日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

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[M-ZZ42] 地球化学の最前線:新しい挑戦と将来の展望

2025年5月30日(金) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:小畑 元(東京大学大気海洋研究所海洋化学部門海洋無機化学分野)、羽場 麻希子(東京工業大学理学院地球惑星科学系)、角野 浩史(東京大学先端科学技術研究センター)、井上 麻夕里(岡山大学大学院自然科学研究科)

17:15 〜 19:15

[MZZ42-P07] 船舶重油規制が名古屋の大気エアロゾル中の硫黄及び微量元素濃度に及ぼす影響

*夏目 花1南 雅代2池盛 文数3,2、片岡 賢太郎4、淺原 良浩4 (1.国立法人名古屋大学理学部地球惑星科学科、2.名古屋大学宇宙地球環境研究所、3.名古屋市環境科学調査センター、4.名古屋大学大学院環境学研究科)

キーワード:大気エアロゾル、 硫黄濃度、重油規制

⼤気エアロゾルの主成分の1つである硫⻩(S)は、化⽯燃料の燃焼に多く由来し、環境や健康への影響が懸念されているため、その排出量を削減することが重要である。2020年1⽉、国際海事機関(IMO)により、⼀般海域で使⽤される船舶⽤燃料油中の硫黄分を0.5%以下とする規制(重油規制:Global Sulfur Cap 2020)が導⼊された。この規制により高硫黄分のC重油の使⽤が制限され、低硫黄燃料の使⽤が推奨されることになった。硫黄分の多い重油の燃焼ではバナジウム(V)、ニッケル(Ni)が多く排出されることが知られている。そこで、本研究では、2018年~2020年の重油規制前後における名古屋市の大気エアロゾル中の硫黄およびV、Niを含む微量元素の濃度を測定し、これらの変動と相関に基づいて重油規制の効果を検証することを目的とした。
大気エアロゾル試料は、愛知県名古屋市南区に位置する名古屋市環境科学調査センター(NCIES)屋上にて採取した。NCIESは名古屋港の港湾の海岸線から約2kmに位置している。試料は、ハイボリュームエアサンプラーを⽤いて石英フィルタ上に1週間ごとに採取した。試料は、フィルタごと粉末化した後、硫黄濃度は元素分析計(Vario MICRO cube,Elementar社製)で、微量⾦属元素濃度はHF/HClO4分解後、誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS, Agilent 7700x)を用いて分析した。
大気エアロゾル中のS、V、Ni濃度は2018年春、2019年夏に上昇傾向を示したが、2020年はその傾向が見られず、年間を通じて低濃度であった。名古屋市では夏には海風により南寄りの⾵が吹き、沿岸部からの船舶排ガス粒⼦が飛来することが報告されている(e.g., Osada et al., 2019)。2018年から2020年の夏も南風が卓越していた。2018年から2020年の名古屋港への船舶入港数はそれぞれ33,404隻、32,576隻、29,243隻であり(名古屋港管理組合, 2021)、2020年の入港数は2019年から10%減少していたが、V濃度の同期間の減少幅は65%であることから、重油規制によるS分の少ない燃料の使⽤の効果が現れていると言える。また、夏のSとVの濃度の相関が、2018〜2019年と2020年で異なっており、2018〜2019年はC重油の燃焼の影響が、重油規制後の2020年は低硫黄燃料の燃焼の影響が強いことが明らかになった。