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[MZZ43-03] 樹木年輪の酸素同位体比による年代測定と気候復元
★招待講演
キーワード:年輪年代学、酸素同位体比、気候復元、古文書、米収量
日本では、スギやヒノキを用いて過去3000年超にわたる年輪幅の標準曲線が整備されている。しかし、年代測定の対象となる樹種が限られるほか、少なくとも100層の年輪がないと年代決定に至らない。一方、年輪幅に比べ、年輪酸素同位体比は単純な気候因子(夏季の相対湿度と降水の同位体比)によって規定される。従って、樹種依存性が低く、個体間での変動パターンも年輪幅に比べ良く一致するため50年輪前後でも年代が決まる。本報告では、日本で作成済みの過去5000年間にわたる酸素同位体比の標準年輪曲線の概要を示し、それを用いた考古材の年代決定の事例を紹介する。年輪酸素同位体比は、過去の水環境を1年単位で精度良く復元することも可能である。アジア各地で進められている気候復元研究の成果を紹介するとともに、エルニーニョ南方振動や太平洋十年規模振動といった地球規模の現象によって年輪酸素同位体比が規定されていることを示す。さらに、古気候データを歴史記録と比較することによる、環境史研究の可能性についても解説する。具体的には、水稲生産量を免定と呼ばれる徴税の古文書から推定することで、気候変動が米の収量に与える影響を評価した。近世の琵琶湖岸の村々で収集した免定から復元した米収量が洪水年に減少することを、年輪による復元降水量との定量的な比較によって実証することができた。さらに、度重なる洪水による慢性的な田畑の水没から脱するために、琵琶湖の流出河川である瀬田川において大規模な浚渫が実施されており、気候変動に対する具体的な社会応答も観ることができた。