溶液(0.5 M 硝酸)50 μLを加え、更に0.5 M 硝酸3 mLで希釈した。この溶液中の29元素の濃度を東京科学大のICP-MS(iCAP TQ; Thermo Fisher Scientific)により測定し、標準溶液からの濃度変化に基づき各元素の分配係数を決定した。
得られた分配係数をもとに各元素を4グループに分類する:(1) ほぼ樹脂に吸着しないまたは弱い吸着(Kd < 20)、 (2) 中程度の吸着(20 < Kd < 200)、 (3) 強い吸着(200 < Kd < 2000)、 (4) 非常に強い吸着(2000 < Kd)。一部の結果を以下に示す。
1 M 塩酸: (1) Li, Be, Na, Mg, Al, K, Ca, V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Ga, As, Se, Rb, Sr, In, Ba, Th, U; (2) Pb; (3) Zn, Ag; (4) Cd, Tl, Bi.
8 M 塩酸: (1) Li, Be, Na, Mg, Al, K, Ca, V, Cr, Mn, Ni, As, Rb, Sr, Ag, In, Ba, Pb, Th; (2) Co, Cu, Zn, Cd, Bi; (3) Fe, Se; (4) Ga, Tl, U.
1 M塩酸–2-プロパノール(90%): (1) Li, Be, Na, K, As, Rb; (2) Mg, Al, Ca, V, Cr, Ni, Se, Sr, Ba; (3) Fe, Ga, Ag, Tl, Th; (4) Mn, Co, Cu, Zn, Cd, In, Pb Bi, U.
1 Mおよび8 M塩酸中の分配係数は文献値の傾向(Kraus and Nelson, 1956)と一致した。多くの元素で、2-プロパノール濃度の上昇に伴い分配係数が増大した。KとNiはいかなる濃度の塩酸中でも樹脂にほとんど吸着しなかったが、塩酸(0.5 M, 1 M)–2-プロパノール(90%)混合溶液中ではNiがよく吸着した(Kd: ~70)。一方でKは弱く吸着した(Kd: ~10)。また、2-プロパノール(90%)におけるNiの分配係数は、0.5 M塩酸 の方が1 M塩酸よりもやや高かった。更に、鉄隕石中の他の主要元素であるFe, Co, Cuは同条件下で強く樹脂に吸着した。以上の結果から、アニオン交換樹脂と0.5 M塩酸–2-プロパノール(90%)混合溶液を用いたイオン交換クロマトグラフィーが、鉄隕石中のKの分離に有効である可能性が示された。
正確な同位体質量分析には、分析対象元素を他の元素から分離・精製する必要がある。一般に、元素の分離にはイオン交換樹脂を用いたイオンクロマトグラフィーが用いられる。しかし、Kと鉄隕石の主要元素であるNiの分離は、各種酸とイオン交換樹脂との間の分配係数(Kd)が類似しているため(Saito 1984)、容易ではない。先行研究では、濃塩酸と2-プロパノールの1:3混合溶液を溶媒とする方法でアニオン交換樹脂によるKとNiの分離を行った例がある(Nitoh et al. 1980)。本研究では、KとNiを含む29元素について、様々な濃度の塩酸–2-プロパノール混合溶液中のアニオン交換樹脂への分配係数を測定し、KとNiの分離に最適な混合率を検討した。
本実験でバイアルに加えた溶液と樹脂は正確に秤量した。多元素標準溶液XSTC-13(10 mg L−1, SPEX CertiPrep Inc.)をテフロン製バイアルに秤量し、90℃で乾固した。酸洗浄後に50℃で十分乾燥させたAG1x8樹脂(100–200 mesh, Eichrom)約100 mgをバイアルに入れ、塩酸(0.5–8 M)–2-プロパノール(0–90%)混合溶液3 mLを加えた。蓋を密閉し、室温で数日間静置した。この間バイアルは毎日よく振盪した。その後、600 μLの上澄み液を清浄なテフロンバイアルに移し、100℃で乾固した。誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)での測定用に内標準として100 ppb Rh溶液(0.5 M 硝酸)50 μLを加え、更に0.5 M 硝酸3 mLで希釈した。この溶液中の29元素の濃度を東京科学大のICP-MS(iCAP TQ; Thermo Fisher Scientific)により測定し、標準溶液からの濃度変化に基づき各元素の分配係数を決定した。
得られた分配係数をもとに各元素を4グループに分類する:(1) ほぼ樹脂に吸着しないまたは弱い吸着(Kd < 20)、 (2) 中程度の吸着(20 < Kd < 200)、 (3) 強い吸着(200 < Kd < 2000)、 (4) 非常に強い吸着(2000 < Kd)。一部の結果を以下に示す。
1 M 塩酸: (1) Li, Be, Na, Mg, Al, K, Ca, V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, Ga, As, Se, Rb, Sr, In, Ba, Th, U; (2) Pb; (3) Zn, Ag; (4) Cd, Tl, Bi.
8 M 塩酸: (1) Li, Be, Na, Mg, Al, K, Ca, V, Cr, Mn, Ni, As, Rb, Sr, Ag, In, Ba, Pb, Th; (2) Co, Cu, Zn, Cd, Bi; (3) Fe, Se; (4) Ga, Tl, U.
1 M塩酸–2-プロパノール(90%): (1) Li, Be, Na, K, As, Rb; (2) Mg, Al, Ca, V, Cr, Ni, Se, Sr, Ba; (3) Fe, Ga, Ag, Tl, Th; (4) Mn, Co, Cu, Zn, Cd, In, Pb Bi, U.
1 Mおよび8 M塩酸中の分配係数は文献値の傾向(Kraus and Nelson, 1956)と一致した。多くの元素で、2-プロパノール濃度の上昇に伴い分配係数が増大した。KとNiはいかなる濃度の塩酸中でも樹脂にほとんど吸着しなかったが、塩酸(0.5 M, 1 M)–2-プロパノール(90%)混合溶液中ではNiがよく吸着した(Kd: ~70)。一方でKは弱く吸着した(Kd: ~10)。また、2-プロパノール(90%)におけるNiの分配係数は、0.5 M塩酸 の方が1 M塩酸よりもやや高かった。更に、鉄隕石中の他の主要元素であるFe, Co, Cuは同条件下で強く樹脂に吸着した。以上の結果から、アニオン交換樹脂と0.5 M塩酸–2-プロパノール(90%)混合溶液を用いたイオン交換クロマトグラフィーが、鉄隕石中のKの分離に有効である可能性が示された。